9月1日は「防災の日」です。日本は世界有数の地震国であり、体に感じない地震を含めると毎日どこかで地震が起きています。さらに、2016年4月には熊本地震が発生するなど、日本の地震活動は活発化の動きを見せており、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生も危惧されています。
当社では、安心・安全な社会の実現に向け、大都市直下地震である阪神・淡路大震災や、甚大な津波被害をもたらした東日本大震災など、さまざまな地震の経験を踏まえた技術開発に取り組んでいます。今回の特集では、防災の日にちなみ、最新の地震防災技術についてご紹介します。
シミズの地震防災技術
巨大地震から歩行振動まで制震
回転式制震ダンパー「ダイナミックスクリュー」
ダイナミックスクリューは、ビル低層階に集中的に配置することで、効率的にビル全体の揺れを抑えることができるため、各階に制震装置を分散配置する構法と比較して、ローコスト・短工期を実現します。
また、揺れの特性に合わせて錘の大きさや取り付け部材を調整することで、従来の免震構造では抑えられなかった上下方向の地震動や、歩行等による床振動も制御可能です。
本装置は適用範囲が広く、超高層ビルに限らず、大規模生産施設の制震改修工事にも採用されるなど、その用途は拡がりつつあります。
免震と制震を組合わせて耐震性を向上
「スイングセーバー」
免制震複合システム「スイングセーバー」は、免震建物と耐震建物の揺れの違いを利用し、制震部材で効率よく地震エネルギーを吸収するものです。
免震建物に作用する地震力を通常の免震構造の場合と比べて20~30%程度低減することができます。
また、建物外周部および室内の梁の厚みや柱の幅を通常の免震構造の場合よりも小さくすることができるため、超高層マンションに適用した場合は住戸デザインの自由度が向上します。
厚さ5mm弱の免震装置で手術室の揺れを大幅に低減
「シミズ安震フロア」
シミズ安震フロアは、ローコスト・短工期の手術室向け床免震システムで、高い免震効果を得ることができます。
薄い鋼板2枚を重ねただけのシンプルな構造の床免震システムで、地震時には上部の鋼板がスライドします。装置の厚さはわずか5mm弱であり、改修・新築を問わず適用可能です。一般の床免震と比べ、コストは1/2~2/3程度、工期は半分程度です。
巨大地震発生直後に建物の安全性を高精度評価
「安震モニタリングシステムSP」
安震モニタリングシステムSPは、地震の揺れが収束後わずか1分程度で、建物が安全か否かを判断します。構造体の健全性や天井・仕上げ材の損傷度など、建物の安全性を自動的かつ高精度に評価し、結果を建物管理者にわかりやすく伝えます。
また、大地震発生時には本震による柱や梁のひずみが、その後に起こる余震でさらに大きくなります。これら複数の地震の影響を累積して評価することで、より信頼性の高い安全性評価を行うことができます。
構造部とボードを直接連結、特定天井の脱落を防ぐ
「リニアブレース」
リニアブレースは、震災時の脱落防止対策が求められる特定天井※を低コスト・短工期かつ高剛性で構築する耐震天井構工法です。
専用の固定金物を用い、耐震ブレースの上端と下端をそれぞれ上階スラブなどの構造部と天井ボードに固定します。この耐震ブレースを天井面積20~25m2に一対の割合で配置することで、特定天井に必要な耐震性能を確保できます。
ブレース密度が高くなり長工期・高コストになりがちな特定天井を、ブレース台数を抑えることで、通常の吊り天井と同程度の工期のまま、従来工法よりも低コストで構築することが可能です。
また、剛性が極めて高いため、通常60mm程度と規定されている天井と壁の隙間を10~20mmと小さくすることが可能です。これにより、天井内部の気密性が高まり、省エネルギーや天井裏からの塵埃の飛散防止、音楽ホール等の音響性能の向上などの効果が得られます。
脱落によって重大な危害が生じるおそれのある吊り天井(高さが6mを超え、面積200m2超、質量2kg/m2超で、人が日常利用する場所に設置されているもの)。国土交通省により技術基準が定められている。
耐震性と施工性に優れた次世代耐震天井
「SDクリップレス天井」
SDクリップレス天井は、部品点数が従来の耐震天井の約半分と少なく、施工性が大きく向上し、工期を短縮します。
地震時に脱落しやすいクリップを排除し、部材同士がかみ合うことで脱着できない仕組みとなっており、さらに耐震ブレースにより天井の揺れそのものを抑制します。
免・制震技術で立体自動倉庫の荷崩れを防止
「ラックベーススライダー」「ラックトップダンパー」
地震による立体自動倉庫の荷崩れを防止する、ローコストな免・制震技術です。
ラックベーススライダーは新築施設向けの免震装置で、建物の床とラック架台のコンクリート基礎の間に設置して、地震の揺れが伝わらないようスライドする仕組みです。ラックトップダンパーは、ラック架台の最上段に設置した錘(おもり)の動きで地震の揺れを打ち消す既存施設向けの制震装置です。
小規模施設向けのローコスト液状化対策工法
「グラベルサポート工法」
グラベルサポート工法は、屋外の受変電設備や原材料タンクなど、既存小規模施設向けの液状化対策工法です。
基礎周辺地盤および基礎の簡易改良だけで、液状化による被害を大幅に軽減します。液状化層全体を改良する必要がないため、施設を使用しながらの施工が可能であり、コストも従来の薬液注入工法の1/5~1/10程度です。