2014.04.23

テクニカルニュース

防災・減災

小規模施設向けにローコストの液状化対策工法を開発

当社は、屋外の受変電設備や原材料タンクなど、既存小規模施設向けの液状化対策工法「グラベルサポート工法」を開発しました。

生産施設や病院などでは、建物本体に被害がなくても、建物本体に原料や動力、水などを供給する付属の小規模施設が液状化被害を受けることにより、操業や営業に大きな支障をきたします。南海トラフ地震をはじめ巨大地震の発生が懸念される中、こうした小規模施設の液状化被害をローコストで抑制できる技術の開発が求められています。

グラベルサポート工法は、基礎周辺地盤および基礎の簡易改良だけで液状化被害を抑制します。液状化層全体を改良する必要がないため、既存施設を使用しながらの施工が可能であり、コストも従来工法の1/5~1/10程度です。


簡易な対策で既存構造物の液状化被害を抑制

グラベルサポート工法は、既存構造物の基礎外周に透水性の高い礫を溝状に敷き詰めて「礫溝」をつくるとともに、この礫溝で構造物を支持できるよう基礎幅を50~80cm程度拡幅するだけで、液状化による被害を大幅に軽減します。

礫溝は幅1m程度、深さ30cm~1m程度で、大地震時には礫溝から地下水が地上に排水されるので、液状化の原因となる地盤内の水圧上昇を抑制することができます。本工法は、液状化層全体を改良する必要がないため、施設を使用しながらの施工が可能であり、コストも従来の薬液注入工法の1/5~1/10程度です。

なお、本工法は、液状化被害が懸念されていた生産施設の既存屋外タンクへの適用がすでに予定されています。本工法の適用により同施設は、南海トラフ地震を想定したシミュレーションでも、基礎の傾斜が1/1000以下、周辺地盤との相対沈下が1cm以下に収まり、被災後も継続使用が可能となります。


液状化により構造物が傾斜した例


グラベルサポート工法

■液状化した地盤の状態を遠心模型実験により確認

本工法の開発に先立ち、当社では、液状化で傾斜した構造物直下の地盤の状態を遠心模型実験により確認しました。

実験の結果、構造物が傾斜する原因は、基礎外周の地表部(基礎端部)を起点として地中方向に生じる「すべり面」という大きなひずみにあり、起点の発生さえ抑止できればすべり面が発生しないことがわかりました。


液状化により傾斜した構造物直下の地盤の状況(断面)。基礎端部を起点としてすべり面が形成されている


対策なし(左)と対策あり(右)の被害を比較。起点の発生を抑止すれば、すべり面が発生しないため、構造物は傾斜しない

■狭いスペースでも施工可能

隣接建物等により基礎全周に対策が行えない場合でも、基礎の2辺もしくは3辺への対策で効果を発揮させることが可能です。また、地中埋設物を避けて施工することが可能です。


隣接する既存建物を避けて、2辺に拡幅基礎を施工する例


隣接する既存建物と地中配管を避けて拡幅基礎を施工する例


新設構造物や駐車場・構内道路の液状化対策

新設の小規模構造物や駐車場・構内道路の液状化対策は、すでに開発・適用されています。構造物や舗装の真下に礫層を設けるだけで、液状化被害を大幅に軽減します。

■新設構造物の対策

構造物の基礎下に礫層を設けます。地震時には、礫層の排水機能により構造物周辺の水圧上昇が抑制されるため、液状化被害を防止できます。

■駐車場・構内道路の対策

舗装の下に礫層を設けるとともに、一定間隔毎に地表への排水機能を果たす溝状の礫層を設けることで水の流れを作り、液状化による噴砂を抑制すると同時に不同沈下を大幅に低減します。