当社は、屋外の受変電設備や原材料タンクなど、既存小規模施設向けの液状化対策工法「グラベルサポート工法」を開発しました。
生産施設や病院などでは、建物本体に被害がなくても、建物本体に原料や動力、水などを供給する付属の小規模施設が液状化被害を受けることにより、操業や営業に大きな支障をきたします。南海トラフ地震をはじめ巨大地震の発生が懸念される中、こうした小規模施設の液状化被害をローコストで抑制できる技術の開発が求められています。
グラベルサポート工法は、基礎周辺地盤および基礎の簡易改良だけで液状化被害を抑制します。液状化層全体を改良する必要がないため、既存施設を使用しながらの施工が可能であり、コストも従来工法の1/5~1/10程度です。
簡易な対策で既存構造物の液状化被害を抑制
グラベルサポート工法は、既存構造物の基礎外周に透水性の高い礫を溝状に敷き詰めて「礫溝」をつくるとともに、この礫溝で構造物を支持できるよう基礎幅を50~80cm程度拡幅するだけで、液状化による被害を大幅に軽減します。
礫溝は幅1m程度、深さ30cm~1m程度で、大地震時には礫溝から地下水が地上に排水されるので、液状化の原因となる地盤内の水圧上昇を抑制することができます。本工法は、液状化層全体を改良する必要がないため、施設を使用しながらの施工が可能であり、コストも従来の薬液注入工法の1/5~1/10程度です。
なお、本工法は、液状化被害が懸念されていた生産施設の既存屋外タンクへの適用がすでに予定されています。本工法の適用により同施設は、南海トラフ地震を想定したシミュレーションでも、基礎の傾斜が1/1000以下、周辺地盤との相対沈下が1cm以下に収まり、被災後も継続使用が可能となります。
■液状化した地盤の状態を遠心模型実験により確認
本工法の開発に先立ち、当社では、液状化で傾斜した構造物直下の地盤の状態を遠心模型実験により確認しました。
実験の結果、構造物が傾斜する原因は、基礎外周の地表部(基礎端部)を起点として地中方向に生じる「すべり面」という大きなひずみにあり、起点の発生さえ抑止できればすべり面が発生しないことがわかりました。
■狭いスペースでも施工可能
隣接建物等により基礎全周に対策が行えない場合でも、基礎の2辺もしくは3辺への対策で効果を発揮させることが可能です。また、地中埋設物を避けて施工することが可能です。