当社は、去る6月3日(水)から5日(金)まで、東京ビッグサイトで開催されました「第20回 リフォーム&リニューアル 建築再生展2015」に出展しました。今回のトピックスでは、当社の展示内容のうち、「東京大学安田講堂改修工事」についてご紹介します。また、実機展示でご好評いただいた「外壁タイル劣化診断ロボット」についても、会場の様子を交えてコーナーでご紹介します。
1925年に完成した安田講堂は、東京大学のシンボルとも言える建物であり、1996年には国の登録有形文化財第1号にも指定・登録されています。本建物は、東日本大震災により一部被害が発生したこともあり、2013年6月から2014年12月にかけて構造躯体と講堂天井の耐震改修ならびに、外壁をはじめとする仕上げ材を建設当初の意匠に復元する工事が行われました。
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本改修工事において当社は、文化財としての記録・保存作業を行いながら、約90年前の建物を現在の建築・耐震基準に合わせ、安全性を確保しました。
東京大学安田講堂改修工事の概要
安田講堂(東京大学大講堂)は、内田祥三教授(後の東大総長)と、その弟子である岸田日出刀氏の設計、合資会社清水組(清水建設の前身)の施工により1925年に完成しました。本建物は、鉄筋コンクリート造の地下1階・地上5階で、講堂は3・4階に位置し、講堂の屋根を支える骨組は鉄骨造となっています。
今回の改修工事は、東日本大震災により発生した被害の状況を踏まえて計画されたもので、構造躯体と非構造部材である講堂天井の耐震化を主軸としつつ、外壁やサッシ等の長寿命化、建設当初の意匠への復元、講堂の自然採光の復活、バリアフリー化等を行いました。
改修工事前の講堂内部(撮影:小川重雄)
建設当初の設計図面(東側立面)。講堂部分の屋根には半円形の採光窓が並ぶ(資料:東京大学)
■3Dスキャナによる実測・図面化
工事にあたっては、まず施設内を3Dスキャナで実測・図面化するとともに、建設当初の意匠が失われてしまった建物部位について、東京大学と当社が保存している資料から特定しました。
次に、調査結果を踏まえ、耐震性の確保と建設当初の意匠復元を目指した具体的な改修工法を立案。さらに、試験施工により改修工法の有効性を検証しました。
3Dスキャナによる実測
実測データを図面化
構造躯体と講堂天井の耐震改修
■講堂天井の耐震化
今回の工事で最大のポイントとなったのは、講堂天井の耐震化です。
既存天井(940m2)は高い位置からの吊り天井で、漆喰塗仕上げ(ラスモルタル下地)の天井板は重く(100㎏/m2超)、大規模地震時には落下する可能性がありました。また、天井全体が複雑な形状であり、一部にガラス光天井も使われているなど、一般的な手法による耐震化が難しい状況でした。
そのため当社では、天井と建物を一体化して地震時に天井だけが独立して揺れないようにするとともに、天井板については、既存天井の意匠を継承しつつ、軽量(約15㎏/m2)で剛性が高いグラスファイバー補強の石膏天井板に張り替える改修を行いました。
脆弱な既存天井板を撤去し、既存の鉄骨から補強の新設鉄骨を取り付け、天井と建物を連結・一体化。地震時に天井だけが独立して揺れないように固定
改修前の天井部材には、漆喰塗仕上げの重い天井板が用いられていた(100㎏/m2超)
軽量で剛性が高いグラスファイバー補強された石膏天井板に張り替えた(約15㎏/m2)
当社技術研究所で実施した振動実験により、震度7クラスの大地震時でも天井が落下しないことを確認
■構造躯体の耐震化
構造躯体の耐震化については、既存の鉄筋コンクリート壁を撤去し、厚さ20cmの鉄筋コンクリート耐震壁(214枚)を新設するとともに、鉄骨ブレース(24箇所)を設置しました。
鉄筋コンクリート耐震壁
鉄骨ブレース
意匠の復元
本改修工事では、学術的調査および展示公開に向けての既存部材の実測図面化やオリジナル部材の保存など、文化財としての記録保存作業も実施しました。
■意匠の復元
創建当時の建具(上)と、改修前の建具(下)
創建当時の意匠に復元された建具
■現存するオリジナル部材の利用
玄関周辺に残されていた腰壁石
割れた石を接着し、裏側をステンレス線とメッシュ状のガラス繊維で補強して再利用
■オリジナル部材の保存
天井意匠部材の保存
小菅煉瓦製造所(現 東京拘置所)
で製造されたレンガ
建設当時の電球
(現 東芝製)
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懸垂式のロボットで外壁タイルを劣化診断
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