2015.02.03

テクニカルニュース

防災・減災

既存超高層建物の地震被害を短時間で予測

当社は、既存超高層建物の地震被害について、短時間で高精度に予測できる「地震被害予測システム」を開発・実用化しました。

超高層建物は、首都圏だけでも約1,500棟あり、その半分以上が2000年6月の建築基準法改正以前に建設されています。改正以前の基準は、直下地震や長周期地震動に関する対策が必ずしも十分ではなく、今後発生が懸念されている大地震により被害が発生する可能性があります。

本システムは、建物の所在地で想定される地震動と建物に関する公開情報を用いて、最短10分程度で建物の地震被害を予測することができます。また、被害予測に基づいて、「シミズ総合防災診断システム(超高層バージョン)」による現地調査と防災診断を行うことで、建物の防災上の課題を明らかにするとともに、改善箇所や対策などについてご提案します。


地震被害予測システムとシミズ総合防災診断システムによる防災診断および対策の流れ


地震被害予測システムの概要

本システムは、建物の所在地で想定される地震動をピンポイントで予測する入力地震動評価システムと、解析用の簡易振動モデルを作成する構造解析モデル設定システムから構成されます。

建物の被害予測では、ピンポイント予測した地震動を簡易振動モデルに入力し、地震動により建物の各階に生じる変形や加速度等を算出し、これを基に各階の内外装や躯体、設備の損傷度、建物全体の損失比(補修費用/新築費用)を求め、4段階で評価します。

被害予測に要する時間は、すでにモデルが設定されている場合は1棟あたり10分程度であり、他社設計施工の場合でも4日程度です。


被害予測フロー

■入力地震動評価システム

首都直下地震(東京湾北部地震)や南海トラフ巨大地震など、中央防災会議などが公開している想定地震に対する地震動や、当社保有の地盤データベースを基に関東一円の地盤を解析用にモデル化。評価する土地の緯度・経度を入力するだけで、関東地域の任意の場所における地震動をピンポイント予測することが可能です。


東京湾北部地震の震源域
[中央防災会議(2005)]


南海トラフの3連動地震の
震源域(JSHIS)


大正型関東地震の震源域
[当社作成:松島ほか(2007)]

■構造解析モデル設定システム

規模や構造、固有周期など、日本建築センター発行の「ビルディングレター」で公開されている性能評価シートの基本データを入力することで、建物の構造特性を反映した簡易振動モデルを容易に構築することができます。

簡易振動モデルを用いた解析例(動画)

■地震被害の予測(例)

ピンポイントで予測した地震動を簡易振動モデルに入力し、解析を行います。この解析に基づき、各階における内外装や躯体、設備の損傷度、建物全体の損失比(補修費用/新築費用)を求め、4段階で評価します。

下記の予測例では、内外装や天井に損傷度2(黄)が見うけられ、中程度の被害が発生する可能性があります。建物の総合判定はB(黄)となり、耐震改修による備えが望まれます。


首都圏のビル(24階/S造)について被害を予測した例(東京湾北部地震の場合)

■参考:シミズ総合防災診断システムの概要

現地調査と防災診断は、すでに100棟を超える建物で適用実績があるシミズ総合防災診断システムの超高層バージョンで行います。

本システムは、立地環境に関する事前評価と建物の防災性能に関する現地調査により、施設の防災性能を総合的に診断します。調査項目と判定基準のシステム化により、地震の揺れのみならず、液状化、津波、火災などに対する防災上の課題や改善箇所を判定することができます。

立地環境と建物の防災性能を6分野、約110項目の診断項目により総合的に診断します。また、診断結果は、東日本大震災の知見を反映した判断基準に基づき、3段階で判定します。

危険または被害や損傷の恐れがある項目については、写真等を添付して、改善すべき箇所・内容を明示します。

診断結果に基づき、建物の防災上の課題と改善箇所を報告します。加えて、建物の安全・安心を実現するための対策・優先度など最適なソリューションをご提供します。