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耐震化が進む日本の建物には、これまで気づかれてこなかった安心・安全の盲点がありました。普段は見えない天井裏の構造に、お客さまの事業継続(BCP)の鍵が潜んでいたのです。
まさか、天井が!?
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2011年の東日本大震災では、体育館や工場などの大規模空間で想定外の被害が多く見られました。「天井の崩落」です。新耐震基準をクリアした建物そのものの崩壊に至る被害が極めて少なかった一方で、天井の落下によって200件以上の工場や事業所が操業停止に追い込まれ、経済や生活に深刻な影響を与えました。
東日本大震災が建物の盲点を発見!
どうしてこんなにも天井が落ちたのか。シミズは原因究明に向けた調査を開始。落下の原因は、1950年代に高層建築とともに普及した「吊り天井」の構造にありました。地震による強い揺れが、吊り天井を組み立てるクリップ(取め具)を弾き飛ばしてしまい、天井全体の崩落を生じさせていたのです。それは、建物そのものが地震の力を十分に受け止めきれていなかった時代から、それらの被害に隠れて存在しつづけた地震対策の大きな盲点でした。
原因は「吊り天井」の構造でした
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天井板を支えるために、天井裏に格子状に組まれる金属の下地を挟み留めて固定する「クリップ」。地震時に天井が建物そのものと別の動きをすることで、壁との衝突を繰り返すうちに、このクリップが破損したのです。
常識を疑え、シミズのチャレンジ
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既存天井を撤去して天井を新設するSDクリップレス天井
地震時に脱落しやすいクリップを見直し、力の流れを考慮した新たな取付金具によって、性能アップとコストダウンを両立させた次世代天井工法。
「まさかの天井落下」を防ぐために、シミズでは天井耐震化技術の開発にいち早く着手。「常識を疑え」を合言葉に、それまで当たり前とされてきた天井の構造・工法をゼロベースで見直し、40以上の試験体を壊れるまで揺らすなど振動実験を徹底して繰り返しました。そして豊富な知見と最先端の技術を結集させ生み出したのが、組み立て部材を一から見直し、合理性と安全性を高めた「SDクリップレス工法」や、天井をしっかり建物に固定することで崩落を防ぐ「リニアブレース工法」など12もの天井耐震技術でした。
シミズの答え。例えば、リニアブレース工法
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2本の耐震ブレース(斜め部材)をV字状に設置。建物構造体と天井板をブレースで直接結合し、一体化。吊り天井の経済性や合理性を継承しながら、画期的な耐震性能を実現。既設天井を活かしつつ特定天井※1の耐震化が可能になります。
特定天井:脱落によって重大な危害が生じるおそれのある吊り天井(高さが6mを超え、面積200m2超、質量2kg/m2超で、人が日常利用する場所に設置されているもの)。国土交通省により技術基準が定められている。
他にもこんな工法が!
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シミズが生んだ新しい天井耐震技術は、新築はもちろん、東京大学安田講堂やホテルニューグランドなど既存建物の改修にも既に取り入れられています。用途の違うさまざまな建物で、お客さまが求める安全・安心を実現できる工法です。シミズはこれからも天井裏に隠されたBCPの鍵を探しながら、挑戦を続けます。
既存天井を残したまま耐震化
グリッドサポート工法
既存の天井をそのままに、天井面に建物に直結した格子状フレームを新たに追加する耐震改修工法
既存天井を撤去して天井と建物を一体化
ぶどう棚直貼り天井
建物と一体化した骨組みを天井裏に構築することで、複雑な形状や重い天井板に適応。東京大学安田講堂で使用
歴史的建物などの特殊な天井に使用
漆喰天井落下防止対策
重い漆喰天井をメッシュシートと貫通ボルトで強化するとともにワイヤーで落下を防止。ホテルニューグランドに適用
あの建物にもシミズの耐震技術が!
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