2012.02.02

テクニカルニュース

防災・減災

吊り天井の落下を防ぐ

当社は、東日本大震災の被害を教訓に、大地震時でも天井を落下させないための天井部材の新たな構造形式を確立しました。

東日本大震災では、建物の構造的な被害が少なかった一方、天井や壁をはじめとする非構造部材の被害が多数報告されています。中でも、生産施設や物流施設などの大規模空間では、天井の崩落やパネルの落下などが相次ぎました。

本構造形式は、天井の補強ポイントごとに耐震ブレースを配置するとともに、部材の接合部を耐震クリップや耐震ハンガーなどで固定して耐震性を高めるもので、生産施設などに用いられる在来天井の落下防止に有効です。既存の構造形式と既存製品を組み合わせる形式であり、従来のガイドラインなどで推奨されている耐震天井に比べて部品点数を4〜5割少なくできコストダウンが可能です。今後は、大空間のある生産施設やオフィス、教育施設などの新築・改修に、本構造形式をご提案していきます。

上階の構造部材から吊り下げた下地材に天井ボードをビス留めする天井。上階から吊り下げる吊りボルト、吊りボルトに固定する資材(野縁受け)、野縁受けに直交方向に渡してビス留めする下地材(野縁)、野縁にビス留めする天井ボードから構成されます。


在来天井を耐震ブレースや耐震クリップ・耐震ハンガーなどで補強する新しい構造形式(図中の金物は代表例を示しており、各天井下地メーカーごとに採用可能な金物を特定しています)


補強ポイントを設定し、重点的に対策

本構造形式は、一定の天井面積(25m2)ごとに補強ポイントを設け、その中心に耐震ブレースを配置するとともに、田の字を描くように野縁と野縁受けの交点9カ所(下図:青い四角)を耐震クリップで固定し、地震時の変形を防止します。

また、吊りボルトと野縁受けは、地震時にすべりにくい耐震ハンガーで連結(下図:赤い丸)。さらに補強ポイントの中心を通る野縁に沿って補強材(ブレース受水平材)を設置し、野縁受け3本にビス留めします。


図中の金物は代表例を示しており、各天井下地メーカーごとに採用可能な金物を特定しています

■可変ホルダーでブレース本来の耐震性能を引き出す

耐震ブレースは、補強ポイントの中心から野縁と野縁受けの両方向にV字型に4本(V字型×2セット)配置します。吊りボルトとの連結には、大地震時にもはずれにくく連結角度が自在に変わる「可変ホルダー」を用いて、ブレースが本来の耐震性能を十分に発揮できるようにしています。また、補強ポイントとの連結は、野縁受け方向のブレースは野縁受けに、野縁方向のブレースはブレース受水平材にそれぞれビス留めして固定します。


振動台実験による検証

本構造形式の検討に先立ち、震災時における在来天井の挙動特性を振動台実験で確認しました。

地震時には、建物と天井がほぼ同じ挙動を示しており、建物が左に揺れれば天井の左端に、また右に揺れれば右端に大きな圧縮力が加わり、揺れが継続するうちに天井の端からボードが落下することが判明しました。また、大きな揺れが続くと部材を連結している金具や金具周辺の部材が破損して天井の揺れが増幅し、崩落の原因となることも判明しました。

当社では、こうした在来天井の特性を踏まえて耐震性の高い構造形式を検討・考案し、振動台実験により性能確認を行っています。実験にあたっては、天井メーカー8社から部材の提供を受け、可能な限り既存の構造形式と既存製品の組み合わせによる耐震性向上を目指しました。


振動台実験の様子