SUSMICS-C(SUstainable + SMI(炭) + Carbon Storage + Concrete)は、木質バイオマスを炭化した「バイオ炭」を混入することで、コンクリート構造物に炭素を貯留する環境配慮型コンクリートです。
2023年 日刊工業新聞 第66回十大新製品賞 本賞 を受賞し、カーボンニュートラルやカーボンネガティブの実現に向けた技術として注目されています。テクノアイでは2023年に「テクニカルニュース」にて技術の概要や特徴をお伝えしましたが、今回はSUSMICS-Cのその後の最新情報と適用事例をご紹介します。
事例1 土木の現場への適用でカーボンニュートラルを実現
初めてSUSMICS-Cを適用した新東名高速道路川西工事(発注者:中日本高速道路(株))の現場では、場内工事用道路34.5m3の仮舗装コンクリートとして、CO2排出量の少ない高炉セメントB種を使用した配合に、60kg/m3のバイオ炭を混入しました。これにより、普通コンクリートによる施工と比較して約99%(ほぼカーボンニュートラル)のCO2排出削減効果を実現しています。
また、バイオ炭を混入していない配合とバイオ炭を混入した配合について、それぞれ圧縮強度試験を実施した結果、バイオ炭混入による強度低下は生じず、いずれも同等の圧縮強度を確認できています。
環境省が環境配慮型コンクリートのCO2固定量を国連に報告
SUSMICS-Cの固定量がその一部に
国内における温室効果ガス排出量・吸収量は、毎年算定・公表されています。2024年4月に環境省が発表した「2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について」において、3類型(4種類)の環境配慮型コンクリート※1による温室効果ガス吸収量(CO2固定量)が世界で初めて算定され、合計約17トンの値が報告されました。
3類型のうちバイオ炭使用型として取り上げられているSUSMICS-CによるCO2固定量は、この現場への適用による5.89トンです※2。
- ※1 3類型(4種類)の環境配慮型コンクリートについて
- バイオ炭使用型コンクリート:SUSMIC-C(清水建設)、CO2由来材料使用型コンクリート:T-eConcrete/Carbon-Recycle、クリーンクリートN、製造時CO2固定コンクリート:CO2-SUICOM
- ※2 算定方式について
- 2022年度の当社が算出しているCO2排出削減効果の算定においては、バイオ炭の製造等に関わるCO2排出量を考慮していますが、上記で算定された値は、純粋にバイオ炭によるCO2固定量となっています。(バイオ炭の製造等に関わるCO2排出量は、温室効果ガスインベントリにおいて、別項目において計上されています)
事例2 建築の現場への適用でカーボンネガティブを達成
グッドマンビジネスパーク ステージ6ビルディング2新築工事(発注者:シラカミ特定目的会社)は建築の現場での初適用事例です。ここでは、事例1と同様、高炉セメントB種を使用した配合に60kg/m3のバイオ炭を混入し、バイオ炭を混入しない配合(高炉セメントB種によるCO2排出削減効果は盛り込み済み)と比べて103.8%のCO2排出削減効果(カーボンネガティブ)を達成しています。また、本現場では複数の箇所へ合計510m3のSUSMICS-Cを打設しています。この打設量は、カーボンネガティブ仕様の環境配慮型コンクリート実績としては国内最大級を誇ります。
第三者機関が「SUSMICS-C」のCO2削減効果を確認
SUSMICS-Cの適用によるCO2排出削減効果は精緻に試算し、第三者機関による妥当性の確認をおこなっています。この試算には、バイオ炭を製造するときに排出されるCO2はもちろんのこと、バイオ炭の運搬や生コンプラントでのバイオ炭投入時に使用するエネルギー由来CO2排出量などSUSMICS-Cを適用することで追加的に発生するCO2排出量を考慮しています。
この結果、コンクリートへのCO2固定量がCO2排出量を上回るカーボンネガティブを達成したことが確認されました。
例えば、環境配慮型コンクリートを適用することで追加的に発生するCO2排出量を試算し、この値が環境配慮型コンクリートによるCO2固定量を上回れば、これは見せかけの環境配慮(グリーンウォッシュ)ということになります。今回のCO2排出削減効果の妥当性確認は、本現場へのSUSMICS-Cの適用が真にCO2排出削減に貢献していたことを示すものです。
このことは、建設工事の発注者に対し、第三者による確認・検証を経た信頼性の高いCO2排出削減実績値を示すものであり、新たな環境価値として提供していく考えです。