当社は、バイオマスを炭化した「バイオ炭」を混和することで、炭素を貯留する環境配慮型コンクリート「バイオ炭コンクリート」を開発しました。
貯留した炭素量に応じたCO2固定量でコンクリートのCO2排出量をオフセット可能です。低炭素セメントを使用すれば、コンクリートとしてカーボンネガティブまで実現可能です。
インデックス
背景
低炭素・脱炭素への社会的な要請は近年大きく高まっています。建設業においても一例として、国土交通省からカーボンニュートラルに関する実績や取組み提案を評価するモデル工事が2021年に公告されました※1。このような状況を受け、当社ではバイオ炭による炭素貯留を利用した、普通コンクリートと同等の性能を有する汎用性の高い環境配慮型コンクリートの開発に着手しました。バイオ炭を用いた炭素貯留については、J-クレジット制度※2において農地に対する施用が方法論として策定されています。
国土交通省中部地方整備局プレスリリース(令和3年10月14日)
温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度
バイオ炭コンクリートの概要
炭素を固定するバイオ炭
バイオ炭は、バイオマスを炭化したものです。これを粒状もしくは粉状にし、コンクリートの混和材として利用します。
本技術で使用するバイオ炭の原料には、木材の製材時の副産物であるオガ粉を利用します。通常であれば微生物分解や燃焼により、オガ粉が含む炭素はCO2として空気中に放出されてしまいます。一方で、炭化されるとオガ粉が含む炭素は非常に分解されづらい固定炭素に変化して、燃焼されない限りほとんどCO2に変化しなくなります。原料や製造方法によりますが、バイオ炭の乾燥時の固定炭素質量比は高比率のものでは90%に及び、多量の炭素を安定的に固定できる特長があります。
混和するバイオ炭は、粒径1mm以下の粉状と2mm~5mmの粒状の2種類について配合を検討しました。粒径が数mmであることから、細骨材に置換して使用します。
なお、粉状と粒状のバイオ炭のそれぞれの特徴は下記の通りです。
- 粉状:
コンクリートの強度に及ぼす影響が小さいが、コンクリートのフレッシュ性状(流動性等)に及ぼす影響が粒状よりも大きい。 - 粒状:
混和量によってはコンクリートの強度が若干低下することがあるが、粉状と比較してコンクリートのフレッシュ性状に及ぼす影響が小さい。
カーボンネガティブを実現可能
一般的なコンクリートはCO2排出量の大きい普通ポルトランドセメント(以下、Nセメント)を使用しており1m3製造する際に200~300kgほどのCO2を排出します。バイオ炭コンクリートでは、NセメントよりCO2排出量の小さい高炉セメントB種(BBセメント)やC種(BCセメント)※3を使用することで、バイオ炭のCO2固定量で他の材料のCO2排出量をオフセットしてコンクリートとしてカーボンネガティブを実現可能です。
普通ポルトランドセメントに製鉄時に生じる副産物である高炉スラグ微粉末を混ぜたもの。混ぜる量の違いで、A種・B種・C種の三種類がある。
一般的なコンクリートと同等の施工性
バイオ炭を混和したコンクリートを用いて写真に示すような圧送試験を実施し、ポンプによる圧送の可否および圧送後のコンクリートのフレッシュ性状を確認しました。結果として、バイオ炭を混和したコンクリートは、バイオ炭無混和の普通コンクリートと同様に圧送することが可能であり、圧送後のフレッシュ性状も良好なまま保持できていることを確認しました。
一般的なコンクリートと同等の圧縮強度
BBセメント配合およびBCセメント配合のいずれにおいても、バイオ炭を混和したコンクリートとバイオ炭を混和していないコンクリートの圧縮強度は概ね同等であることを確認しました。粒状のバイオ炭を混和した場合、圧縮強度が若干低下することも確認されましたが、一般的な土木構造物に要求される強度を満たしています。
現在の展開状況
新東名高速道路川西工事において、場内工事用の仮舗装コンクリートとして、粒状バイオ炭を1m3あたり60㎏加えてCO2排出量を90%以上削減したほぼカーボンニュートラルなBBセメント配合のコンクリートを34.5m3打設しました。本施工のバイオ炭使用量から算出されるCO2固定量は、約4.7tになります。
今後の展望
今後も、環境性能と汎用性の両立を目指して研究を進めていきます。また、幅広いニーズにお応えできるようセメントの種類やバイオ炭の混和量によってメニュー化を図るほか、原料や製造方法の異なるバイオ炭についても適用可能性を検討していきます。