建物の揺れによる被害の多くは地震によってもたらされますが、それ以外にも例えば、工場や機械の稼働、周辺道路を走行する車両によってもたらされる「環境振動」が、時に深刻な被害を引き起こすことがあります。建物の揺れは人体にも少なからず影響を及ぼしますが、振動が全く伝わらない環境を作り出すことは容易ではありません。振動対策には発生源の特徴を見極めるとともに、振動を小さくしたり、建物に伝わりにくくするための技術開発が必要になります。
今回は、地震、風、環境振動など、さまざまな原因で起こり得る建物の揺れを軽減するための免制振技術についてご紹介します。
長周期地震動による超高層ビルの複雑な揺れを抑制する
「シミズ・スイングマスダンパー」
屋上設置型の制振装置「シミズ・スイングマスダンパー(SMD)」は、長周期地震動により生じる超高層ビルの複雑な揺れを抑制します。
揺れを回転運動に変換して大きな質量効果を発揮するダイナミックスクリューを内部に組み込むことで、1台の制振装置で異なる2つの周期の揺れを制御可能にし、一般的な屋上設置型の制振装置に比べて、軽量化と省スペース化を実現します。
重要設備機器の安全性を向上させる「安震スライダー」
安震スライダーは、当社が2014年に日本ピラー工業(株)と共同開発した立体自動倉庫向けの部分免震システム「ラックベーススライダー」をバージョンアップし、屋外設置型キュービクルなどにも対応可能としたものです。
特殊な免震装置(安震スライダー)を対象物の架台と基礎との間に設置することで、 震度6強~7クラスの大地震時においても、対象物への入力加速度を大きく低減することができます。また、大地震には免震機能を発揮する一方、強風には反応しないなど、屋外に設置する設備などに最適な機器免震システムとなっています。
生産施設や病院などのキュービクルへの適用はもちろん、屋内に設置されたサーバーや精密部品のストッカー等に対しても適用可能です。
可変減衰型ダンパー「デュアルフィットダンパー」
「デュアルフィットダンパー」は、免震層の変位の大きさに応じてダンパーの減衰性能を2段階で自動的に変化させ、地震動の大きさに適した減衰力を発揮するオイルダンパーです。
本装置は巨大地震に対応してダンパーを増やしても中小地震時の免震効果を損ないません。また特殊な電気的制御を必要としない完全パッシブ型であり、地震後のスイッチ解除などが必要ないため、メンテナンスフリーとなっています。
防振床システム「ダイナミック・ライブ・フロア」
ダイナミック・ライブ・フロアは、ライブハウス等における観客の“縦ノリ”が周辺建物にまで振動被害を引き起こす環境振動問題を解決するために開発されました。
ライブハウス等の床を建物から切り離して浮き床とし、建物基礎と浮き床の間に防振ユニットを配置することで、建物基礎に伝わる縦ノリの振動を1/10程度に低減するものです。防振ユニットには、当社が超高層ビルの長周期地震動対策技術として開発した制振装置「ダイナミックスクリュー」を組み込むことで、実効性と経済性を確保しています。