世界の目標「ネイチャーポジティブ」とは?
自然生態系には、地球温暖化の防止、水や空気の保全、野生生物の生息域確保など、さまざまな役割があり、微妙なバランスで私たちの生活を支えていますが、過剰な資源利用や乱開発などによって、そのバランスが崩れ続けています。そこで国際条約が定めた2050年の「自然と共生する世界」というビジョンに向けて、2030年までに生物多様性の損失を食い止め回復させる「ネイチャーポジティブ」の実現が世界の目標になりました。
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ネイチャーポジティブを達成するために、30by30(サーティバイサーティ)という目標も作られました。これは2030年までに陸と海の30%以上を豊かな生態系として保全・回復させようというもので、2022年のCOP15(生物多様性条約締約国会議)で国際目標として採択されました。日本でも30by30達成に向けて、国や地方自治体に加え、企業100社以上が連携するネットワークが立ち上がり、シミズも参加しています。
日本国内の保護地域は陸域20.5%、海域13。3%(2021年8月現在)
広がる自然共生サイト
こうした取り組みを実現する場として、大きく期待されているのが、自然共生サイトです。自然共生サイトとは、国が認定する「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」のことで、30by30達成のための日本独自の仕組みです。認定されると「OECM※として国際データベースに登録されます。例えば、企業敷地内のビオトープや里山、企業林(企業の保有する森林)、都市の緑地なども対象になります。
OECMはOther Effective area-based Conservation Measuresの略で、公的な保譲地域以外で生物多様性保全に資する地域のこと。
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シミズの自然共生サイト「再生の杜」
シミズでは、2006年に「再生の杜」というビオトープを技術研究所内に設置しました。都市の中で人と生物の関係を再生することを目指して、地域の生態系と融合できるような緑地のデザインを行い、在来種を中心に整備したものです。さまざまな種類の動植物を15年以上継続的にモニタリングし、時間をかけて生物多様性の向上を図ってきました。開設当初、200種類だった植物は、今では約300種類にまで増えました。また、再生の杜を通じて環境について学べる場所としても活用しています。
これらの取り組みが評価され、2023年10月には自然共生サイトとして国の認定を受けました。
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未来へ広がるネイチャーポジティブの輪
せっかくビオトープをつくっても、狭い地域の中で孤立してしまっては、生物の生息空間としての役割を十分に果たすことができません。再生の杜のような都市部のビオトープに大切なのは「ネットワーク」です。規模は小さくても、屋上や校庭、公園など各所にビオトープができれば、生物が行き来するネットワークが作られ、郊外から都心まで多様な生物が生息できる環境を整えられます。
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もう一つは、地域や学校と連携して環境教育やまちづくりの輪を広げること。自然にふれあい、生態系保全の大切さを学ぶことで環境問題を身近に感じてもらうことが、街のみどりを育て、ネイチャ―ポジティブをかなえていく大きな一歩となるでしょう。