待望の全面開業を果たしたミチノテラス豊洲。4月16日(土)の街びらきイベントに華を添える企画として用意されたのが、ロボットと自動運転車が連携しての試乗体験デモです。4月14日(木)、このデモの最終テストに私、ライター・野崎が潜入し、実際に体験してきました。その模様をお届けしましょう。
全面オープンを果たしたミチノテラス豊洲
ミチノテラス豊洲は国土交通省がスマートシティ先行モデルプロジェクトのひとつに選定した「豊洲スマートシティ」のエリア内に位置し、昨年8月にいち早く竣工した大規模賃貸オフィスビル「メブクス豊洲」、4月15日に開業した都市型リゾートホテル「ラビスタ東京ベイ」、街区中央の交通広場のバスターミナル機能を核とした都市型道の駅「豊洲MiCHiの駅」の3施設を中核とした、大規模な街区開発プロジェクトです。近隣には豊洲市場もあり、東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)「市場前」駅と直結しているなど、大きな注目を集めているエリアです。
案内ロボットと自動運転車の連携デモを体験
その街びらきイベントを飾る企画のひとつが、案内ロボットと自動運転車が連携しての試乗体験デモでした。来場者が2Fロビーでタブレットに目的地を入力すると、案内ロボットが来場者の元へ。そして自動運転車が待機している外のピロティ部まで誘導します。後を引き継いだ自動運転車はゆりかもめ「市場前」駅の連絡通路・入口まで来場者を乗せて走るという内容です。
このデモのバックグラウンドには開発した建物施設とモビリティの統合制御システム「Mobility-Core」によるロボットと自動運転車の緻密な連携・制御があります。
「Mobility-Core」は、清水建設がメブクス豊洲に実装した建物OS(オペレーティングシステム)「DX-Core」のサービスアプリのひとつであり、複数のモビリティとエレベーターや自動ドアなどの建物施設を統合的に制御します。これを用いることにより、種類や製造元、制御システムの異なるロボットや自動運転車を協調的に動かしてサービスを実現することが可能になります。
今回のデモでは、タブレットの入力により、案内ロボットが来場者を迎えに行くのにタイミングを合わせて、自動運転車が乗車ポイントまで走行を開始します。乗車ポイントのピロティには自動ドアを通り抜ける必要がありますが、「Mobility-Core」が自動ドアを開けるリクエストを「DX-Core」に送り、「DX-Core」が自動ドアの開閉をコントロールします。このように、建物施設とモビリティをスムーズに連携したサービスが実現しています。
では、実際のデモの様子をご紹介します。
デモを体験
①タブレットに目的地を入力
利用者がタブレットに目的地を入力すると、案内ロボットが搭載するセンサーやカメラを駆使して、来場者のもとに自律的にやってきます。決して誰かが離れた場所からリモコン操作をしているわけではないというところがポイントです。
②案内ロボットにタッチ
案内ロボットの画面には「案内を開始します」というコマンドが表示され、これをタッチすると、来場者を先導するように移動を始めます。
③案内ロボットと共に移動
案内ロボットの移動速度は成人男性がゆっくりと歩くのとほぼ同じくらい。自動ドア付近まで行くと自動ドアがすっと開き、ロボットは停止することなくドアを通り抜けます。よどみない動きに連携の緻密さが感じられます。
④乗車ポイントに到着
自動運転車の前まで来ると、ロボットは停止し、「足元にお気をつけてお乗りください」とアナウンスまでしてくれました。そして来場者が乗り込んだ自動運転車が動き出すと、あたかもそれを確認したかのようにロボットは館内の待機スペースに戻っていきます。
⑤自動運転車で移動
自動運転車には安全管理の担当者がひとり搭乗していますが、運転をしているわけではありません。乗客は3名(前席2名、後席1名)が搭乗できます。乗り心地は静かでなめらか。ゴルフ場の電動カートをイメージすればよいでしょうか。前方の走行ルート上に歩行者がいる場合は車両が自動でスピードを調整し、停止することができます。ここでもセンサーを駆使した車両制御技術が威力を発揮しています。
⑥目的地に到着
目的地に到着すると自動運転車は自動的に停止します。自動運転車は乗客が降りた後に待機場所に自動で戻りますが、その際にも前方の歩行者をセンサーで検知し、歩行者が通り過ぎてから発車する仕組みとなっています。
⑦一連の流れを動画でまとめてみました
⑧ミチノテラス豊洲 街びらきイベント当日
4月16日に行われた街びらきイベントでは、フードトラックや場外マルシェ、郷土品製作体験などの企画も催され、多くの来場者でにぎわいを見せていました。自動運転車の試乗体験も16:00から行われましたが、先着9組の予約枠は街びらきイベント開始早々に定員に達しており、大盛況のうち、幕を閉じました。
開発担当者よりひとこと
ロボットや自動運転車が日常的に走り回る未来も遠くないのでは
デモでは全体企画、社外・関連部署との調整、安全管理などを担当しました。稼働中のオフィスビル内で自動運転車やロボットを運行するということで当初心配な面もありましたが、最初の数日間で現地の日常に溶け込んでしまった印象があります。実験期間の後半ではテナント社員の方々は自動運転車にすっかり馴染んでしまい、すれ違っても気にも留めない様子で、われわれの生活空間をロボットや自動運転車が日常的に走り回る未来はそう遠くないのでは、と改めて感じました。
主任研究員 米山 一幸
監視員を必要としない歩車混在空間の実現に向けて
自動運転車に関する当社の取組の中では、主に車両の走行オペレーションや自動運転用の地図の修正等を担当しています。16日のイベントでは、実際にご乗車いただいた方以外にも多くの方に見学していただき、自動運転車両の社会的受容性が高まってきていると感じました。今後は、建物と自動運転車両をさらに高度に連携させて、監視員を必要としない歩車混在空間の実現に向けて研究開発を進めていきたいと思います。
生富 直孝
自動走行モビリティに対する社会の関心の高さを再確認しました
デモでは主に自動走行ロボットの動作微調整と走行試験を行っていました。今回のイベントでは、自動運転車体験会の予約状況等から、自動走行モビリティに対する社会の関心の高さを再確認することができました。自動走行モビリティを実生活の中に導入していこうという機運は世界的にも高まってきており、各地で様々な研究や実験が行われています。そういった時代の流れへ乗り遅れることがないように、さらなる研究開発を進めていきたいと考えています。
服部 克哉
- 野崎 優彦
- さまざまな企業のコミュニケーション活動をお手伝いしているコピーライター。株式会社モーク・ツー所属。