2019.10.21

鍵を探せ!

水素利用システム:Hydro Q-BiC

サステナビリティの鍵は「水素」に隠されていた

サステナビリティとレジリエントを両立した未来のまちづくりに向けた、CO2フリーを実現するエネルギーシステムの鍵は「水素」にありました。

再エネに停電リスク!?

2018年9月に起きた北海道胆振東部地震で発生したブラックアウトは、世界一の安定性を誇る日本の電力における「想定外」の出来事でした。この時、電力の需要と供給がバランスを崩すことで、大停電に至ると多くの人が学びました。

一方で、普及が広がる太陽光発電や風力発電の気象条件などによる出力変動が問題化しています。再生可能エネルギーを安定電源として利用するためには、出力変動を吸収しつつ使いきれない電気を長期間、大量に貯めておける仕組みが欠かせません。

シミズのひらめき
太陽光で作った電力を、水素で運用する

シミズは建物と連動したエネルギーマネジメントシステムの研究開発に力を注いできました。様々な蓄エネ手段を検証していく中で、新たなチャレンジとして水素の可能性に着目しました。水素に変換されたエネルギーはタンク貯蔵されるため、長期間の保存が可能になりますし、地球上に無限に存在する水を電気分解するだけで生成でき、酸素と反応させることで電気が得られます。再生可能エネルギーの余剰分を水素に置き換え、必要に応じて電力として使うことができれば、究極のサステナブルシステムになると考えました。

この実現には、可燃性ガスである水素を安全かつ大量に貯蔵する仕組みと、需要に合わせて適切に発電するためのエネルギーマネジメントシステムが必要になります。この「安全に貯蔵する仕組み」が難問でした。

「魔法の金属」との出会い

この難問を解決した鍵が、新しい水素吸蔵合金との出会いでした。水素吸蔵合金はエネルギー密度が高く、体積の約1000倍もの水素を溜め込むことができる一方で、吸蔵・放出を繰り返すことで可燃性を帯びることが分かっています。新たな合金では可燃性を排除することに成功。これにより開発は一気に加速しました。

シミズは、この魔法のような金属による水素貯蔵技術の確立と、シミズ・スマートBEMSをベースとしたエネルギーマネジメント技術を融合。約2年にわたる試行錯誤の末、建物付帯型水素利用システム「Hydro Q-BiC」が完成しました。

郡山市での実証実験をスタート!

日中、太陽光でつくった電力から1時間に最大5Nm3の水素を製造・貯蔵。電力使用がピークを迎える朝方に発電し、郡山市総合地方卸売市場の管理棟へと電力を供給しています。1年を通して運用していくことで、CO2排出量の削減効果やランニングコストなどを評価し、2020年の実用化に向けて、継続的な改善・改良を進めています。

将来はまちをまるごとマネジメント

実証実験は順調に進んでおり、市場管理棟のCO2排出量を約40%削減できる見込みです。今後は工場やホテル、病院などに対しても導入を提案していきます。CO2フリー水素の利活用はサステナブルでレジリエントな水素社会実現の鍵。燃えない合金と実績あるエネマネ技術を組み合わせたHydro Q-BiCを、未来のまちづくりを支えるシステムにまで成長させたいと考えています。

もっと知りたい!水素吸蔵合金

(国研)産業技術総合研究所が研究していた合金をHydro Q-BiCに最適化させた、清水建設との共同研究で生まれたオリジナル合金です。