団塊世代が後期高齢者となり医療需要が拡大する一方で、労働人口の減少に伴う医療従事者不足という課題を抱える日本の医療業界。
当社では、外来診療業務の効率化を目指し、医療施設DXシステム「eyeMIRU」を開発しました。今回は誠光会淡海医療センターへの導入事例を通して、このシステムの効果についてご紹介します。

DXに力を入れている淡海医療センター
淡海医療センターは、2008年に全国で2例目となる社会医療法人の認可を受け、自治体病院に代わって、救急医療や災害医療、周産期や小児医療を担う急性期病院です。多岐に渡る医療サービスを提供するなかで、病院が取り組んでいるDXは、効率的かつ患者中心の医療を実現するために重要な施策となっています。この取り組みは、入退院・外来・患者向けの3つのアプリケーションで構成されており、そのひとつである外来向けアプリケーションに本システムを取り入れ、2024年4月から7月に実証運用し、8月より本格稼働いたしました。
医療施設DXシステム eyeMIRUとは
本システムは、清水建設が開発した建物OS「DX-Core」を利用し、医療情報データ(電子カルテや部門システム)とファシリティデータ(建物設備の稼働データや位置情報など)をつなげることで、外来エリアにおける「患者様の顧客価値向上」、「職員の労働生産性向上」、「病院の持続可能性向上」を目指すサービスです。
外来のリアルタイム見える化

eyeMIRUの機能
時間帯ごとの繁忙状況を予測し、可視化する「Patient Flow Map」
予約・受付システムの情報や、電子カルテから取得する診察の進捗、会計待ち人数などのリアルタイムな情報から、当日の時間帯ごとの繁忙状況を予測し、可視化します。外来全体の患者を把握し、各エリアの混雑状況に応じて診療・検査の順番の変更を案内することで、総滞在時間の短縮を可能とします。これにより、患者の病院内の総滞在時間が5%~10%減少しました。(※実証実験中のデータによる)

職員の勤務情報からタスクを可視化する「Staff Information」
外来の各ブロック(部門、診療科)ごとの看護師の配置と、各ブロックごとの患者数や処置数などを表示します。位置情報システムで取得したデータも紐づけてリアルタイムで可視化します。

中央処置室情報「Central Treatment」
採血や採尿、点滴を行う「中央処置室」の予約、患者の受付状況を表示します。待ち時間は電子カルテから取得したデータを元に計算をして表示します。

会計の滞留状況把握に特化した「Accounting Status」
待ち時間が長くなる大きな要因である会計の待ち人数、待ち時間だけでなく、予約・受付システムの情報や、電子カルテから取得する診察の進捗から数十分後の業務量を予測できます。外来全体の患者の状況を把握でき、ビーコンを使った「職員位置情報」と連携することで、繁忙期に応じた職員の適性な配置を行うことができ、会計の待ち時間が約50%削減されました。(※実証実験中のデータによる)
会計混雑を事前に予測し、職員の適性な配置を行う ビーコンにより職員のリアルタイムの位置を把握する
指導管理料を表示する「Assistant View」
診療会計時に患者に請求する診療報酬の加算漏れがないよう、過去の診療時に加算した項目などを表示することで、医療会計システムでの過去の算定履歴を検索する時間が削減されます。

快適な環境を自動で制御
病院各所に設置したカメラの映像から、エレベーターや待合室の混雑状況をAIで解析し、エレベーターの運用や空調、照明を自動で制御します。
混雑に応じた空調(風量)制御を行う 在院人数に応じて調整し、待ち時間を短縮する
中央監視設備と連携することで、重要な設備の監視、遠隔(スマホなど)からの空調のON/OFF操作なども可能にします。

淡海医療センターでは、eyeMIRUによって繁忙状況を予測し、職員配置を先回りさせることができたため、4月からの約4か月の実証運用期間において患者の会計待ち時間は約50%短縮され、職員の残業時間は約30%削減されました。また、面積200m²の待合室では、設備の自動制御によって省エネが実現され、年間で約200万円のコスト削減が期待できることが確認されました。本システムにより、医療現場での効率化とコスト削減に大きな成果を上げることが期待できます。
動画:シミズの医療施設DXシステム「eyeMIRU」導入事例