当社は、コンクリートの凝結を促進する粉末状の混和材を用いて、コンクリートの凝結時間を現場で任意に調整する「ACF工法(アドバンストコンクリートフィニッシュ工法®)」※を開発しました。この工法は、現場で生コンクリート車に混和材を投入して攪拌することで、セメントの水和反応(セメントが水と反応して凝結硬化する反応)を活性化させ、コンクリートの凝結時間を任意に制御することを可能にします。
寒冷期に長時間化するコンクリートの凝結時間を短縮できるため、作業従事者を長時間労働から解放するとともに、高品質を確保します。
デンカ株式会社との共同開発
背景
コンクリート打設工事の生産性向上を目的として、品質を確保した上での省力化や機械化が進められてきましたが、現場で打設するコンクリートは、凝結時間が外気温に左右されるため、なかなか作業の効率化が難しい状況でした。
特に寒い季節や地域では、気温低下などが原因で凝結時間が大幅に遅延することが多く、凝結するまでの待機時間が増え作業が深夜にまで及ぶこともあり、長時間にわたる労働が作業者に大きな負担となっていました。また、凝結硬化が遅れると、練混ぜ水の一部がコンクリートの表面に上昇するブリーディング(打設後の浮き水)が長時間に及び、コンクリートの沈下ひび割れなど、表層部分の品質低下にもつながるといった問題もありました。
既存の対策としては、耐寒促進剤、早強剤を使用する方法があります。しかし、その多くは生コンクリート工場で製造時に添加する液状の混和材で、現場の外気温などの施工当日の条件に応じて適宜調整することが極めて困難です。そのうえ、添加量が比較的多くなるため、コンクリート材料の一部として都度、配合設計をし直さなくてはならないという課題がありました。
ACF工法は、このような課題に対し、外気温やコンクリートの材料などに左右されることなく高品質を確保しながら、作業時間を効率化する目的で開発されました。
※アマ(押えに必要な細かい粒子)をコンクリート表面に浮きだたせる作業
ACF工法の特長
動画:【デンカ株式会社】寒冷期コンクリート凝結促進材「デンカACF-W」(3:01)
①現場で投入ができる
現場に到着した生コン車に粉末状の凝結促進用混和材を必要量投入し、ドラムを高速攪拌して均一に分散させるだけで、セメントの水和反応が活性化し、凝結促進効果が得られます。
②気候状況に応じて現場での調整が可能
現場の気候状況に応じて、投入する粉末状の凝結促進用混和材の添加量を調整することで、寒冷期、寒冷地域における凝結時間を任意に短縮することが可能です。
③コストを最小限に抑えた施工が可能
高さのある打込みでは、最上部の仕上面のコンクリートに混入するだけで効果があるため、最小限の使用量でコストも削減することができます。
④作業時間短縮の効果
作業性の低下は一切なく、通常通りの施工を行うことで最短1時間程度で仕上げ作業に着手できます。深夜まで及ぶ作業がなくなり負担が大幅に軽減され、労働環境の改善が図れます。
⑤品質の向上
凝結の促進によりブリーディングを抑制できるため、コンクリート表面のひび割れが大幅に低減し品質の向上につながります。
⑥建設材料技術性能証明を取得
ACF工法で使用する凝結促進用混和材ACF-WおよびACF-MUの両製品は、JIS規格にある一般的な強度の生コンクリートに対応しています。コンクリートに使用される化学混和剤などに応じて、相性の良い方を選択します。また、一般財団法人 日本建築総合試験所(GBRC)による建設材料技術性能証明を取得しているため、構造体コンクリートにも使用できます。
適用事例1:中泊くにうみウィンドファーム:実現場に初適用
コンクリート1m3あたり3.3kgの凝結促進用混和材を添加し、風車基礎工事のうち、傾斜面を有するフーチング表層部のコンクリートを施工しました。
その結果、コンクリート打込み後、1時間程度で仕上げ作業に着手でき、通常工法と比べて作業終了時刻を4時間以上早めることができました。また、ブリーディングの低減効果により、発生リスクが高い傾斜面の沈降クラック(沈下ひび割れ)が大幅に抑制されました。
適用事例2:獨協医科大学日光医療センター:建築構造部※に初適用
コンクリート1m3あたり3.3kgの凝結促進用混和材を添加し、表面積約500m2のスラブ・梁を施工しました。ACF-Wの凝結促進効果により、通常工法と比べて仕上げ作業に着手するまでの待機時間を3時間程度短縮することができました。
建築構造部材へ初めて適用するのに先立ち、一般財団法人日本建築総合試験所の建設材料技術性能証明を取得
今後の展望
土木・建築のスラブの仕上げ作業を伴うコンクリート施工にACF工法を積極的に適用することで、現場の作業環境の改善・働き方改革とコンクリート仕上げ面の品質向上に貢献します。
将来的には、仕上げ作業着手から完了の時間を合わせ、機械による押え作業が一度に進められるよう、広範囲のスラブコンクリートの凝結時間の制御を可能にして、現場作業のさらなる効率化と機械施工の促進を目指します。