2023.11.13

テクニカルニュース

防災・減災

AIで重機オペレータの死角をカバーする
車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」

当社は、建設重機用の車両搭載型安全監視カメラシステム(商品名「カワセミ」)を実用化しました。

カワセミは、画像解析AIを活用して建設現場で建設重機オペレータの死角となる後方危険区域内にいる人や車両を瞬時に検知し、警告音、ライト点灯、モニター表示等でアラートを発報するカメラ監視システムです。

東京大学発のAIベンチャー(株)Lightblue、およびエヌディーリース・システム(株)との共同開発

動画:車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」(3:41)

背景

建設現場で発生する災害のうち、重機接触災害が占める割合は約2割に上ります。特に、狭い作業空間内で複数の重機を稼働させる山岳トンネル現場では、重機と作業員との接触をいかに回避するかが安全管理上の大きな課題となっています。

重機接触災害の防止対策技術としては、人の検知と重機からの距離推定を行うカメラ監視システムが既に製品化されていますが、人がしゃがんでいたり、手荷物等で体の一部が隠れていたりする場合には検知精度が低下してしまうなど、機能面での問題点がありました。

カワセミのシステム構成

重機の後方に設置した単眼カメラユニットで、重機オペレータの最も死角となる後方を広範囲に監視します。カメラユニットの撮影画像から人や車両の重機への近接を画像解析AIサーバーで検知、それらをリアルタイムで監視モニターに映し出し、設定したエリア内に人が立ち入るとパトライトや音、モニターでアラートを発報します。

車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」のシステム構成
車両搭載型安全監視カメラシステム「カワセミ」のシステム構成

システムの特徴

人が重機を認識しているかどうかをリアルタイムに判定

本システムの特徴は、画像解析AIに組み込んだ骨格推定アルゴリズムにより、さまざまな作業姿勢に対応した人の検知機能を有し、人が重機を認識しているかどうかをリアルタイムに判定できることです。

右側(赤線)と左側(青線)を区別して人の骨格を認識するため、さまざまな姿勢を推定できる。×印は足元の推定位置。常に安全側の評価(実際よりも重機に近い評価)となるように算定
右側(赤線)と左側(青線)を区別して人の骨格を認識するため、さまざまな姿勢を推定できる。
×印は足元の推定位置。常に安全側の評価(実際よりも重機に近い評価)となるように算定

画像解析AIによる骨格推定技術

画像解析AIは、さまざまな姿勢の骨格を機械学習しており、しゃがんだ状態や手荷物等に隠れて体の一部が画像に映っていない場合でも、人の存在を検知できます。また、骨格から推定した目・鼻・耳の位置関係をもとに、当該人物が重機を視認しているかどうかを判断することもできます。

骨格推定技術により、目・鼻・耳の位置関係から顔の向きを判定し、重機を視認しているかを確認できる。重機の視認状況に応じて、注意アラート(右、黄枠)または警告アラート(左、赤枠)をオペレータに通知する。
骨格推定技術により、目・鼻・耳の位置関係から顔の向きを判定し、重機を視認しているかを確認できる。
重機の視認状況に応じて、注意アラート(右、黄枠)または警告アラート(左、赤枠)をオペレータに通知する。

危険回避を2段階で支援

作業員が重機に接近すると「注意」のアラートを出してオペレータに知らせます。更に作業員が重機に接近したり、作業員が重機を認識していない場合は「警告」のアラートを出します。このようにオペレータの危険回避を2段階で支援し、アラートの影響で必要以上に作業が遅れることがなくなるため、重機操作の心理的な負担を軽減することに役立ちます。

また、人物だけでなく、他の重機や一般車両を検知する機能も備えているため、重機と車両の衝突事故や接触事故を未然に防ぐことができます。

「警告」、「注意」のエリアは自由に設定できる
「警告」、「注意」のエリアは自由に設定できる

その他の便利な機能

  • コンパクトに専用ボックスに収納でき、持ち運びが容易
  • カメラ・モニタ・ランプはマグネット式の後付けタイプで重機の種類を問わず設置可能
  • 警告を出す距離やアラームの音量は建設現場の環境に応じて自由に設定可能
  • 電源は重機からのほかポータブルバッテリーでも使用可能
  • モニタ映像の録画機能を搭載

今後の展望

AIが100%の安全性を保証するのは難しいものの、その技術は急速に進化し、昨日まで不可能だったことが今日可能になるという現象も特別なことではなくなってきています。こうした新たなAIを容易に取り入れることが可能な設計により、カワセミは今後も人にフォーカスした映像解析技術の向上を続け、建設現場の安全性と効率性の最大化を追求していきます。