昨今の異常気象により風水害が甚大化し、その対策技術が求められています。当社は、災害の発生が懸念される地域における、安全確保と被害の最小化を目的とした防災タイムライン(防災行動計画)の策定・実践を支援するシステム「ピンポイント・タイムライン®」を開発しました。
本システムの特長は、局所的な気象情報と施設情報をもとに、システム利用者にとって「その時」「その場」で「何をするか」というピンポイントの防災対策を自動で通知することです。また、対策実施状況の進捗を関係者全員が共有できるため、迅速で漏れのない防災対策を行うことができます。
背景
気象予報の高精度化により、国土交通省は災害時に発生する状況を予め想定し共有した上で、「いつ」、「誰が」、「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理するタイムライン(防災行動計画)の策定を推奨しています。
しかし、適切なタイムラインの立案には専門家の知見が必要であり 、タイムラインの項目は風水害対策の事例だけでも多岐に渡るため、その時の状況や建物用途、立地まで配慮したきめ細やかな防災対策を策定することは容易ではありません。
そこで、「ピンポイント・タイムライン」にはあらかじめ専門家の知見を盛り込み、防災担当者が条件に合わせた独自のタイムライン策定を容易にするとともに、実際に災害が近づいた時には確実にタイムラインを実行できるように開発しました。
ピンポイント・タイムラインの概要
災害には地震などの「突発型災害」と、風水害、雪害などの「進行型災害」があります。突発型災害では、防災行動を実施することは困難ですが、進行型災害は、事前に起こりうることを想定し共有できるので、タイムラインを策定しておくことで被害を最小限に抑えることができます。
まず、本システムの適用にあたり、当社の専門家が施設や事業所の防災担当者にヒアリングを実施します。これにより、ハザードマップ上での洪水、内水氾濫、高潮、強風など対象となる施設や事業所で想定される風水害や、風水害がもたらす可能性があるリスクを明らかにします。次に、それを基に被害を防止・軽減する具体的な防災対策、各対策を実施する気象条件とタイミングなどを評価して具体的な防災行動計画を策定し、システムのデータベースを構築します。
ピンポイント・タイムラインを構成する3つのシステム
今回、全国の工事現場に導入したシステムを例に紹介します。
1.気象モニタリングシステム
全国レベルの気象情報からあらかじめ設定した場所の気象情報の詳細まで閲覧することができます。
2.アラート通知システム
早期注意情報(警報級の可能性)が発令されると、防災担当者・対策要員に対してSNS等のITツールから注意喚起のプッシュ型通知が発信されます。
3.風水害対策報告システム
対象となる施設ごとに設定してある防災対策がチェックリストで提示され、「実施済み」や「対応不要」をタップしてチェックを入れることで、実施状況を自動で共有することができます。複数の施設を管轄する対策本部などでは、各施設からアップロードされる実施状況や被害状況の写真を一元管理することもできます。この記録をもとに防災対策を振り返ることで、今後の対策についてのブラッシュアップにも役立てることができます。
警報の発表や、雨量・風速の予報値が特定のしきい値を超えると、以下のフローでシステムが作動します。
風水害が迫った際のシステム動作の流れ
- 1. 警報の発表や雨量・風速の予報値が特定のしきい値を超えることでアラート通知システムが作動
- 2. 防災担当者・対策要員などに気象予報の内容と具体的な防災対策をSNSで通知
- 3. 防災担当者が「風水害対策報告システム」に提示された防災対策を実施
- 4. 防災行動計画の実施状況を「風水害対策報告システム」に入力、組織で情報共有
システムによる効果
- プッシュ通知で最新の気象情報を手間なく確認することが可能
- 「何をするか」まで通知することで誰でも迅速に対応可能
- 事前対策や被害状況を簡易なインターフェースで共有することが可能
- 同じエリアでも、災害リスクの高い施設のみにアラート配信ができるので、局所的な災害も見逃さずに対応可能
今後の展望
今後は、SNSによる通知だけでなく、防災担当者や対策要員が漏れなく気づくことができるよう、緊急度によっては回転灯を光らせる、サイレンを鳴らすなど他のシステムとの連携を図っていきます。さらに、施設用途や立地によって異なる防災対策にフレキシブルに対応できるシステムとして機能を拡充させていきます。