当社は、病院内の複雑な物流動線をわかりやすく見える化する病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発・実用化しました。物流動線を評価するシステム開発は医療関連業界初となります。
病院内の搬送物品は医薬品や医療材料、リネン、食事など多岐にわたり、多くの院内スタッフが異なる時間帯にさまざまな手段で搬送しています。その複雑さに起因した無駄が生じていることも多く、院内物流の合理化は病院経営上の重要な課題のひとつと言えます。しかし、動線計画の評価は容易ではなく、関係者の合意形成にも時間を要します。
「サプライくん」は、簡単な操作により短時間で物流動線を評価・見える化するシステムです。物品の搬送に関係する部屋の配置をはじめとするパラメータを変更しながらシミュレーションを繰り返すことで、より合理的な動線計画を提案することができます。
今後、当社は本技術とBIMとの連動をめざすとともに、コンサルティング業務を積極的に展開していきます。
「サプライくん」の概要
簡単な入力、結果出力まで2〜3時間
条件設定シート
「サプライくん」の第1フェーズは、図面を読み込むことで最短搬送経路を算出、ヒアリングを含めて物流動線を見える化することです。
医薬品や医療材料、リネン、食事などの物品カテゴリー別に、品目、物品の搬送に関係する部屋、搬送の時間帯や頻度などをデータベース化し、標準的な院内物流方式をモデルとして初期設定としています。これにより、院内物流に関する複雑な条件設定等の入力作業をなくしました。
システム適用時には、病床数や各階平面図(PDF、手描き図面)などの建物の基本情報を入力し、物品の搬送に関係する部屋や通路・ELV等、システムに認識させるアイコンを図面上に配置すれば、一連の入力作業は完了です。
基本情報の入力から結果表示までに要する時間はわずか2~3時間。病院内の医薬品や医療材料、リネン、食事など全ての物品の、最短搬送経路を自動で算出します。
動線図や3Dアニメーション、グラフでわかりやすく結果を表示
シミュレーションの結果は以下3通りの形式でアウトプットされます。
- 平面図上への物品カテゴリー別の最短搬送経路
- 物品カテゴリー別の搬送距離グラフ
- 搬送状況の3Dアニメーション
物品別、時間・曜日別に分けてそれぞれをシミュレーションすることもできます。
病院経営者、院内スタッフ、設計者などの関係者は、ビジュアル表示されたアウトプットを見ながら協議することで、動線計画案に対する合意形成が容易になります。
ヒアリングと行動モニタリング調査による詳細調査
行動モニタリング調査により院内物流の実態を把握
第2フェーズは、物品を搬送する院内スタッフの実際の動きを調査します。
行動モニタリング調査では、院内スタッフに専用デバイスを携帯してもらい、建物内に設置したビーコンによって位置情報を取得することで、ヒアリングだけでは分からない施設の使われ方の特徴を把握します。
本調査により、対象者一人ひとりの動線量や歩行速度、通路の通行頻度、エレベータ待ち時間など、場所の使われ方に関するさまざまな分析を行うことができます。
また、院内スタッフと物品の動きを結び付けることで、職種により院内スタッフの移動距離や利用する通路・時間帯が異なることなど院内物流の実態を明らかにすることができます。
調査結果とヒアリングデータをシミュレーションに反映
1人あたり搬送距離の比較
行動モニタリング調査と院内スタッフへのヒアリングの結果を「サプライくん」に入力し、繰り返しシミュレーションを行うことで、より実際に近い動線分析結果を得ることができます。
シミュレーション事例
物流動線の合計を現状よりも短縮
約450床、延べ床面積約2万5,000㎡規模の病院において、建て替え時に「サプライくん」を活用。シミュレーション結果に基づき、移動頻度の高い部屋の近接配置、搬送スケジュールや業務分担の見直しを行った結果、物流動線の合計距離は、現状と比較して3割以上短縮しました。