当社の無柱空間(大空間)構築構法「ダブルスーパーウィング構法」を採用した福岡空港新貨物施設 国際貨物上屋※が去る2018年1月に竣工しました。
本建物は、福岡空港貨物施設移転整備事業の一環として建設された施設群の一つで、間口150m×奥行き50mの大空間構造物です。施設計画においては(1)無柱空間であること、(2)将来的に建屋の拡張が可能であること、(3)短工期かつ低コストであることが求められ、当社はこれらすべてに応えることのできるダブルスーパーウィング構法を提案し、採用されました。
ダブルスーパーウィング構法は、当社が1986年に開発したスーパーウィング構法の進化形です。大スパンになるほどローコストで無柱空間を構築できるスーパーウィング構法の特長に加え、妻側外壁の構造柱をなくすことで将来的な建屋の拡張にも対応可能としています。
本構法は架構形状を利用した採光・換気にも優れており、お客さまからも「こんなに明るい荷捌場は初めて」と大変好評です。当社は、本構法により、工場や倉庫はもちろん、ショッピングモールや劇場など、さまざまな用途の大空間を短工期・低コストで実現します。
建築主:福岡空港ビルディング株式会社
インデックス
「ダブルスーパーウィング構法」の概要
スーパーウィング構法とは
スーパーウィング構法は当社開発技術の一つで、鉄骨トラス下弦材にPC鋼線を組み込んで緊張し、プレストレスを導入する構法です。常時引張力が生じている下弦材にプレストレスを導入することで引張力を低減するとともに、自重によるたわみを低減することができます。
一般的なトラス構造に比べ鉄骨量を減らすことができるため、短工期・低コストで無柱空間を構築できます。また、スパンが大きくなるほどコストメリットが増すという特長を持ちます。
ダブルスーパーウィング構法では、スーパーウィングを2方向に配置
本構法は、これまで1方向だったスーパーウィングを2方向に配置することで妻側外壁の構造柱をなくし、将来的な建屋の拡張を可能としています。
施工時解析を設計にフィードバック
解析モデル(福岡空港新貨物施設 国際貨物上屋)
スーパーウィング構法ではPC鋼線の引張による圧縮力を鉄骨トラスへ確実に伝えることが重要です。特にダブルスーパーウィング構法の場合は、これが2方向となるため、設計段階から施工時の建方検討を行っています。
福岡空港新貨物施設 国際貨物上屋に適用するにあたっては、施工ステップごとに解析モデルを作成し、逐次変形および応力を足し合わせることで実情に合った解析を行っています。また、解析結果は設計にフィードバックされ、構造物の品質をより確かなものとしています。
参考)30年以上前の技術がなぜ今?
ダブルスーパーウィング構法の源流であるスーパーウィング構法は、最初の開発からすでに30年以上が経過していますが、それが今再び進化をはじめたのには理由があります。
それは、2000年の法改正により、2002年6月以降は旧法第38条認定の効力がなくなり、本構法における重要な部材であるPC鋼線が、そのままでは用いることが難しいという状況になったことによります。しかし、2008年以降は、PC鋼線が一般的な建設部材として認められたことで構法採用の敷居が下がり、無柱空間構築におけるスーパーウィング構法の合理性や経済性が再び注目されるようになりました。
一般的なトラス構造との比較
本構法は、一般的なトラス構造と比較して、以下のようなメリットがあります。また、倉庫や工場に限らず、ショッピングモールや劇場、スタジアム、アリーナーなどに適用可能であり、お客さまのご要望に応じてさまざまな用途の大空間を短工期・低コストで実現します。
本構法のメリット
トラス高を抑えて無柱の大空間を構築
例えば、間口200m×奥行き80mの大空間を構築する場合、一般的なトラス構造では建物中央に柱を設置したり、トラス高をかなり大きくしたりする必要があります。
本構法では無柱で構築できることはもちろん、トラス高も必要最小限に抑えることが可能です。
鉄骨量を約10%削減
通常のトラスで大空間を構築しようとすると、トラス高さが大きくなり、部材も大きく重くなるため、鉄骨量も多く、組み立て手間も大きくなります。
スーパーウィング構法は下弦材にプレストレスを導入することで、トラス下弦材に常時働いている引張力を低減し、たわみを低減できるため下弦材断面を縮小でき、トラス高さも縮小できるため鉄骨量を通常のトラスより10%程度削減することができます。
工期を最大10%短縮
トラス構造では、トラスを一時的に支える仮受け構台を盛り替えながら作業を行いますが、本構法では仮受け構台はスーパーウィング部のみに必要となるため、工期を最大10%短縮することが可能となります。
採光・換気に優れ、メンテナンスも容易
スーパーウィングと鉄骨単材の段差を利用することで採光・換気が行えます。また、トップライトやルーフファンのようにメンテナンスの際に屋上に上がる必要もありません。