当社は、既製コンクリート杭(既製杭)と支持層を一体化する根固め部ソイルセメント※1の強度を、現場で即座に判定できる技術「CW-QUIC※2」を開発しました。
建物を支持する杭の構築は、建物全体の品質を左右すると言えるほど重要な工事です。杭工事の一つである既製杭の埋込工法においては、杭の支持力に直接影響するソイルセメントの品質検証(強度確認)が不可欠であり、日本建設業連合会の施工管理指針でも推奨事項とされています。しかし、試験杭のテストピースを用いる圧縮試験の場合、設備を備えた専門会社に依頼しなければならない上、時間も3日以上かかります。また、試験の結果によっては施工方法を変えて再度試験しなければならないなど、さらに時間が必要となり、施工計画全体を遅延させる可能性もあります。
当社が開発したCW-QUICは、化学的手法を用いることで、わずか10ccの試料からソイルセメントの強度を1時間程度で判定するものです。特殊な設備・機器や高度な技量は必要ないため、判定作業は現場で行うことができ、検査費用も1回あたり10万円以下と低コストです。
本技術は、すでに全国70カ所以上の当社現場で試験適用しており、品質確保に大きく貢献しています。今後は、既製杭を採用する当社の全現場に適用するとともに、2年後を目処に他社への技術供与を目指すなど、建設物の品質向上と建設業界全体の課題解決に向けた取り組みを進めます。
根固め部とも呼ばれ、ミルク状のセメントと現場の泥水を混合・撹拌して構築する
Cement/Water ratio(セメント水比), Quality Inspection of Cemented-soil
インデックス
CW-QUICの概要
簡便な装置とマニュアルを用いて誰もが1間程度で判定可能
CW-QUICは、従来のテストピースを用いた圧縮試験とは異なり、化学的手法を用いてソイルセメントの強度を判定します。
また、判定作業のために特殊な設備・機器、高度な技量は必要なく、マニュアルに従って現場で誰もが1時間程度で判定することができます。
判定の仕組み
本技術は、ソイルセメントの強度が土質ごとにセメント水比(セメントと水の比率)と相関が高いこと、また、セメントがアルカリ性であることを利用して強度の判定を行います。
当社では原位置土を用いた配合試験を踏まえソイルセメントの強度とセメント水比の関係を数式化しており、必要な強度とソイルセメントに含まれる水の量がわかれば、強度を確保できるセメント量を求めることができます。判定に使用する式はさまざまな土質の下限値を使用しており、ソイルセメントに実際に含まれるセメント量が必要量以上であれば、強度は確保されていると判定できることになります。
そして、セメントが必要量以上含まれているかどうかの確認には、アルカリと酸の中和反応を利用します。判定用の試料に必要量のセメントをちょうど中和できる量の酸を加えた後、試料がアルカリ性を示せばセメント量は必要量以上含まれていると判定される仕組みです。
具体的な作業手順と判定結果
判定作業は、未固結状態のソイルセメント(約10㏄)を用い、以下の手順で行います。
- 採取したソイルセメントを乾燥式水分計に投入、乾燥前後の重量を比較して水分量を計測
- 計測した水分量と、対象とする工事でソイルセメントに求められる強度を算定表に当てはめ、判定に使用する酸の量を決定
- プラスチック容器(容量約100cc)に乾燥後のソイルセメント(1.00g)と所定量の酸、指示薬(アルカリ性の場合にピンク色に変色)、水を加えた混合液(計100g)をつくり、10分間隔で振り混ぜ、30分後の色調を確認
ソイルセメントに十分なセメント量が含有されている場合は、混合液がアルカリ性となるためピンクに変色し、必要な強度を確保できていると判定します。逆に、セメント量が不足している場合は酸性となるため色がつかず、強度不足と判定します。
参考)テストピースを用いた圧縮試験による強度の判定
未固化の根固め部ソイルセメントを採取して円柱のテストピースを作成し、これを圧縮試験機にかけて強度を判定します。
根固め部に必要とされる強度を直接計測することができる反面、試験までに3日の養生期間を設ける必要があるため、その間は杭工事を進めることができなくなります。また、圧縮試験の結果、強度不足が判明した場合は施工方法を変えて再度試験するなど、さらに時間が必要となり、工期遅延や追加コストが発生します。
全国70カ所以上の現場に適用し、信頼性を確認
当社では、全国70カ所以上の現場に本技術を適用し、判定結果の信頼性について確認しています。
導入効果も高く、わずか10ccの試料から現場において1時間で強度を判定できるため、工期短縮やコストダウンに貢献することに加え、ソイルセメントの強度不足が判明した場合でも、当日中にその場で施工方法の見直しができるなど、工期遅延の防止にも役立っています。
今後は、既製杭を採用する当社の全現場に適用するとともに、2年後を目処に他社への技術供与を目指します。また、将来的には、試験杭だけではなく全杭での品質検証を可能とできるよう開発を継続していきます。