当社は、大深度地下大断面トンネルの分岐合流部を低コスト・短工期で構築できる「SR-J工法※1」を開発し、このたび実用化に目処をつけました。
現在、都市部では地下鉄や電気・ガスのライフライン等、様々な施設・設備が地下に埋設されており、利用できる地下の深さは年々深くなっています。また、「大深度地下法(平成13年4月施行)」により公共目的のための大深度地下利用が可能となるなど、大深度地下の利用促進が求められています。
「SR-J工法」は、当社の大深度地下開発技術の一つで、地上からの施工が困難な大深度地下トンネルの分岐合流部(500m2超)を地中の深い地下で構築する工法※2です。直径3m程度の小さい複数のルーフシールド(小断面シールド)施工と凍結工法※3という信頼性の高い技術を組み合わせて、分岐合流部の強度と止水性を確保し、低コスト・工期短縮を実現しました。また、実用化に向けた解析や実証実験により、工法の安全性についても充分確認済みです。
今後は、東京外郭環状道路など、都市部の大深度大断面トンネル工事への採用を積極的に提案していきます。
SR-J工法:Shield Roof Pre-supporting System for Junction 工法の略
従来(開削工法)は地上から掘り、地中に構造物を造ってから、埋め戻していましたが、地中で構築(非開削工法)することにより、地上への影響がなく、工事用地も不要となり、工期短縮・コスト縮減等のメリットがあります
凍結工法:ルーフシールド内に-27℃の凍結液を配管で循環させて、分岐合流部を包み込むように凍土を造る
●特長
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複数の小断面シールド機で、超大断面トンネルを経済的に構築
「SR-J工法」は、複数のルーフシールドで分岐合流部を囲むように掘削し、ルーフシールド間の地盤を凍結処理して固めます。その後、分岐合流部を切り広げて掘削し、トンネル内部全体を施工・構築します。
この工法は凍結工法や地盤改良を主体とした従来工法と比べ20%以上のコスト低減効果と、大幅な工期短縮が可能になりました。
技術の概要
また、ルーフシールドの掘削に用いるシールド機は、急曲線発進やUターン掘削、再利用が可能です。シールド機を数回転用できるため、コストを削減できます。
◆施工手順
1.ルーフシールド掘削
2.ルーフシールド間凍結
3.トンネル内部全体を掘削
4.道路構築
凍結工法を利用した強靱な複合アーチリング
■解析で工法の安全性を検証
ルーフシールドと凍土が形成する複合アーチリングについては、FEM解析※を行ない、分岐合流部の掘削時における地盤沈下の予測や強度の検討を行いました。この検討において、シールド周囲の凍土温度-15℃、凍土厚4mと設定しました。
検討の結果、地盤沈下については一般的に構造物に影響を及ぼす値を十分に下回っています。また、凍土の強度は、十分に安全であることがわかりました。
有限要素法。性能検討手段のひとつ。地盤や構造物など複雑な形状や性質を持つ物体を単純な小部分に分割し、全体の挙動を予測する方法
■ 実証実験で工法の安全性を確認
実用化に向けた実証実験では、複合アーチリングについて、2つの実験をしました。複合アーチリングの1スパン規模の試験体では、要素試験を実施し、載荷時の挙動、耐力および破壊メカニズムを把握しました。複合アーチリング全体については、実施工の縮尺1/20の試験体で、室内実験としては大規模な実験を実施しました。解析結果同様、約2倍を超える耐力を持ち、構造体の安定性が検証できました。
多様なニーズに応えるシミズの大深度地下開発技術