2005.11.10

テクニカルニュース

生産技術

地下超大断面トンネルの分岐合流部を低コスト・短工期で構築!

当社は、大深度地下大断面トンネルの分岐合流部を低コスト・短工期で構築できる「SR-J工法※1」を開発し、このたび実用化に目処をつけました。

現在、都市部では地下鉄や電気・ガスのライフライン等、様々な施設・設備が地下に埋設されており、利用できる地下の深さは年々深くなっています。また、「大深度地下法(平成13年4月施行)」により公共目的のための大深度地下利用が可能となるなど、大深度地下の利用促進が求められています。

「SR-J工法」は、当社の大深度地下開発技術の一つで、地上からの施工が困難な大深度地下トンネルの分岐合流部(500m2超)を地中の深い地下で構築する工法※2です。直径3m程度の小さい複数のルーフシールド(小断面シールド)施工と凍結工法※3という信頼性の高い技術を組み合わせて、分岐合流部の強度と止水性を確保し、低コスト・工期短縮を実現しました。また、実用化に向けた解析や実証実験により、工法の安全性についても充分確認済みです。

今後は、東京外郭環状道路など、都市部の大深度大断面トンネル工事への採用を積極的に提案していきます。

SR-J工法:Shield Roof Pre-supporting System for Junction 工法の略

従来(開削工法)は地上から掘り、地中に構造物を造ってから、埋め戻していましたが、地中で構築(非開削工法)することにより、地上への影響がなく、工事用地も不要となり、工期短縮・コスト縮減等のメリットがあります

凍結工法:ルーフシールド内に-27℃の凍結液を配管で循環させて、分岐合流部を包み込むように凍土を造る

●特長

  • 小断面シールド機は再利用が可能なため、コストを低減できます。
  • ルーフシールドの間隔を調整することで、場所により断面が変化する分岐合流部を最小限の掘削量で施工できます。
  • 凍結工法により大深度の高水圧下でも確実な止水ができ、強度を確保し、地盤の沈下を抑制できます。
  • 本シールドとルーフシールドの施工を重複して進めることができるため、工期短縮が図れます。

複数の小断面シールド機で、超大断面トンネルを経済的に構築

「SR-J工法」は、複数のルーフシールドで分岐合流部を囲むように掘削し、ルーフシールド間の地盤を凍結処理して固めます。その後、分岐合流部を切り広げて掘削し、トンネル内部全体を施工・構築します。

この工法は凍結工法や地盤改良を主体とした従来工法と比べ20%以上のコスト低減効果と、大幅な工期短縮が可能になりました。

技術の概要

また、ルーフシールドの掘削に用いるシールド機は、急曲線発進やUターン掘削、再利用が可能です。シールド機を数回転用できるため、コストを削減できます。

◆施工手順

1.ルーフシールド掘削

ランプシールドからルーフシールド機を発進させ、分岐合流部を囲むように、掘削する。

2.ルーフシールド間凍結

ルーフシールド内に凍結管を配備し、ルーフシールド間に凍土を造成し、固める。

3.トンネル内部全体を掘削

凍土が造成完了後、分岐合流部の切拡げ掘削を行なう。ランプシールド、本線シールドのセグメントを解体。掘削終了後、覆工コンクリートを施工。

4.道路構築

分岐・合流部の道路構築を行ない、工事完成。


凍結工法を利用した強靱な複合アーチリング

■解析で工法の安全性を検証

ルーフシールドと凍土が形成する複合アーチリングについては、FEM解析を行ない、分岐合流部の掘削時における地盤沈下の予測や強度の検討を行いました。この検討において、シールド周囲の凍土温度-15℃、凍土厚4mと設定しました。

検討の結果、地盤沈下については一般的に構造物に影響を及ぼす値を十分に下回っています。また、凍土の強度は、十分に安全であることがわかりました。


FEM解析で複合アーチリングの安全性を確認

有限要素法。性能検討手段のひとつ。地盤や構造物など複雑な形状や性質を持つ物体を単純な小部分に分割し、全体の挙動を予測する方法

■ 実証実験で工法の安全性を確認

実用化に向けた実証実験では、複合アーチリングについて、2つの実験をしました。複合アーチリングの1スパン規模の試験体では、要素試験を実施し、載荷時の挙動、耐力および破壊メカニズムを把握しました。複合アーチリング全体については、実施工の縮尺1/20の試験体で、室内実験としては大規模な実験を実施しました。解析結果同様、約2倍を超える耐力を持ち、構造体の安定性が検証できました。


複合アーチリング1スパンの要素試験
(実施工の縮尺1/7.5)


複合アーチリング全体の構造安全性試験
(実施工の縮尺1/20)


多様なニーズに応えるシミズの大深度地下開発技術

ES-J工法 Seg-Jet工法 アーバン・メカ・シャフト工法

分岐合流部を非開削で施工する
「イー・エス・ジェー(ES-J)工法」

都市域の大深度地下道路トンネルの分岐合流部を非開削で構築する技術です。
トンネル断面を拡大・縮小できる大断面シールド機による拡幅技術と、本線シールドとランプ用入り口シールドの接合技術からなっています。(詳細はこちらへ

工法の概要図(画像にマウスカーソルを重ねると平面図を表示します)

高速施工を実現する
「 エフ・ナビ(F-NAVI)シールド工法」

F-NAVIシールド機は、前胴部と本体部に分かれており、前胴部は本体部と独立して上下左右に自由に動かすことができる「首振り制御機構」を備えています。このため、掘削とセグメント組み立てを同時に行うことができ、高速施工を実現します。

F-NAVIシールドマシン(画像にマウスカーソルを重ねると首振り機構図を表示します)

部分拡幅できる
「セグ・ジェット(Seg-Jet)工法」

トンネルの断面を、非常駐車帯などの目的で、シールド機等の特殊な拡幅装置を用いることなく、本シールド機の掘削と並行しながら、部分的に拡幅することができます。本線シールド掘削時に拡幅区間には拡幅用セグメントを設置し、複数の孔から噴射用のノズルを出し、超高圧水で地盤を切削しながらセグメントを押し出します。(詳細はこちらへ

工法の概要図(画像にマウスカーソルを重ねると掘削の仕組み図を表示します)

大深度立坑を高速に施工する
「アーバン・メカ・シャフト工法」

都市部における大口径・大深度立坑のニーズに応え、狭い施工面積で、周辺に影響を与えることなく、短期間に施工します。立坑の先端を水中駆動掘削機を用いて掘削を行うと同時に、地上の足場上で躯体となる鋼製リングを組み立て、油圧ジャッキを使って圧入します。(詳細はこちらへ

小断面の大深度斜坑を施工する
「斜坑推進工法」

大深度斜坑(換気坑・電気・ガスのライフライン接続等)向けの高水圧対応の泥水式推進工法で、地上の任意の位置から経済的に掘削できます。
今後一層複雑化する地下構造物へのアクセス方法の選択肢を広げる工法です。

設備構成図(画像にマウスカーソルを重ねると地上の工事風景を表示します)