2024.09.10

テクニカルニュース

環境

PFAS汚染土壌・汚染水の浄化技術

当社は、人体への有害性が指摘されているPFAS(有機フッ素化合物)による汚染土壌や汚染水を効果的に浄化する技術の開発を2021年度から進めてきました。

その成果を、9月18日(水)~20日(金)に東京ビッグサイトで開催される「地盤技術フォーラム2024『土壌・地下水浄化技術展』」でご覧いただけます。
ここではその一部をご紹介します。

泡沫分離法を利用し、PFASを分離する様子

PFASとは

PFASは、界面活性剤としての特性を有する人工化合物で、熱に強く、水と油の両方をはじく特質から、コーティング剤や泡消火剤など多様な製品に使用されてきました。

一方で、PFASは自然環境では分解されにくいことから「永遠の化学物質」とも呼ばれ、1990年代以降、環境や生体への残留性・蓄積性が問題視されるようになり、代表的物質のペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)が「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」で規制対象物質に指定されるなど、世界各国で規制強化が進められています。

日本国内では、POPs条約の決定を受け、PFOS/PFOAが化学物質審査規制法(化審法)の第一種特定化学物質に指定され、製造・使用、輸出入の禁止・制限対象となっています。2020年には水道水や公共用水域、地下水に対する水質管理目標の暫定指針値(PFOSとPFOAの合計値で50ng/ℓ)が設定されましたが、多量の泡消火剤が使われてきた飛行場や基地周辺などで暫定指針値を上回るPFASが検出されるなど、環境汚染問題が顕在化しています。

当社はこうした状況下、将来的な規制強化を見越して、2021年度からPFAS含有土壌・地下水の浄化技術の開発に取り組んできました。

PFAS汚染水浄化技術

PFAS汚染水に対しては、汚染物質を泡に付着させて分離・回収する泡沫分離法による浄化手法を確立し、2022年度に沖縄県内で実施したPFAS汚染水の浄化実証試験において、国の暫定指針値の12倍(634ng/ℓ)を超えるPFAS汚染水を濃度1ng/ℓ以下まで浄化処理することに成功しています。

泡沫分離法
(気泡に界面活性剤を付着させて上昇させることにより泡沫層に界面活性剤を濃縮する方法)

PFASは、水からはじかれやすく、物質同士で集合体を形成しやすいため、水中に気泡を供給すると、気泡の気液界面(空気と液体の境界)に吸着し、気泡と共に行動するようになります。

通常、気泡は水面に達すると破れてそこに集まっていた物質は水面や水中に分散しますが、界面活性剤などの物質を吸着した気泡はすぐに破れず、水面に気泡の層を形成します。この気泡が破れる前に除去することで、水中から物質を分離します。

気泡に界面活性剤を付着させて上昇させることにより泡沫層に界面活性剤を濃縮する方法
泡沫分離処理装置
泡沫分離処理装置
浄化実証試験の様子
浄化実証試験の様子
動画:泡沫分離の状況(0:15)

PFAS汚染土壌洗浄技術

土壌汚染に対しては、汚染物質を土壌の細粒分に集積させる分級手法と、水中の泡の表面に汚染粒子を付着させて分離・回収する泡沫分離法(フローテーション)を組み合わせることで、洗浄処理土の浄化品質を最大限高めることができます。

洗浄処理土は埋戻し等に再利用でき、焼却等の2次処理が必要な濃縮汚染土を大幅に減容化できることから、土壌処理コストの削減も見込めます。

これまで主に重金属や油、ダイオキシン類による汚染土壌の浄化に適用され、処理実績は約320万トンに上ります。

2023年6月から進めてきた、米国内で採取された実汚染土壌を対象に実施した室内浄化試験では、PFAS含有量の約99%を土壌から除去することに成功し、洗浄水に残存するPFASについても、約99%を除去できることが確認できました。

米国でのPFAS汚染土壌の室内浄化試験

  • 分級試験の様子
    分級試験の様子
  • 泡沫分離(フローテーション)の様子
    泡沫分離(フローテーション)の様子
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の洗浄試験結果
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)の洗浄試験結果

今後の展望

PFASに関する規制強化の動向を注視しながら、PFASを含む泡消火剤が広範囲に散布された可能性のある基地施設やPFASを製造・使用していた事業所等の土壌・地下水浄化事業への展開を目指します。