当社は、高速道路や橋梁を構成する合成桁※のコンクリート床版取替工事において、ワイヤーソーによる床版水平切断作業の高速化・精度向上に寄与する「走行台車付きダブルワイヤーソー工法」を開発しました。
ワイヤーソー工法とは、躯体にダイヤモンドワイヤーを巻き付けて高速回転をさせることで、コンクリートなどを切断する工法です。新工法では、ワイヤーソーの回転速度を向上させる2体の駆動プーリー(滑車)を配備した高性能ワイヤーソーと、切断高さを保持するガイドプーリーにより、床板の水平切断の高速化および高精度化を実現します。この切断装置とレール上を移動する走行台車を組み合わせることにより、切断作業に要する時間を従来工法と比べて約45%程度縮減できます。
今後、既設高速道路における大規模更新工事の主体となる合成桁コンクリート床版の切断作業への適用を促進し、高速道路更新工事の生産性向上につなげていきます。
合成桁…鋼桁と床版を一体化したもの
インデックス
背景
高度成長期に建設された高速道路や橋梁などのインフラの老朽化に加え、大型車両交通量の増加に伴う健全度の低下が懸念される中、床版の取り替えや桁の補強を主体とする大規模更新工事の需要が増加しています。鋼桁とコンクリート床版を一体化した合成桁の床版取替工事では、既設コンクリート床版の撤去に要する時間が全作業の約3割を占めており、工事全体の生産性向上には同作業の効率化が不可欠です。
しかし、従来の床版撤去作業では、桁間のコンクリート床版を垂直に切断して先に撤去した後、桁上に残るコンクリート構造物をワイヤーソーで水平に切断し、残りはウォータージェットで除去するという2段階の作業が必要な上、ワイヤーの緩みによって桁が損傷しないよう、コンクリートを50mm程度の厚みを残して切断しなければなりません。こうした制約を少しでも減らし、作業効率を高めるうえで、ワイヤーソー切断の高速化のほか、ウォータージェットによるコンクリート除去量の削減が課題となっていました。
また、従来工法では主に固定式のワイヤーソー切断装置を利用していたため、一定の長さを切断した後、切断装置を移設する必要があり、分解・組立に多くの手間と時間を要していました。
走行台車付きダブルワイヤーソー工法の概要
本工法の切断装置には、ワイヤーソーの回転速度を向上させるための2体の駆動プーリーと、切断高さを保持するためのガイドプーリーが備え付けられています。切断装置を橋軸方向に走行させて、床版を切断する際、2体の駆動プーリーによって従来よりも速く切断することができるうえ、ガイドプーリーによって、桁上床版の切断ラインを桁の上端からわずか20mmに設定することができます。これにより、残コンクリートの撤去のためのウォータージェット作業が大幅に削減されます。
メリット
1.切断作業時間45%短縮
ダブルワイヤーソー採用による切断能力の向上だけでなく、床版上に敷設した走行用レールの長さに応じて連続的に切断作業が行えるため、走行台車移動による分解組立回数を最小限にすることができます。
2.残コンクリート厚さ60%低減
ガイドプーリーで切断高さを保持し、残コンクリート厚さを50mmから20mmに低減することが可能です。
3.安全性向上
全て桁上での作業となるため、ガイドレールや補助プーリーの桁下設置が不要となり、作業員の安全性も大幅に向上しました。
4.湿式切断/乾式切断の両方に対応
コンクリートの切断は、騒音や振動、粉塵の発生を抑える理由からほとんどが湿式で行われますが、切断装置のガイドプーリー付近に乾式用集塵カバーおよび集塵ユニットを取り付けることで、湿式切断が困難な現場にも対応することができます。
5.横断勾配にも対応
左右の独立したガイドプーリーによって高さを簡単に調整することができるため、勾配を持つ橋脚の床版切断も装置を止めずに作業することが可能です。
今後の展望
合成桁コンクリート床板切断作業の効率化により、床版取替工事全体の工期短縮と、工期中の交通規制によって発生する周辺道路での渋滞の減少、全国で必要とされている交通インフラのスムーズな更新に寄与します。