2015.12.10

テクニカルニュース

維持・保全

「タフネスコート」で、トンネルのコンクリート剥落を防止

当社は、コンクリート構造物の補強工法「タフネスコート」が、トンネル覆工コンクリートの剥落防止工法としても有効であり、実工事に適用可能であることを、(公財)鉄道総合技術研究所、三井化学産資(株)と共同で検証しました。

国内には約4,700本の鉄道トンネルと約10,000本の道路トンネルがあるとされています。建設から数十年を経たトンネルも多く、道路トンネルでは約20%が建設後50年を経過しており、2033年にはその割合が50%に達すると予想されています。トンネルの老朽化に伴い、コンクリートが剥落する事例も発生しており、早急な対策が望まれています。

トンネル覆工コンクリートへのタフネスコート適用は、コンクリート表面を清掃して塗装下地材を塗布した後、ポリウレア樹脂を吹き付けるだけです。非常に手軽な工法でありながら、コンクリートの劣化による剥落に加え、大変形にともなう圧縮破壊による剥落を防止することができます。また、ポリウレア樹脂そのものが経年劣化しにくいことも大きな特長です。

今後は、施工用設備のコンパクト化を含む施工性のさらなる向上と同時に、コンクリート以外のトンネル覆工体へのタフネスコート適用にも取り組みます。

ポリウレア樹脂をコンクリート構造物の表面に数ミリの厚さで吹き付けるだけで、構造物の耐衝撃性や耐久性を向上させる技術。参考 :「塗るだけで、壊れにくいコンクリート構造物を実現


大型トンネル覆工載荷試験装置(鉄道総合技術研究所)を用いた実験の様子


室内実験と試験施工

剥落防止効果の検証にあたっては、鉄道総合技術研究所が所有する大型トンネル覆工載荷試験装置を用いた室内実験と、休止線のトンネルにおける試験施工を実施しました。

■大型トンネル覆工載荷試験装置を用いた室内実験

トンネル覆工コンクリートを模した大型試験体(新幹線複線標準断面の1/5相当。内径1,850mm×奥行き300mm×厚さ150mm)の内側表面をタフネスコートで被覆した後、覆工の天端を下方に最大70mm変位させる実験を行いました。その結果、大変形により試験体にひび割れや大きな圧縮力が生じても覆工の剥落は発生せず、力の伝達が成立していることが確認できました。

■休止線のトンネルにおける試験施工

覆工コンクリートの頂部に設けた施工部位(幅2,000mm×奥行き1,000mm×6箇所)にタフネスコートを適用して、閉鎖空間における施工性と品質の確認を行いました。

下地処理は、(a)ウェスによる表面清掃(5回拭き)、(b)圧搾空気による表面清掃(5回吹き)、(c)ディスクサンダーによる表面清掃の3パターンとし、漏水箇所と非漏水箇所に分けてそれぞれ実施。施工の1週間後、1カ月後および6カ月後に行われた付着試験では、いずれの場合においても所定の塗膜厚(1.5mm以上)と付着強度(1.5N/mm2)が確保できていることを確認しました。


休止線トンネル坑口の状況


移動式高所作業車を用いた施工状況


タフネスコートの耐衝撃性能

タフネスコートの耐衝撃性能については、高速道路のコンクリート製防護壁や堤防の維持・保全工事への適用に向けた実証実験を実施しており、設計手法の確立に向けた各種データの収集・蓄積を行っています。

■重錘落下実験

高速道路における防護壁を模した実物大の試験体(高さ1,000mm×幅600mm×厚さ200mm)による重錘落下試験を行い、タフネスコート被覆あり(厚さ4mm、2mm)・なしでの衝撃に対する抵抗力について比較を行いました。

43tトレーラが時速200kmで接触衝突(15°)するのに相当する衝撃力(道路防護壁の設計荷重の3.5倍)を加えた実験では、根元のコンクリートが破壊されるため、通常の試験体では圧縮側のコンクリートが剥落しますが、タフネスコートで被覆した試験体ではラッピング効果により圧縮側のコンクリートの剥落が防止されることを確認しました。


被覆なしの試験体では、圧縮力が作用する側の根元コンクリートが剥落するが、タフネスコート被覆ありの試験体では剥落が防止された


試験体の破壊状況:タフネスコート被覆した試験体では、コンクリートに断面破壊の跡が見られるが、崩壊はしていない


タフネスコートは、被覆なしに比べ、崩壊に対する粘り強さ(入力エネルギー量)を大幅に向上できた