2015.11.16

テクニカルニュース

健康・快適

屋外・屋内の区別なく視覚障がい者を音声でナビゲート

当社は、スマートフォンを活用し、屋外・屋内の区別なく目的地までの経路を詳細に案内する視覚障がい者向けの音声ナビゲーションシステムを、日本IBM (株)東京基礎研究所と共同開発しました。

近年は、GPS(全地球測位システム)の進歩により、スマートフォンなどを用いた屋外での歩行者ナビゲーションシステムが一般化しつつあります。しかし、視覚障がい者の利用を前提とするシステムはなく、またGPSが届かない屋内や地下街では、実証実験が始まったばかりであり、普及が遅れています。

本システムは、屋内外を切れめなくナビゲートできることが最大の特長です。スマートフォンに目的地を話しかけるだけで、最適な移動経路だけではなく、階段や手すりなど、施設・設備の詳細についても音声で案内します。歩行困難者には階段や段差のない移動経路を示すことができる上、移動経路が画面表示されるので、健常者にも使いやすいシステムとなっています。

現在、当社 技術研究所で実証実験を重ねており、今後は、大規模物販施設や教育施設、病院、空港・駅などの公共施設での利用を視野に、早期の実用化を目指します。


システムの概要

本システムは、当社の持つ高精度測位インフラ技術、空間情報データベース技術と、IBMの持つ高精度屋内位置推定技術、音声認識技術を融合したもので、空間情報データベースと音声ナビゲーションシステム、ビーコン(位置情報通信設備)、スマートフォン向けアプリケーションから構成されます。

利用者がスマートフォンにインストールされたアプリケーションとの音声対話により目的地を設定すると、空間情報データベースが現在位置から目的地までの最適経路のほか、経路の幅や階段の位置・段数、手すりの長さなど、ナビゲーションに必要な情報をアプリケーションに送ります。

情報を受け取ったアプリケーションは、視覚障がい者を目的地に導く音声情報をタイミングよく送ります。また、スマートフォン画面には移動経路が表示される仕組みとなっているため、健常者にも使いやすく、歩行困難者には階段や段差のない移動経路を示すこともできます。


当社 技術研究所「親切にささやく場」における実証実験

本システムの開発にあたっては、当社 技術研究所内に常設の体験施設「親切にささやく場」を開設し、視覚障がい者の協力も得ながら実証実験を進めました。


実証実験に用いる空間情報データベースには、「親切にささやく場」(本館1・2階、多目的棟1・3階と、それぞれを結ぶ外構など約5,000m2)の施設・設備に関する情報が収められている。上の画像は、空間情報データベースの情報を元に、本館1階ロビーから多目的棟3階までの経路を表示したもの。

■実証実験の様子(音声付き)

アプリケーションからは、屋外・屋内の切れ目なく、利用者(視覚障がい者)を目的地に導く音声情報がタイミングよく送られます。利用者の位置は常に高精度で測定されており、方向修正が必要な場合は、利用者へ即座に情報が伝えられます。

音声情報の例

【屋外】
「3m先、右折します」
「右、手すりがあります」
「途中、下りスロープがあります」
「残り5m」
「残り3m」
「右、3時です」

【屋外から屋内へ】
「10時方向10m」
「建物入り口まで進みます」
「入口手前にフロアマットがあります」
「残り5m」
「少し左です」
「自動ドアから建物の中に入ります」
「2m先、マットの終わりを右折します」
「右、3時方向です」