当社は、人のすごしやすさと生態系保全のバランスに配慮し、人と生き物の双方に優しい緑化計画を立案できる「都市緑地影響評価システム」を開発しました。
近年、都市部では建物と緑を一体的に計画・整備することが多くなり、公開空地の植え込みや壁面緑化など、街中で緑を目にする機会が増えてきました。緑が増えれば増えるほど生き物の生息圏は拡大しますが、過度の緑化は風通しを悪くしたり、有害な生き物を増やしてしまうなど、人にとってすごしやすい環境とはならない可能性もあります。
本システムは、緑化プランが計画地周辺の生態系に与える影響と、計画地内における温熱環境の快適性を総合的にシミュレーションするものです。本システムを用いると、緑の「量」だけでなく「質」も考慮した緑化計画を立案することが可能です。
今後、当社は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの施設整備や、今後想定される東京都心部での大規模開発などに本システムを提案し、良好な都市環境の創出に貢献していきます。
「都市緑地影響評価システム」の概要
本システムは、生き物の生息適性を評価する都市生態系ネットワーク評価システム「UE-Net」と、計画地内の温熱環境を予測・評価する温熱環境評価システムから構成されます。
計画地の緑化プランを本システムへ入力すると、UE-Netが計画地周辺の生き物の生息適性を点数評価すると同時に、温熱環境評価システムが計画地内の温熱環境(=人にとってのすごしやすさ)について標準新有効温度※を用いて評価します。温熱環境の評価については、都市開発や緑化に伴う風の流れの変化も反映することができます。
生き物の生息適性と人にとってのすごしやすさは必ずしも一致しないため、緑化条件を変えながら評価を重ね、人と生き物の双方にとって最適な緑化計画を立案する仕組みとなっています。
標準新有効温度(SET*:Standard new Effective Temperature)
気温、湿度、風速、放射熱に加え、作業量、着衣量も考慮して、人が感じる暑さ・寒さの感覚を表す体感温度指標
生態系ネットワークへの影響を見える化する「UE-Net」
UE-Netは、樹木や草地、水辺など、都市部の自然環境における指標生物の生息適地ネットワークの拡がりを、定量的かつ視覚的に評価・予測できるシミュレーションシステムです。都心7区(新宿区、渋谷区、港区、千代田区、中央区、品川区、江東区)の約200km2についてはデータベースを構築済みであり、緑化計画を入力するだけで周辺の生態系ネットワークへの影響を見える化することができます。
■アップグレードにより従来比5倍の解像度を実現
従来は人工衛星データを用いて緑を固まりとして評価していましたが、航空写真データを活用することにより従来比5倍の解像度を実現、樹木1本ごとを単位として評価できるようにアップグレードしました。