当社は東日本大震災の被災地において、放射性物質の除染作業や災害廃棄物の処理業務を行っており、必要とされる各種技術の開発にも積極的に取り組んでいます。なかでも除染関連技術は、その除染効果や経済性、安全性が高く評価され、環境省の除染技術実証事業にも採択されています。
今回の特集では、平成24年度の除染技術実証事業に採択され、現在、福島県伊達市で実証試験を実施した「S-Jetモバイル除染システム」と、3次元線量予測システム「DOSE 3D MAP」についてご紹介します。
S-Jetモバイル除染システム
S-Jetモバイル除染システムは、超高圧水の噴射により少水量で高効率の除染を行う除染システムです。
アスファルト路面やコンクリート路面、インターロッキングブロック等を主な除染対象とし、建物の周囲や駐車場、歩道、小路などの狭隘な場所で威力を発揮します。
■システムの概要
本システムは、新開発の特殊ノズルヘッドを備えた掃除機大の手押し式フロアクリーナー、超高圧水を供給する超高圧ウォータジェットシステム、除染廃液を回収するバキュームユニット、発電機等から構成されます。
特殊ノズルヘッドは、路面と平行に高速回転(1000~1600回転/分)しながら、路面をえぐるような角度で超高圧水を噴射。少水量ながら高い除染効果を発揮するとともに、切削厚さを最小限に抑えます。また、汚染状況に応じてノズルヘッドの回転数や路面との距離を調整することで、除染効果を最適化します。
回収した除染廃液等は、放射性物質を約99.9%除去できる凝集沈殿処理を施し、固形物は放射性物質として回収。上澄水は放射能濃度が放流基準を満たしていれば現地で一般排水として放流し、満たしていない場合にはゼオライトを用いたフィルターで処理します。
■除染コストを大幅に削減
汚染されたアスファルト道路の表面濃度の目標低減率を80%とした場合、本システムの使用水量は2.6リットル/分、表層の切削厚さは1mm程度と、それぞれ従来システムの1/3以下です。
加えて、本システムは、機器の小型化によりトラック1台に搭載することが可能なため、除染コストを大幅に削減することができます。
3次元線量予測システム「DOSE 3D MAP」
3次元線量予測システム「DOSE 3D MAP」は、任意の場所の空間線量について、敷地形状や敷地周辺の地形、施設に搬入される除去土壌等の線量や貯蔵量・場所、遮蔽壁などの諸条件をもとに予測するシステムです。
本システムは、地形の高低差や空気中での放射線の減衰・散乱を考慮し、除染や汚染による空間線量の予測評価が可能です。特に、経済性と安全性の両面から的確な線量評価が欠かせない中間貯蔵施設などの施設計画ならびに運営計画に有効です。
■システムの概要
本システムは、敷地周辺の線量状況を3次元マップ化するGPSモニタリングシステムと、任意の場所の空間線量を予測する解析ソフトから構成されます。
GPSと線量計、ノートパソコンがセットになったGPSモニタリングシステムは、位置データと線量データが同時にノートパソコン内に蓄積される仕組みです。システムを車両に搭載して敷地周辺の道路を20km/h以下で走行、あるいは調査担当者が携帯して山林や畑、家屋の敷地を徒歩でデータ収集します。
また、解析ソフトは、搬入する除去土壌等の線量や荷姿、貯蔵場所、貯蔵量、設置場所をはじめとする施設計画などを入力することで、放射線の軌道を3次元的に解析します。敷地や施設内外の任意の場所における線量が予測できます。
■適切な線量評価により、周辺への影響を低減した最適な施設計画が可能
除染作業で発生する汚染廃棄物を安全に管理・保管する必要のある中間貯蔵施設では、事前に放射線の影響評価予測を行うことにより、最適な施設計画や作業員の安全管理、施工期間の短縮、コストの削減が可能となります。
■その他除染関連技術
今回ご紹介した技術の他にも、当社はさまざまな除染関連技術をご提供しています。