当社は、従来のサプライチェーン全体の地震リスク診断に加え、事業所が集中している地域において将来発生する可能性が高い大地震による被害を、より具体的に予測できるシステムを開発・実用化しました。
本システムは、東海・東南海・南海地震、東京湾北部地震、上町断層帯地震(大阪)など、将来発生する可能性が高い大地震による施設・装置などへの「直接被害額」、操業停止による「間接被害額」、サプライチェーンを構成する他の事業所の操業停止に伴う「波及被害額」を短時間で算出することができます。これにより、これまで難しいとされていたサプライチェーンのウィークポイントとなる拠点を把握し、耐震補強、在庫日数の増加、代替施設の確保など、地震被害を低減する様々な施策と被害額の費用対効果が検討できるようになり、事業継続計画策定にご活用いただけます。
今後は、サプライチェーンに対する地震リスク・コンサルティング活動を強化し、お客様の事業継続計画策定をより強力に支援していきます。
●システムの特長
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インデックス
地震被害額や改善すべき施設などを短時間で把握
今回開発したシステムは、事業所が集中している地域で発生する可能性が高い大地震による被害を短時間で診断します。内閣府で公表されている代表的な70の想定地震による揺れの分布を内蔵データとして備えています。
診断は、当社の担当技術者がパソコンに簡単なデータを入力するだけです。これにより、想定した大地震に対する地震被害額(直接被害、間接被害、波及被害)や、改善すべき施設などを把握することができます。
どの拠点施設に耐震補強をするべきか、あるいは在庫日数を増やすべきか、または代替生産拠点の確保を優先すべきかなど、事業継続計画を策定するにあたり、費用対効果を踏まえた多角的な検討が行えます。
■診断に必要なデータ
診断に必要なデータは、各拠点施設に関する基本的な建物・生産装置情報と供給部材などに関する情報(在庫日数、売上逓減率など)です。診断に必要な時間は、10施設で1時間程度です。
システムの適用(例)
診断結果は3項目で、(1)施設や生産装置などの地震による予想直接被害額、(2)操業停止に伴う予想間接被害額、(3)他の施設の操業停止に伴う予想波及被害額です。
以下は、東京湾北部地震に対する予測震度分布(内閣府公表)を用いた地震被害の予測例です。対象施設は5施設。部品供給の流れは「千葉部品工場」→「東京部品工場」→「埼玉事業所」→「東京事業所」→「神奈川事業所」の順で、各施設の「在庫日数」は3日と想定しています。
地震被害を低減する方法としては、影響度の大きい施設に対して耐震補強等の対策を施す方法と、在庫日数を増やす、あるいは別の場所に代替施設を設けるなどの方法があります。
予測例1
東京部品工場の被災により部品供給が途絶えるため、その下流に位置する埼玉事業所、東京事業所、神奈川事業で波及被害(グラフ■)が生じることが予想されます。
被害総額:108.3億円
予測例2:対策として在庫日数を増やす
地震被害を低減するために、各施設の在庫日数を3日から21日に増やした場合の結果を示しています。
在庫日数を増やすことにより、他施設の被災による波及被害がなくなります。
被害総額:78.0億円
予測例3:さらに耐震補強対策
直接被害や間接被害を低減するために、予測2に対してさらに東京事業所と神奈川事業所の耐震補強を行った場合を示しています。
直接被害と間接被害がさらに低減されます。
被害総額:60.3億円