2008.04.22

テクニカルニュース

防災・減災

サプライチェーンを丸ごと地震リスク診断

当社は、個別の製造拠点だけではなく、サプライチェーン全体の地震リスクが診断できるシステムを開発・実用化しました。

2007年の新潟県中越沖地震では、自社工場が被災しなくても、サプライチェーンの一つが被災し、事業そのものが中断してしまったケースが発生しました。これからは、サプライチェーンを含めたBCPを考える時代です。

本システムは、大地震が発生した場合に、取引先の工場まで含めたサプライチェーン全体がどのようなリスクを抱えているのか、また、ウィークポイントはどこにあるかなどを短時間で把握することができます。これにより、どの拠点の施設を耐震補強すべきか、あるいは代替生産拠点の確保を優先すべきかなど、費用対効果を踏まえた多角的な事業継続計画の検討が可能となりました。

当社は、本システムを活用し、自動車産業や超精密機械産業などに診断・コンサルティングを行うなど、お客様の事業継続計画策定をより強力に支援していきます。


上記の診断結果は、「サプライチェーン全体が事業中断する確率」「事業中断する確率に及ぼす各拠点施設の影響割合」「拠点施設別の許容できる中断期間を超える確率」を表したものです。詳しくは「システムの適用(例)」をご覧ください。

●システムのメリット

  • サプライチェーン全体が抱えるリスクやウィークポイントが短時間で把握できます。
  • 費用対効果を踏まえた多角的な事業継続計画の検討が可能です。


サプライチェーン全体の地震リスクを短時間で診断

今回開発したシステムは、部材調達から製品生産、物流・販売に至るサプライチェーン全体を対象に、地震リスクを短時間で診断するものです。

診断は、当社の技術者がパソコンに簡単なデータを入力するだけです。これにより、地震発生時に事業が中断する確率や改善すべき施設などが短時間で把握でき、サプライチェーンの事業継続計画に必要な判断材料を提供できます。

また、本システムは、確率論を応用し、わが国で発生し得る100万以上の地震・断層データに基づいて、対象地で予想される最大級の地震などを判定することができます。

■診断に必要なデータ

診断に必要なデータは2種類です。一つは、サプライチェーンを構成する各拠点施設に関する基本的な建物情報。二つ目は、各拠点施設の供給部材などに関する情報です。診断に必要な時間は、20施設で1時間程度です。



各拠点施設に関する基本的な建物情報と供給部材などに関する情報、在庫日数、許容中断日数などを入力。下は、サプライチェーンの並列箇所(代替生産可能な施設)を設定する画面イメージ。


システムの適用(例)

診断結果は3項目で、(1)サプライチェーン全体が評価期間内、例えば30年間で事業中断する確率。(2)サプライチェーンの中断に及ぼす各拠点施設の影響割合、(3)拠点施設それぞれが許容できる中断期間を超える確率です。

以下は、地震リスク診断の適用例です。この地震リスク診断は、わが国で発生し得る100万以上の地震・断層データに基づいて行っていますが、例えば、東南海・南海地震が連動する地震の場合は、岡山と大阪で同時に被害が生じ、復旧に要する日数は7日と評価されます。

このように、本システムは、サプライチェーンにおけるウィークポイントの把握に加え、耐震補強、代替施設の確保など各種対策の費用対効果について検討を行うこともできます。

A:各施設とも代替生産が行えない場合

  • 今後30年間において事業中断する確率71%と評価されています。

B:岡山と長野、大阪と福島でそれぞれ代替生産が可能な場合

  • 今後30年間において事業中断する確率は71%から35%に低減します。
  • 各施設の影響割合も東京以外は小さくなっており、代替生産による効果が出ています。

C:岡山と長野、大阪と福島、東京と栃木で代替生産が可能な場合

  • 今後30年間において事業中断する確率は35%から8%へ大きく低減します。
  • 各施設の影響割合もほぼ同等となります。