4月15日から5月14日は、「みどりの月間」です。今年もみどりの式典をはじめ、全国各地でさまざまな催しが行われます。
近年は、「緑と水のネットワーク」というコンセプトで、自治体を中心に新たな緑地・緑化整備の取り組みが進んでいます。また、今後は、国家戦略※としても生物多様性を確保する動きが加速すると言われています。
今回の特集では、都市部の自然環境を客観的に現状分析・評価できる新手法をはじめとする当社の最新の緑化技術についてご紹介します。
平成4年の地球サミットで採択された「生物多様性条約」に基づき、生物多様性の保全と持続可能な利用に関わる国の施策の目標と取り組み方向を定めたもの。平成19年に「第三次生物多様性国家戦略」を策定。
都市部の自然環境評価手法
都市部における大規模再開発では、自然環境への配慮が今後ますます重要となります。当社が開発した「都市エコロジカルネットワーク評価技術」は、街区や市区域のレベルで事業立地とその周辺の自然環境を客観的に現状分析・評価できる新しい手法です。
本手法は、対象地域の緑地分布や生物分布を独自の技術で定量分析し、その結果から生物多様性の観点で段階評価するものです。量的な緑地確保だけでなく、地域の生態系に配慮した緑化計画を策定することができます。
当社では、都市部の大規模再開発や、キャンパス、工場の敷地計画、公的な緑地整備などを対象に本手法を活用したコンサルティングを行います。
●特長
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■分析・評価の方法
- ステップ1 緑の分布分析
緑のネットワーク分析では、衛星写真や航空写真を独自の画像処理プログラムで解析し、街路樹や住宅地の植栽を含めた緑の「連続性」「多様性」「まとまり具合」「隣接具合」を計測し、地図上で数値化します。
- ステップ2 生物分布予測と多様性評価
また、フィールド調査による生物分布情報をもとに、多様性の目安となるチョウ類または鳥類の分布を把握し、独自の予測モデルを用いて統計的に生物分布を推計します。生物の多様性については、そのレベルをランク付けしてGIS(地図情報システム)マップとして出力し、事業計画図との重ね合わせることができます。
屋上ビオトープ緑化システム「ふらっとビオトープ」
屋上ビオトープ緑化システム「ふらっとビオトープ」は、薄層・軽量で、優れた貯水機能を持つ植栽ユニットを既存建物の屋上に敷き並べることで、里山を彷彿させる本格的なビオトープを補強工事なしで簡単に実現することができます。面積は小規模なものでは数m2から数百m2まで設置可能です。
樹木や草花の種類は、誘致したい生き物などお客様のニーズや周辺環境を踏まえて選定。食餌植物や水辺などを設置することで多様な生き物の飛来が期待できます。ヒートアイランド現象の緩和に加え、施設利用者にとっては癒し・憩いの場を提供でき、また、多様な動植物の生息環境になるなど、様々な効果があります。
なお、本システムをはじめ、当社技術研究所の本館屋上に適用したさまざまな屋上緑化技術は、都市緑化技術開発機構主催の「第6回屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール」で理事長賞を受賞※しました。
都市緑化技術開発機構理事長賞 屋上緑化部門「清水建設技術研究所本館屋上緑化施設群“屋上緑化ア・ラ・カルト”」
■雨水利用で水やりを大幅に軽減
植栽ユニットは、貯水機能を備えた40cm四方の特殊成型パネルで、上部の植栽コンテナと下部の貯水コンテナの二層構造となっています。
貯水コンテナには、雨水などを60リットル/m2蓄えることができ、毛細管現象により吸水体を通じて上部コンテナの土壌に潅水します。雨水を有効利用できるため、水やりは夏場以外ほとんど必要ありません。
■システム導入事例
本システムは、現在、都内の高齢者福祉施設や事務所ビルの屋上に導入されており、野生の昆虫や小動物など、利用者が自然とふれあう憩いの場を提供しています。
都市型ビオトープ「再生の杜」
「再生の杜」は、当社技術研究所にある都市部では最大級規模の都市型ビオトープ(広さ約2,000m2)です。ここでは、自然生態系再生、資源再生、生活環境再生という3つの「再生」をテーマに、さまざまな実証実験を行っています。
2年が経過した現在は、植物種数は出現植物により竣工時植栽種数の1.7倍に当たる約350種に増加し、ミズアオイやタヌキマメなどといった絶滅危惧種や希少種も出現しました。飛来昆虫は200種を超え、うちトンボは17種も飛来しています。
鳥類は、アオサギ、コサギ、ゴイサギ、ダイサギなどの大型水鳥を含む21種類が飛来、昨年は浮島にカルガモが産卵して11羽の雛がここで生まれ、巣立っていきました。今年もカルガモが卵を産んで、温めています。さまざまな鳥や昆虫の飛来が期待され、動物に認知された生息空間、採餌場所、あるいは移動中継点として、地域の生物多様性の保全に寄与する施設として定着しつつあります。