将来いつ起きてもおかしくない大地震に対して、より具体的にどの地震にどう備えるべきかを考える時代となりつつあります。
一方、半導体や液晶など精密機器の製造工程は超精密環境施設として、大変厳しいレベルの微振動対策が求められています。また、オフィスや住宅でも、交通振動などが問題となっています。
今回の特集では、世界最高水準を誇る「強震動予測技術」と「微振動測定評価技術」についてご紹介します。
世界最高水準を誇る「強震動予測システム」
強震動予測システムは、阪神・淡路大震災で大きな被害をもたらした大きな破壊力を持つ地震動「キラーパルス※」を再現するなど、精度の高い予測ができるため、政府の地震調査研究推進本部により、全国27断層の強震動評価に採用されました。また、その実績が評価され、原子力安全委員会により、原子力施設の安全審査にも採用が義務付けられました。
現在100件を超える建物について、強震動の地震の影響を評価した実績があり、今後も超高層ビルや大型タンク、あるいは橋梁などの土木施設の耐震安全性評価や、災害発生時に早期復旧が必要な防災関連公共施設、病院、生産工場などの耐震機能性評価に活用していきます。
キラーパルス:周期一秒前後の大振幅地震波(1秒間に100cm以上揺らす)です。これは、多くの建物に対する破壊力が極めて大きく、阪神・淡路大震災や能登半島地震、新潟県中越沖地震で観測されました。
強震動予測システムの採用事例:糸魚川-静岡構造線(北部、中部)の地震を予測
(政府の地震調査研究推進本部 公表資料より)
■システムの概要
本システムは、断層がどのように壊れて、揺れが伝わるか震源の構造を単純な力学モデルであらわして、時々刻々、地盤の揺れが伝わっていく様子を解析することで地震動を計算します。過去に発生した地震を再現したり、将来起こるとされている地震について精度高く予測することができます。
■阪神・淡路大震災を再現し、システムの有効性を検証
阪神・淡路大震災では、海岸線に沿って帯状に連なる震度7の領域「震災の帯」において大きな破壊力を持つ地震動「キラーパルス」が発生し、さまざまな種類の建物に壊滅的な被害を与えました。
地震記録を分析した結果、断層で強く固着している「アスペリティ」と呼ばれる領域にひずみが蓄積され、強い破壊が連続して生じる際に、キラーパルスが発生していることが判明しました。一見複雑に見える震源の構造を単純な力学モデル(アスペリティモデル)に置き換えることができました。
この予測手法により本システムは、阪神・淡路大震災のキラーパルスを再現し、システムの有効性を検証しています。
■開発者からの一言
本システムの元となった「アスペリティモデルの力学特性に基づく広帯域強震動の再現と予測に関する研究」は、建築の分野ではまだ十分に普及していない強震動地震学の基本モデルに関するものです。
予測の際に必要となる種々のパラメーターの設定に関して、新しい概念を導入し、物理的かつ簡便な一つの統一的手法にまとめ、それを多くの事例に適用して、妥当性を検証しました。
研究成果は、政府の地震調査研究推進本部による強震動評価、超高層建築物や原子力施設の耐震設計などに適用されており、その社会的貢献度・実用的価値が高く評価されたため、「2007年日本建築学会賞(論文)」(主催:日本建築学会)を受賞しました。
携帯型装置で迅速かつ的確な微振動対策を実現
「微振動測定評価システム」
微振動測定評価システムは、超高精密機器の製造施設における微振動対策はもちろん、鉄道や道路などからの交通振動、オフィスや住宅の床振動、歴史的建造物やジェットコースターなど複雑な構造架構の耐震性能評価など、さまざまな振動問題に対応します。
■システムの概要
コンパクトな携帯型振動測定装置により、測定結果をその場で評価指標と比較表示し、微振動対策の性能を即時検証することができます。
また、振動波形解析評価プログラムを搭載しており、建物の外部や内部の振動を分析し、的確な振動評価を行います。評価結果は、パソコン画面に図として表示され、その場でPDFファイルとして出力することができます。