2005.08.31

テクニカルニュース

防災・減災

驚異的性能を誇る制震ダンパー 設置台数を6割削減!

当社は、制震性能を飛躍的に高めた壁型制震ダンパーを、東海ゴム工業(株)と共同で開発・実用化しました。

本制震ダンパーに用いられる粘弾性ゴムは、従来の壁型粘弾性ダンパーに用いられる材料の約5倍の制震性能を有しています。これにより、制震ダンパーの設置台数を最大6割削減でき、制震ダンパー自体のコストや施工の手間を減らすことで、制震ダンパーにかかるコストを最大4割低減できます。

また、大地震だけでなく中小地震や、台風などの強風による小さな揺れも吸収することができ、居住性にも優れています。

本制震ダンパーは、当社JVが施工する超高層の複合施設(市川駅南口地区第一種市街地再開発事業A街区)への採用が決定しています。

免震、制震、耐震の違いは、こちらをご覧ください。

●特長とメリット

  • 制震性能が極めて高く、従来の制震ダンパーと比較して、設置台数を最大6割削減できます。
  • 制震ダンパー自体のコストや施工の手間を減らし、制震ダンパーにかかるコストを最大4割低減できます。
  • 温度変化に強い粘弾性ゴムを使っているため、温度変化の影響を受けにくく安定した制震性能を得ることができます。

高性能粘弾性ゴムを用いた壁型制震ダンパー

本制震ダンパーは、壁型と粘弾性ゴムの長所を生かしつつ、素材や形状及び設置方法を検討し、制震性能が飛躍的に高く、気温の変化にも強い壁型制震ダンパーを開発しました。

動的加力実験で制震ダンパーの耐震性能を確認

■高性能制震ダンパーのしくみ

本制震ダンパーは、2枚の側鋼板と1枚の中鋼板の間に高性能粘弾性ゴムを挟み込み、側鋼板を上(または下)の梁に、中鋼板を下(または上)の梁にボルトで固定する構造です。

建物が揺れると、その揺れが鋼板を介して粘弾性ゴムへ伝わり、ゴムが変形することで振動エネルギーを吸収して建物の揺れを低減します。

新型制震ダンパーの構造


■温度変化にも強い高性能粘弾性ゴム

従来の粘弾性ゴムを用いた制震ダンパーは、気温が高くなると制震性能が低下しますが、本制震ダンパーでは、温度変化に強い粘弾性ゴムを採用しているため、温度変動の影響を受けにくく、安定した制震性能を得ることができます。

■開口部をふさぐ面積を最小化

本制震ダンパーの大きさは、同等性能の従来の壁型制震ダンパーの1/2以下となり、開口部を塞ぐ面積を小さくすることで、室内空間の有効利用が図れます。


従来の壁型ダンパー(2.4m × 2.9m)との大きさ比較
赤い点線内が同等性能の新型ダンパー)


制震ダンパーの設置台数を大幅削減

本制震ダンパーは、極めて高性能なため、設置台数を従来のダンパーに比較して最大6割削減することができます。その結果、コストを最大4割削減できます。

従来型壁型制震ダンパーの場合


建物平面図

本制震ダンパーの場合


建物平面図


建物立面図


建物立面図


超高層の複合施設に適用

「市川駅南口地区第一種市街地再開発事業(A街区)」では、本制震ダンパーを約140台設置する予定です。

■市川駅南口地区第一種市街地再開発事業(A街区)の概要

再開発施行者 千葉県市川市
発注者 三井不動産株式会社・野村不動産株式会社・清水建設株式会社
設計者 株式会社日建設計
施工者 清水・戸田・五洋・上條・京葉都市開発建設工事共同企業体
構造および規模 鉄筋コンクリート造
地下2階地上45階
延べ床面積 約8万6500m2
建物用途 商業、業務、住宅

■開発者からの一言


技術研究所
寺田主任研究員

最近、我が国のみならず大きな地震がたて続けに発生し、少なからずの被害が出ております。新築だけでなく既存建物も含め、建物の耐震性をあげることは社会的な大きな課題であると思います。本制震ダンパーは建物の耐震性向上に寄与することができるものであり、今後広く使われていくよう祈っております。

今後ともニーズを的確につかみ、社会が必要とされているものをタイムリーに開発していきたいと考えております。