22004.07.20

テクニカルニュース

環境

高濃度の汚染土壌を低コスト・短工期で集中浄化

当社は、揮発性有機化合物(VOC)や油による高濃度の汚染土壌について、短工期・低コストで浄化する技術をオランダの土壌浄化の専門会社(インシチュー テクニーケン社)から導入しました。今回導入した浄化技術は、稼働中の工場や建物がある場合にも容易に適用でき、使用した薬液が水と酸素に分解されるため危険性もありません。また、当社が保有する生物処理技術と組合せることで、高濃度から低濃度まで幅広いニーズに対応可能となりました。

以前ご紹介しました「バイオスクリーン」や川崎の土壌洗浄プラントをはじめ、当社は土壌汚染浄化に関するさまざまな技術、施設を保有しています。今回導入しました「フェントン法を活用した原位置化学的酸化法」により、土壌浄化技術のバリエーションはさらに広がりました。汚染物質の特徴、拡散状態にあわせて最適な処理方法をご提供いたします。


■高濃度汚染土壌を低コスト・短工期で浄化

揮発性有機化合物や油の高濃度汚染対策としては、一般に地下水をくみ上げて浄化する「揚水曝気処理」や「掘削処理」が適用されています。しかし、「揚水曝気処理」は長期間の対応が必要であり、「掘削処理」は掘削・外部処理などの費用がかかるためコストが高くなります。このため、高濃度汚染に対して低コスト・短工期で浄化できる技術の開発ニーズが高まっていました。

「フェントン法を活用した原位置化学的酸化法」は、高濃度の揮発性有機化合物や油による汚染土壌を掘削せずにその場で化学反応を利用して、効率よく浄化する技術です。

今回導入した技術は、汚染された土壌に2種類の薬液(過酸化水素水と鉄イオン)を注入し、その化学反応により汚染物質を直接分解するものです。高濃度の汚染でも、短工期・低コストでの浄化が可能で、薬液の反応後は水と酸素に分解するため危険性もありません。

■浄化イメージ


生物処理技術と組み合わせることで様々な濃度の汚染浄化に適用することができます。

■特徴とメリット

  • 掘削・運搬などが不要なため、掘削処理と比較して浄化コストは1/2~1/4程度に削減できます。(対象土量により異なります)
  • 地下水をくみ上げて浄化したり、掘削の手間もなく、その場で汚染物質を直接分解するため、短期間(約2~3ヶ月)で浄化できます。(規模や汚染濃度により異なります)
  • 汚染土壌に注入配管を設置する簡単なシステムなため、稼動中の工場にも適用できます。
  • 使用した薬液は、反応後に水と酸素に分解するため危険性はありません。
  • 汚染状況や事前室内試験により、薬液の濃度・注入量・配管の数や配置など適切な浄化計画を立案し、汚染が拡散することなく、確実に浄化できます。

■シンプルな浄化システムで汚染源を確実に処理

浄化装置は、注入ポンプと薬液用タンクおよび注入管理システムから構成されており、汚染土壌には特殊注入配管を構築するだけです。そのため、稼動中の工場内あるいは建物の下などでも容易に適用できます。

また、当技術を適用する際には、事前に実際の土壌を使った室内試験を行い、浄化効果を予測するとともに、処理速度や薬液の使用量など計画に必要なデータを収集します。浄化中は地下水のモニタリングによって汚染物質の濃度を把握し、適切に処理します。汚染が拡散することなく確実に汚染源を処理することができます。


浄化までのフロー


浄化装置の一例


■フェントン法とは?

フェントン法は、「過酸化水素水」と「鉄イオン」の化学反応を利用して汚染物質を直接分解する手法です。古くから廃液処理や脱色処理などに利用されています。

フェントン法を土壌浄化に適用するには、化学反応の適正管理など、さまざまなノウハウが必要です。

インシチュー テクニーケン社は、欧州で唯一「フェントン法を活用した原位置化学的酸化法」を実用化したオランダの土壌浄化専門の会社です。


フェントン法の原理