2003.12.08

テクニカルニュース

環境

「風」でお悩みでしたら、ぜひご相談ください!~皆様のビジネスに役立つシミュレーションをご紹介します~

 当社は、お客様の技術的な問題を解決するために、さまざまなシミュレーション技術や実験施設をご用意しています。中でも今回の特集では、「風」の問題解決に役立つシミュレーション技術をご紹介します。

 複雑な動きをする「風」は、お客様の建物やその周辺環境にさまざまな影響を与えます。例えば、ビル風による周辺への影響や超高層ビルの風に対する安全性、また、ビル外部の悪臭・排煙ガスの拡散など…。こうした風による影響を最小限に抑えるためには、「風」の動きを正確に捉え、適切に対応する必要があります。

高層ビル周辺の気流の数値解析(例)
高層ビル周辺の気流の数値解析(例)

 当社の風シミュレーション技術は、建物に関する風のトラブルの解決はもちろん、多くの高層ビル建設の実績に基づいたコンサルティングや、快適な周辺風環境を実現するソリューションをご提供します。

■風シミュレーション技術

風環境予測・評価システム

風応答解析システム

ガス濃度大気拡散予測システム

ビル風による周辺環境への影響を把握「風環境予測・評価システム」

 風の性状を的確に捉え、ビル風のメカニズムを解明する総合的なシミュレーション技術です。当社が保有する風洞装置にて建設地の周辺状況を再現し、高精度の数値解析により風環境の影響の予測から評価まで対応できます。

■特徴

  • ビル周辺の複雑な風環境を評価・予測します。
  • 当社が保有する風に関するノウハウや実験・解析手法を活用し、風洞実験、数値解析において最高レベルの予測が可能です。
  • 3次元グラフィックスで解析結果をわかりやすく表示します。

■シミュレーション例

▼建物の風下にできる「渦」実験の例
建物の風下にできる「渦」実験の例
▼数値解析による風環境の影響評価

シミュレーションにより、地上2m(人間の大きさ)ではそれほど強くない風が、地上7m(2階建ての屋根付近)では周辺に大きな影響を与えることが読みとれます。この例では、植栽により図中右下のエリアへの風の影響を軽減させています。

数値解析による風環境の影響評価(地上2m)
地上2m

数値解析による風環境の影響評価(地上7m)
地上7m

スケール(風速比)


風によるビルの安全性・居住性を検証「風応答解析システム」

 超高層建物や展示場、ドームなど大空間を持つ建物では、風による建物の揺れや外装材の耐風性などの評価が重要になります。特に高層マンションなど建物の高層化に伴い、高い居住性を確保するために風応答解析は欠かせない技術となっています。

 このシステムは、建物全体はもとより、部材レベルでの風応答解析を行うことにより、建物の安全性・居住性を検証することができます。建物の耐風設計を検証する際、想定される風外力を入力するだけで、強風時における建物の変形や力を外装材レベルでの評価を含め精度高く解析・予測でき、超高層建物や大空間を有する建物の耐風設計に威力を発揮します。

■特徴

  • 外壁部分のガラスや屋根葺き材などの風荷重評価ができます。
  • 風応答評価により、風揺れによる居住性を評価・検討・向上できます。

■シミュレーション例

▼高層ビルの外壁材の風荷重評価

以下のようなシミュレーションにより得られたデータを元に、ガラスの種類や厚みなどを決定することで、風の影響を受けにくい建物を実現することができます。

高層ビルの外壁材の風荷重評価(2秒後)
2秒後:風を受けるA面が押され、B面が引っ張られ始める

高層ビルの外壁材の風荷重評価(3秒後)
3秒後:A面を押す力が増すとともに、B面を引っ張る力が増す

   

高層ビルの外壁材の風荷重評価(5秒後)
5秒後:C面が引っ張られ始める

高層ビルの外壁材の風荷重評価(6秒後)
6秒後:B面を引っ張る力が減り、C面を引っ張る力が増す


ガス濃度の拡散を高精度に予測「ガス濃度大気拡散予測システム」

 風洞施設にて高応答のガス分析計を用いて、瞬間的なガス濃度の変動を予測します。これにより、従来評価が難しかったごく短時間に変動する臭気性ガスや種々の有害性ガスのピーク濃度を把握できます。

 各種工場や研究施設、畜産施設、ゴミ処理施設、ホテル・飲食施設等の新設時で、ガス拡散に不安をお持ちの場合、正確にガスの拡散現象をシミュレーションし、対応策をご提案します。


工場から排出される有害物質および悪臭
ガスの周辺大気環境へ及ぼす影響の検討


ビル近くの駐車場の車からの
排気ガスによる周辺への影響の検討

■特徴

  • 風洞装置を用いたトレーサガス*拡散実験により正確に予測します。
  • 高応答のガス濃度分析計を用いたシミュレーションを行います。
  • 瞬間ガス濃度を含む種々のガスの拡散現象を正確に予測します。
  • シミュレーションの信頼性は野外観測での再現により実証済みです。

*トレーサガス:エタンなど通常は空気中に存在しないガスを使用します

■シミュレーション例

▼煙突から排出された煙の拡散状況

この予測手法により空調のための吸気口の位置や、適切な煙突の高さ等を検討することができます。

煙突から排出された煙の拡散状況
建物に当たる風の流れ

風洞実験によるガス濃度予測(例)

風洞実験によるガス濃度予測(例) ビルの屋上から排出されたガスが、渦に巻き込まれ、
ビル風下側に移流している状況がわかります。

■実績・実例

  • 半導体工場の屋上煙突から排出された有害物質の外気空調取入れ口に対する影響予測と対策
  • 大型スーパーの非常用発電機から排出された高温ガスの歩行者への安全性検討
  • 研究所の貯蔵化学物質の事故時における広域大気拡散場への影響予測
  • 病院の地下駐車場の排気筒から排出される自動車排出ガスの近隣住宅への影響予測
  • 工場の煙突から排出される臭気性ガスの風下住宅への影響予測

風洞実験施設

 充実した設備とデータ処理システムにより、構造物の安全性と快適な居住環境の創出ための実験・試験を行います。実際に模型を使って建設地の周辺状況を再現し、高精度な風環境の予測をする場合に最適です。

▼風洞実験棟の見取図

風洞実験棟の見取図

■特徴

  • 風の流れの可視化
    風の流れを三次元グラフィックスでリアルタイムに映像化できます。
  • 建物周辺の排気拡散予測
    従来把握できなかった臭気性ガスを含む、種々のガス濃度の予測ができます。
  • 外装材風荷重の評価
    風圧は512カ所、風速、風向は120カ所で測定可能です。
  • 建物周辺の風環境アセスメント
    多種多様な評価と予測により、総合的な風環境予測ができます。
  • 構造骨組みの風荷重評価
    ミニチュアモデルを構築し、そこに風を流し込むことで、建物の設計支援や風対策に必要な実験を行うことができます。

■仕様

▼風洞
型 式 回流型密閉式
測定胴寸法 幅2.6m×高さ2.1~2.4m×長さ18.9m
風速範囲 0.1~30m/s
最大風量 187m3/s
▼計測器

流速計測器、圧力計測器、荷重計、可視化装置、流体解析シミュレーター、三次元グラフィック装置