当社は、屋内版GPS「IMES※1」を、施設案内や緊急時の避難誘導など、屋内での歩行者ナビゲーションに活用するシステムの開発に着手、このたび基盤技術開発のための実証実験を開始しました。
屋外での歩行者ナビゲーションシステムは、スマートフォンなどによるGPS信号の受信処理技術の進歩により、近年、急速に普及しています。しかし、屋内でのナビゲーションは、衛星からのGPS信号を受信できないこと、屋内の「地図」が整備されていないことなどから、普及が進んでいません。
本実証実験では、当社 技術研究所本館と多目的実験棟にIMES送信機を設置※2するとともに、空間データベースやサービス基盤となるソフトウェアなど、屋内での歩行者ナビゲーションシステムに必要とされるさまざまな基盤技術を開発・検証します。また、2020年に予定されている東京オリンピック・パラリンピックでの活用も視野に、屋内・外を自動的に切り換えるナビゲーションシステムを目指します。
Indoor MEssaging System。JAXA(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)が考案した屋内測位技術の一つ。GPSと同じ形式の信号を用いて、送信機の位置情報を発信する
JAXAが所管するIMES送信機の常設設置登録第一号
インデックス
実証実験の概要
屋内での歩行者ナビゲーションシステムに必要とされる基盤技術には、設置位置の緯度・経度・階数情報を発信する「IMES送信機」、屋内地図(GPS対応の地図に相当)を作成する「空間データベース」、屋内位置情報を利用したサービスを提供する基盤となるソフトウェアがあります。
なお、現在、IMES送信機の電波を受信できるスマートフォンはごく一部の機種に限られており、システムの普及にはまだ時間を必要としますが、当社は実証実験を通じてシステム機能の充実を図っていきます。
■IMES送信機
IMES送信機は、各階のエレベータホールや動線交差部など、多くの利用者が通る場所の天井面に設置します。
利用者は、IMES送信機が発信する屋内位置情報をスマートフォンなどで受信し、画面に表示される屋内地図上で現在位置を確認することができます。
■空間データベース
CADやBIMで作成した建物の平面図データに、廊下や階段、段差、スロープ、手すり、事務室、トイレなどの情報や、平面座標と経度・緯度情報の変換機能、移動経路の検出に必要な空間同士の関連付け機能などを付加したものです。こうした情報や機能をベースに作成した屋内地図をスマートフォンなどに提供します。
なお、当社は、シームレスなナビゲーション実現のために、国土交通省が整備した歩行空間ネットワークデータの作成仕様に準拠しています。
■サービス基盤
利用者の端末が受信する屋内位置情報と空間データベースを連携させることで、様々なサービスを提供します。
例えば、ショッピングモールのような巨大施設では、来場者を目的の場所に誘導することはもちろん、車いす利用者や歩行困難者に段差や階段のない経路を提示することができます。また非常時には、利用者それぞれの位置や状況に応じた避難経路を提示することも可能です。