2014.07.31

テクニカルニュース

施設価値向上

厚さ5mm弱の免震装置で手術室の揺れを大幅に低減

当社は、高い免震効果を発揮するローコスト・短工期の手術室向け床免震システム「シミズ安震フロア」を開発しました。

国内にある医療施設(約27,000棟)のうち、施設全体が免震構造となっているのはわずか1.2%といわれています。施設全体の免震化はコスト負担が大きい上、長い工期を必要とするため、近年は手術室など施設の一部について部分的な免震改修を検討されるケースが増えています。

本システムは、薄い鋼板2枚を重ねただけのシンプルな構造の床免震システムで、地震時には上部の鋼板がスライドすることで高い免震効果を発揮します。装置の厚さはわずか5mm弱であり、改修・新築を問わず適用可能です。また、一般の床免震と比べ、コストは1/2~2/3程度、工期は半分程度です。

新日鐵住金(株)との共同開発


シンプルな構造で高い免震効果を発揮

シミズ安震フロアは、手術室の床上に固定する「フロアプレート」、フロアプレートの上に重ねる「免震プレート」、免震プレートと手術室の壁をつなぐ複数の「復元ばね」から構成されます。

フロアプレートと免震プレートはいずれも耐食性の高い亜鉛めっき鋼板製で、フロアプレート表面のエンボス(凹凸)加工によりプレート同士の接触面積を小さくしていることに加え、接触面に特殊な潤滑処理を施すことで滑りをよくし、免震効果を高めています。

また、装置の厚みはわずか5mm弱(フロアプレート:1.6mm+免震プレート:3.2mm)であり、新築はもちろん、既存の床上にそのまま設置することが可能です。 非常にシンプルな構造のため、一般的な床免震と比較してローコスト(1/2~2/3)で、工期も手術室1室(75m2)あたり10日間程度です。


平面図


システム断面


システムの適用イメージ:復元ばねを壁面の設備スペース内に設置するため、復元ばねと免震プレートを結ぶワイヤーは室内には出ない

■地震時の動き

地震時にはフロアプレートの上を免震プレートが滑ることで免震効果を発揮し、地震の収束時には復元ばねの働きにより免震プレートが元の位置に戻る仕組みとなっています。

手術室の壁と免震プレートとの間には400mm程度のクリアランスが必要となりますが、壁固定の器材棚等を設けてクリアランス部分の上側を覆うことで、手術室の空間を無駄なく使用することもできます。


振動実験により効果を確認

本システムについては、当社技術研究所における振動実験により、震度6強や震度7クラスの揺れでも免震効果が高いこと、地震後の残留変位もほとんど生じないことを確認しています。

大型振動台により、震度6強の揺れを再現した性能検証実験の様子
免震化した手術室(右)では免震プレートがゆっくり移動するだけで手術台の移動・転倒は発生しなかったが、非免震の手術室(左)では手術台が激しく動き、転倒寸前の状態となった。

■どんな大きな地震動でも加速度を200ガル程度に低減し、手術台等の転倒を防止

一般に震度6強~7クラスの揺れでは、手術台等に重力加速度相当(980ガル)の水平力がかかり、転倒・移動の危険性があります。本システムでは、フロアプレートと免震プレートの間の摩擦係数が0.1~0.2で滑りがよく免震効果が高いため、免震プレート上に設置した手術台には、重力加速度の20%程度(約200ガル)しか作用せず、安全性が向上します。


大地震で発生する1,000ガルを超える加速度を200ガル程度に低減


家具の転倒曲線:加速度が200ガル程度の場合、ほとんどの家具は転倒しない
(1978年宮城沖地震の被害データおよび実験データを元に当社が作成)