2014.07.02

テクニカルニュース

施設価値向上

国内初! 非常用エレベーターで火災避難

当社は、国内で初めて、高層病棟における火災時の避難誘導に非常用エレベーターを使用する「高層病棟避難安全システム」を開発・実用化しました。

火災時の避難は、建物の規模・用途にかかわらず階段使用が原則ですが、病院の場合は、自力で避難できない患者も多く、階段による避難は時間と人手を要するため難しいのが現状です。また、都心部に位置する大規模病院では、機能の集約と土地の高度利用を図るために病棟を高層化する傾向にあり、これまで以上に火災時の避難誘導が課題となっています。

高層病棟避難安全システムは、当社が開発した「火災フェイズ管理型防災システム」を中心に、複数の避難安全対策を高層病棟用に統合したもので、火災の検知から対策設備起動までの初期対応をすべて自動化します。本システムでは火災発生時に防火設備を起動する必要がなく、病院スタッフは入院患者の避難誘導に専念することができます。

順天堂、早稲田大学との共同研究


複数の避難安全対策を高層病棟用に統合した「高層病棟避難安全システム」


システムの概要

本システムは、フロアを複数のブロックに分割して火災の拡大を防ぐ「水平防火区画」、患者を煙から守る「加圧防排煙設備」、火災を早期に検知し、自動で防火区画の閉鎖や防排煙設備の起動を行う「火災フェイズ管理型防災システム」から構成されます。

火災発生時には、火災フェイズ管理型防災システムが火災を感知・確定するとともに、防火区画の扉を閉鎖して、フロアを出火区画と非出火区画に分割します。続いて加圧防排煙設備を起動し、出火区画側の煙を排出(排煙)すると同時に、非出火区画側の廊下に新鮮な空気を供給・加圧して煙の侵入を防止し、安全な一時避難エリアをつくります。


システムの構成(平面)

■一時避難エリアへの水平避難に加え、非常用エレベーターによる垂直避難が可能

本システムは火災の感知・確定から対策設備起動までの初期対応をすべて自動化しているため、火災発生時に防火設備の起動等を行う必要がなく、病院スタッフはいち早く入院患者を一時避難エリアへ水平避難させたり、非出火区画側の非常用エレベーターを介して地上階や緊急治療が可能な階へ垂直避難させることができます。また、消防隊は出火区画側の非常用エレベーターを使って火災発生階に向かうことが可能です。

防火扉の自動閉鎖状況(廊下)
防火扉は、バリアフリーとなっており、車いすはもちろん、ストレッチャーや担架でも通過しやすいように工夫されている

適用事例:順天堂医院B棟高層棟

本システムを適用した順天堂医院B棟高層棟は、各フロア1,360m2で、21室・42病床を設けています。火災発生時には、出火区画側で32,000m3/hを排煙しつつ、非出火区画側の廊下に18,000m3/hを給気することで、非出火区画の約175m2を火煙の影響の少ない一時避難エリアにします。

なお、B棟高層棟における非常用エレベーターの火災時避難誘導使用は、東京消防庁が昨年10月に制定した新指導基準「高層建築物における歩行困難者等に係る避難安全対策」に基づく適用の第一号です。

■避難シミュレーション

設計にあたっては、当社独自の避難シミュレーションにより、歩行困難な患者に対するスタッフの介助等、運用実態に即した検証を行い、一時避難エリアに安全に避難できることを確認しています。

シミュレーション例(12倍速):火災発生から11分で一時避難できることを確認

■工事概要

工事名称 順天堂大学キャンパス・ホスピタル再編事業
B棟建設工事
所 在 地 文京区本郷2丁目201-1,-2,-3,-16,-17,-18
発   注 学校法人順天堂
設計施工 清水建設
規  模 建築面積2,786m2
延床面積45,089m2
地下3階、地上21階(高さ99.72m)
工  期 (第 I 期)平成24年2月~平成25年12月