当社は、コンクリートの乾燥収縮がほぼゼロになる業界初の超低収縮コンクリート「ゼロシュリンク」の製造技術を確立しました。
コンクリートには硬化後に乾燥収縮する性質があり、それが原因でひび割れが発生したり、構造物の美観を損ねたり、漏水を起こす場合もあります。また、持続可能な社会の構築に向けて、コンクリートの長寿命化が求められていることから、ひび割れによる鉄筋の腐食を防止し、耐久性を向上させることは、重要な課題です。
「ゼロシュリンク」は、厳選した構成材料と配合の最適化により、乾燥収縮を極力防止した上で、わずかに生じる収縮を膨張材による初期膨張効果により事前相殺し、収縮をネットゼロとする超低収縮コンクリートです。実用化の初弾として、当社技術研究所の新実験棟に適用しました。
今後は、美術館をはじめとする美観を重視した打放しコンクリートを採用する文化施設や、ひび割れに伴う漏水リスクを回避すべき貯水構造物および遮蔽施設、目地がない床スラブを必要とする生産施設などを中心に、「ゼロシュリンク」をご提案していきます。
インデックス
ゼロシュリンクの概要
「ゼロシュリンク」の基本的な考え方は、乾燥収縮を極力防止した上で、わずかに生じる収縮を膨張材による初期膨張効果によって相殺し、収縮をほぼゼロにするということです。
■材料同士の相性を踏まえ、最適な材料と配合方法を究明
乾燥収縮の防止に関しては、これまでに蓄積してきた知見に基づく理論的検討と実験の繰り返しにより、材齢182日で、乾燥収縮量を通常のコンクリートの1/8である、わずか0.1mm/m(乾燥収縮率:100μ)に低減することができました。
セメントには比較的収縮量が少なく、初期の温度収縮も低減できる中庸熱ポルトランドセメントを、また骨材には吸水率が低く、ほとんど収縮しない石灰岩を採用しました。さらに、セメントの収縮を一層防止するために、保水効果のある収縮低減剤を採用しました。
収縮力を相殺するための膨張材については、膨張量の制御だけではなく、実構造物での膨張コンクリートの挙動を把握することや独自の手法で膨張効果を予測し、配合量を決定しました。
■(参考)コンクリートのひび割れ
コンクリートには、圧縮強度は高いものの、引張強度は極めて小さいという特徴があります。通常のコンクリートの乾燥収縮量は0.6〜1.0mm/mにもなりますが、伸び能力は0.1〜0.2mm/m程度しかありません。このため、コンクリートが収縮する際に、柱や鉄筋等によって拘束されることにより、収縮量が伸び能力を上回るとひび割れ(クラック)が発生します。一方、拘束された状況で膨張した場合には、初期に圧縮応力が生じ、収縮によるひび割れの発生を緩和します。
■開発者の一言
コンクリートの(乾燥)収縮によるひび割れは永遠の課題と言われています。その永遠の課題の解決に果敢に取り組んだ末に完成した技術が「ゼロシュリンク」コンクリートです。ゼロシュリンクは、乾燥による収縮を極めて小さくさせ、予め膨張させることによって、事実上「乾燥収縮ゼロ」を実現させたコンクリートです。
ゼロシュリンクの実現には、コンクリートに使用される様々な材料を最適に選定し、施工できる状態にまで調合を洗練する必要がありました。完成に至るまでには、これまでに検討されてきた先輩方の知恵や技術、そして同僚達の努力なくしては実現できなかったと強く感じています。
他社にはない、圧倒的なグレードのコンクリートをお客様に提供する技術力をコンクリートの乾燥収縮だけではなく、全ての性能に波及させるように今後も研究開発に邁進したいと考えています。