当社は、生産施設の小型タンクや架台など、小規模構造物の液状化被害を低コストで防止できる画期的な対策工法を開発しました。
東日本大震災では、生産施設や病院などの建物本体に被害がなくても、液状化で小型タンクや架台、倉庫が大きく傾いたり、構内道路や駐車場が多量の土砂噴出や不同沈下で継続使用できない事例が見受けられました。これまで小規模構造物は、コスト等の問題から十分な液状化対策が行われていませんでしたが、事業継続性を確保するためにも、今後は敷地全体の対策を検討する必要があります。
本工法は、地盤表層のごく一部を簡易改良することで液状化による地盤の変形を抑制し、小規模構造物の液状化被害を防止するものです。新築はもちろん、改修にも対応可能であり、液状化する地盤の深さにかかわらず対策効果を発揮します。また、液状化層全体を改良せずに済むため、対策コストを大幅に低減することができます。
近い将来に発生が予測されている東海・東南海・南海の三連動地震では、継続時間が非常に長い揺れが発生する可能性があり、広い範囲で液状化が生じると考えられます。当社は、液状化による被害を防止するため、生産施設などを中心に本工法をご提案していきます。
簡易な対策で液状化の被害を大幅に軽減
本工法は、簡易な対策で基礎近傍地盤の地下水圧の上昇を抑止することで、小規模構造物の周辺地盤に限定して液状化による地盤変形を抑制し、被害を防止します。液状化そのものの防止効果は範囲が限られるため、地盤の深い部分の液状化により構造物に沈下が生じることはありますが、沈下量は周辺地盤と同程度であり、傾斜を含む大規模な液状化被害を防止することができます。
主な適用対象は、建物本体の周囲に設置する小型タンク、小型倉庫、配管架台などで、重量が概ね5トン/m2以下の構造物です。新築はもちろん、改修にも対応可能であり、構内道路や駐車場などは規模に関係なく適用することができます。また、液状化する地盤の深さにかかわらず対策効果を発揮します。なお、対策の詳細については、当社が独自に開発した評価技術を用いて構造物や地盤条件に応じて設計を行います。
■新築構造物の対策
構造物の基礎下に基礎の短辺長の1/8以上の厚さ(最低30cm以上)で、基礎幅プラス1m程度の幅の礫層を設けます。
地震時には礫層の排水機能により、構造物周辺の水圧上昇が抑制されるため、礫層の周囲に液状化に至らない「非液状化領域」と、液状化には至るものの流動化はおこさず、安定的な変形を生じる「ポスト液状化領域」が形成され、液状化被害を防止します。
対策コストは従来工法の1/3〜1/5程度です。
■既設構造物の対策
基礎周囲に壁状のセメント系改良地盤を設けるとともに、構造物と改良地盤の周囲の地盤表層に礫層を設けます。壁厚は0.6〜1m程度、深さは基礎短辺長の1/2以上、礫層は厚さ幅とも30cm以上になります。
大地震が発生しても改良地盤で拘束された地盤は変形が小さいため地下水圧の上昇が抑制され、かつ礫層が壁の効果が小さい地表面付近の地盤の液状化を防ぐことから、基礎の変形を抑えることができます。
対策コストは従来工法の1/10程度です。
■駐車場や構内道路の対策
舗装の下に礫層を設けるとともに、一定間隔で地表などへの排水機能を果たす溝状の礫層を設けることで、液状化による噴砂を抑制し、不同沈下を大幅に低減します。
遠心模型実験による対策効果の検証
本工法の効果については、小型の構造物模型で実際の地盤の挙動を再現できる遠心模型実験により検証を行いました。実験の結果、本工法による噴砂の抑制効果や不同沈下の防止効果が確かめられました。
液状化現象とは
地盤の液状化とは、地下水位が高く、緩い砂地盤で発生する現象です。地震の揺れによって砂粒子がより密に詰まろうとすると、粒子間に存在する水の圧力が高まります。地震により水圧の上昇が続くと、水圧により砂粒子間の接触力がゼロとなり、地盤は液体状になります。地盤によっては砂混じりの水が地表に吹き出す噴砂という現象が生じます。
新工法の開発および設計は、地盤が液状化するプロセスを解明し、当社独自の液状化後の地盤変形を予測できる理論と解析手法を確立したことにより可能となりました。