9月1日は防災の日です。地震や台風などの自然災害を未然に防ぐことはできませんが、事前の備えにより被害を最小限に抑えることは可能です。今回の特集では、巨大地震の揺れを効率的に低減する回転式制震ダンパー「ダイナミックスクリュー※」についてご紹介します。
発生が危惧されている東海・東南海・南海の連動型地震では、首都圏をはじめとする大都市の超高層ビルがゆっくりと大きく長く揺れる長周期地震動に見舞われる可能性があります。
この長周期地震動から超高層ビルを守るのが「ダイナミックスクリュー」です。ダイナミックスクリューをビルの低層階に集中配置することで、建物の水平方向の揺れをダンパー内部の錘の回転運動に変換し、効率的にビル全体の揺れを抑えることができます。従来行われていた各階に制震装置を分散配置する構法と比較して、ローコスト・短工期を実現します。
本システムは、当社の旧本社ビル「シーバンスS館」の制震改修工事にも適用されました。また、超高層ビルに限らず、生産施設にも有効であり、すでに大規模生産施設の制震改修工事にも採用されています。
当社、カヤバ システム マシナリー(株)、日本精工(株)、平和発條(株)の共同開発
「シーバンスS館」への適用
ダイナミックスクリューは、当社の旧本社ビル「シーバンスS館」の制震改修工事にも適用されました。
■従来の制震装置の1/3程度の台数で同等の制震効果を発揮
工事では、シーバンスS館の1〜7階の28箇所にダイナミックスクリューを配置しました。1台あたりの錘の重量は0.6tですが、建物の揺れをダンパー内部の錘の回転運動に変換することで、2,500tの錘と同等の制震効果を発揮するため、従来の制震装置に対して1/3程度の台数で同等の制震効果を得ることができます。
■関東大震災の2倍規模の超巨大地震に対しても構造安全性を確保
本工事により、シーバンスS館は、1923年の関東大震災を引き起こした地震の規模を2倍に拡大した超巨大地震に対しても、構造安全性を確保できる制震ビルに生まれ変わります。
また、東日本大震災でのシーバンスS館の挙動を改修前後で比較すると、最大片振幅が49cmから29cmに、最上階の最大加速度が233ガルから155ガルに、揺れの継続時間が400秒から220秒に低減できることを確認しています。
回転式制震ダンパー「ダイナミックスクリュー」の概要
回転式制震ダンパー「ダイナミックスクリュー」は、ビル低層階に集中的に配置することで、地面から伝わる地震のエネルギーを低層階で効率よく吸収して、ビル全体の揺れを抑えます。
執務室として使われている中・高層階の改修は必要なく、共有スペースとなっていることが多い低層階のみを改修するため、ビルを使用しながらの改修が可能であり、日常業務への負担が少ないのが特長です。
従来の制震装置を使用する制震改修では、建物の過半数の階に制震装置を分散配置する必要がありました。これに対して、ダイナミックスクリューを用いたシステムでは低層階のみに従来の1/2〜1/3の台数を配置するだけで済むため、従来構法に比べ改修コストを20〜30%程度低減、工期を1/3程度短縮することができます。
■自重の4000倍以上の錘と同等の制震効果
ダイナミックスクリューは、錘の力で建物の揺れを抑えるTMD(Tuned Mass Damper)の一種で、錘の自重が増えるほど制震効果が高まります。本装置の場合は、建物の揺れを回転運動に変換することで、自重の4000倍以上の錘と同等の制震効果を発揮します(慣性質量効果)。
歩行振動など上下振動対策にも適用可能
ダイナミックスクリューは、揺れの特性に合わせて錘の大きさや取り付け部材を調整することで、従来の免震構造では抑えられなかった上下方向の地震動や、歩行等による床振動も制御可能であり、オフィスや病院、ホテル、データセンターなどの上下振動対策にも適用できます。
また、装置が小型で設置台数も少ないため、設備配管などの防げにならずに、さまざまな構造形式に応じた振動対策が可能です。当社では、用途や施設ごとに最適なシステムをご提案します。