2010.04.13

テクニカルニュース

環境

放射性廃棄物を1/100に ― 原子炉解体の課題を克服へ

当社は、近い将来本格化する原子力発電所の廃炉・解体に備え、世界で初めて放射化コンクリートの放射能低減化技術を開発し、実用化に目処をつけました。

地球温暖化対策として原子力発電所の重要性は増しています。1963年10月26日(原子力の日)に日本で最初の原子力発電が行われて以来、現在、国内では55基の原子炉が稼働しています。初期に建設された原子炉は寿命を迎えつつあり、すでに、日本初の商業用原子力発電所である日本原子力発電(株)東海発電所などでは、廃炉計画が進められています。廃炉の大きな課題は、解体時に発生するコンクリートや金属片など、大量の放射性廃棄物をいかに削減するかです。

当社が開発した新技術は、硝酸処理を用いてコンクリートから放射化した物質を効果的に除去し、放射性廃棄物の量を約1/100に削減するものです。処理後のコンクリートの大部分を占める骨材は再利用することができ、放射性廃棄物の処分コストを大幅に低減するとともに、処分場の新設・増設需要を抑制できるので、社会コストの低減にも寄与できます。

本技術に加え、独自の原子力関連技術と実績を有する当社は、東海発電所で進められている廃炉計画に、建設会社として唯一参画しています。今後も、国内外の原子力発電所の廃炉・解体計画に、当社の技術を積極的にご提案していきます。

放射能低減化プロセス

●放射化コンクリートの放射能低減化技術の特長

  • 放射性廃棄物の量を約1/100に削減できます。
  • 放射性廃棄物の最終処分場の新設・増設を抑制し、社会的なコストを低減できます。
  • 処理後の放射化しにくい骨材を原子力発電所のコンクリートに再利用することで、将来の廃炉コストをさらに低減できます。

硝酸処理により放射化した物質を効果的に除去

コンクリートが放射性廃棄物となるのは、骨材中にごくわずかに含まれるユーロピウム(Eu)とコバルト(Co)という原子(金属)に中性子が当たり放射化するためです。本技術は、問題となるEuとCoを硝酸処理により放射化コンクリートから効果的に除去します。

この結果、放射性廃棄物の量は約1/100となり、例えば出力100万kW級の沸騰水型原子炉を解体した場合、従来は約4,000トンの廃コンクリートが発生しますが、本技術ではこれを約40トンに削減することができます。


凡例…Eu:ユーロピウム、Co:コバルト

■処理後の放射化しにくい骨材の再利用で、廃炉コストをさらに削減可能

硝酸処理後のコンクリートは、Eu、Coの含有量が処理前の1/10以下となり、放射性廃棄物として扱う必要がなくなるため、骨材として再利用することができます。

EuとCoをほとんど含まない骨材は放射化しにくいため、原子力発電所の建設に再利用することで将来の廃炉コストをさらに低減することができます。


処理による骨材の変化


当社の原子力関連技術と実績

コンクリートの放射量を正確に評価するためには、コンクリートの物性(元素組成、水分量)に関する正確な評価技術と、高精度の放射線量評価技術が欠かせません。

当社は、コンクリートの物性把握における10年以上の実績と、20年以上にわたる原子力・放射線分野での実験・解析に裏づけられたさまざまな独自技術を有しています。また、役目を終えた原子力施設を安全に解体する廃止措置工事についても実績があります。

■コンクリート放射化レベル評価システム

原子炉を取り巻くコンクリート壁などが、どれだけ放射能を帯びたかをシミュレーションすることができます。

原子力発電所建屋のあらゆる部位のコンクリートの放射化レベルをきめ細かく解析・評価し、3次元CADデータを用いてビジュアルに表示します。汚染範囲を絞り込むことで廃棄物を1割程度削減することができ、解体方法や処分量の検討にも役立ちます。

■廃止措置工事の実績

日本原子力研究所JRR-3(研究炉)やJPDR(動力試験炉)の廃止措置工事の実績、原子力施設の解体撤去システムや解体コンクリートの再利用技術等についての実績があります。


RR-3(研究炉)の一括撤去(1985年)
2,200トンの原子炉本体を一体で移動


JPDR(動力試験炉)の解体撤去(1990年)