浅草寺本堂は、当社施工により1958年(昭和33)年に完成した鉄骨鉄筋コンクリート造の建物です。築後約50年が経過し、外装の老朽化が進んだため、当社で瓦の葺き替えならびに外装塗装の塗り替え工事を行っています。
浅草寺は、年間3,000万人もの参拝者が訪れる日本有数の観光スポットです。本堂は2006年の耐震補強により現行の耐震基準を満たしていますが、「多くの方が訪れる場所だけに、災害に強いものを」というお客様のご要望により、チタン瓦を採用して屋根を大幅に軽量化し、耐震性能をさらに向上させています。
また、施工中も参拝者を受け入れるため、施工にあたっては、参道をふさがないようスライド工法で本堂を覆う素屋根を架設し、参拝者の動線と安全を確保すると同時に、全天候型の作業空間を構築しました。現在、工事は順調に進んでおり、年内には改修を終える予定です。
●本改修工事の特徴
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クレーンを固定し、スライド工法で素屋根を架設
本工事では、本堂をすっぽりと覆う軽量トラス製の素屋根(縦横65m×55m、高さ40m)により、参拝者の動線と安全を確保するとともに、全天候型の作業空間を構築しています。
施工中も参拝者を受け入れるため作業用地は限られており、素屋根の架設にあたっては、クレーンを移動させながら架設する従来の工法とは逆に、建方用クレーンを固定して屋根材を移動させながら架設するスライド工法を採用しました。上部トラスをスライドさせながら設置する方法については、3D CAD図を利用して作業手順を入念に検証しています。
チタン瓦により耐震性能をさらに向上
本改修工事の特徴の一つは、3,100m2の屋根を覆う既存の日本瓦を、チタン瓦に葺き替える点です。チタン瓦への葺き替えにより、屋根全体の重量は約930トンから180トンへと約1/5に軽減されるため、耐震性能はより向上します。チタン瓦は、ビス留めされるため地震による落下の心配がなく、また、耐久性・耐蝕性にも優れているためメンテナンスフリーとなります。チタン瓦は、浅草寺内の宝蔵門改修(当社施工)にあたって初めて開発、採用されました。今回、チタン加工技術はさらに緻密になり、本瓦の風合いを出しています。
■3色のチタン瓦で重厚な風合いを表現
チタン瓦はいぶし調の表面処理を施した微妙に色の異なる3色を用意し、これをランダムに配置することで、日本瓦の持つ重厚な風合いを表現しました。また、平面部、軒先など部位別に形状の異なる数種類の瓦が使われていたため、3D CADを駆使して形や厚み、卍(まんじ)・唐草模様など、瓦のデザインを可能な限り忠実に再現しました。
■施工手順
最大20工程に及ぶ塗装で漆調を表現
鉄筋コンクリート製の垂木や外装の塗装については劣化が著しかったため、建立時の姿を取り戻すべく塗装を塗り替えています。
塗装の劣化状況次第では、塗装をすべてそぎ落として、塗装面を平滑にした後、樹脂を塗ってコンクリートのアルカリ性を回復するリフリート工法により下地処理を行います。その後、最大20工程に及ぶ塗装を行い、伝統的な漆調の風合いを表現していきます。また、飾り金物などについても修復を行います。
工事概要
■浅草寺本堂外部改修工事
工事場所 | : | 東京都台東区浅草2-3-1 |
施主 | : | 宗教法人 浅草寺 |
改修設計・監理 | : | 清水建設(株) 一級建築士事務所 |
建物用途 | : | 寺院本堂 |
構造・規模 | : | SRC造、屋根鉄骨造 地下1階、地上1階、中2階 |
敷地面積 | : | 44,690m2 |
建築面積 | : | 2,489m2(752.92坪) |
延床面積 | : | 3,479.95m2(1,052.69坪) |
軒高 | : | 12.1m |
最高高さ | : | 29.6m |
工期 | : | 2009年2月9日~2010年12月10日 |