当社は、大地震などの災害発生時に、復旧活動の拠点として機能する社員寮「白山寮」(東京都文京区)を建設しました。
本施設は、通常40名が入居する独身寮ですが、災害発生時には300名が宿泊できるBCP拠点として機能することができます。免震構造の採用はもちろん、さまざまな類焼※防止対策が施されており、地下倉庫には非常食や移動用自転車などが備蓄されています。非常時には、井戸水をシャワーやトイレに利用することができ、また、自家発電設備も備えているため、都市インフラが停止した状況でも活動を継続することができます。
建設業は、災害時における復興支援活動の担い手であり、各企業とも本社・支店等をBCP拠点として整備していますが、本施設のような専用拠点の設置は当社が初めてです。今後は、社宅や社員寮の建替え時におけるBCP機能の追加について、お客様にご提案していきます。
「類焼」とは、他の場所から出火した火災(もらい火)で焼けること。一方、「延焼」は、火事が燃え広がることを指します。
インデックス
建物配置や外観にも工夫
白山寮は、災害時に対応したさまざまな設備を備えていることはもちろん、建物配置や外観、外構などにもBCP拠点ならではのさまざまな工夫が盛り込まれています。加えて、非常時のインフラ復旧想定の各種検討を行い、実際の災害を想定したマニュアルを作成して防災訓練を定期的に実施し、その有効性を確認しています。
■耐震要素を外周に集約
本施設は、扁平な柱および梁で構成される耐震壁付扁平ラーメン架構を採用し、外周に集約した耐震要素で、周辺の火災から建物を守ると同時に、有効なBCP活動空間と寮室を確保しています。
また、震災直後の建物安全性確認のため、構造モニタリングシステムを導入しています。
■設計段階から3次元CADで詳細を検討
設備負荷や災害時の配管系統切替など、BCP拠点特有の複雑な機能に対しては、3次元CAD(U-KIT)を用いて、設計段階から詳細を検討しました。
着工時点では、機器搬入や配管ルート、外部インフラ接続等についての検討をすでに終了させています。
インフラ停止時でも復旧活動が可能
本施設は、1階にライブラリー室と集会室、2、3階にワンルーム形式の寮室40室を配置し、災害時には、ライブラリー室が司令センターとして機能するとともに、集会場に60名、各寮室に6名(240名)の300名が宿泊できるようになっています。
各寮室の天井裏には、配管の一部をふくらませた貯留設備「防災ヘッダー」があり、300名×3日分の飲料水を確保しています。また、地下倉庫には、300名×3日分の食料と20台のパンクレス自転車、その他災害復旧支援物資を備蓄しています。
■インフラ停止時における生活基盤・防災拠点機能の確保
停電や断水、下水機能の停止に備え、地下に非常用自家発電設備、燃料タンク(6日分)、井戸水ろ過装置、非常用排水槽(300名×2ヶ月分)を設置しています。停電時には、自家発電設備を稼働させ、寮室などの保安照明や司令センターであるライブラリー室に電力を供給します。また、井戸水は、断水時にトイレやシャワーに使用するもので、上水と井戸水の配管は手動で切り替えることができます。
なお、設備は、非常用自家発電設備を除き、全て平常時にも使用している機器のみで構成しています。災害時にエレベーターを運転する必要があるときは井戸水をくみ上げるポンプを止めるなど、限られた電力でも供給先を必要度合いに応じてコントロールすることで、円滑なBCP対応を可能とする合理的な設備計画となっています。
■近隣への配慮と非常時における貢献
平常時は、通常の建物として近隣の景観形成に寄与する建物を目指して計画されており、外構には普段近隣の住民が入ることができる開放スペースも設けています。非常時には、マンホールトイレの提供や屋外に設置された消火栓による消火活動、散水栓による生活用水の提供などを行います。
工事概要
■清水建設白山寮 建替計画
工事場所 | : | 東京都文京区白山4-18-11 |
施主 | : | 清水建設(株) |
設計・監理 | : | 清水建設(株) 一級建築士事務所 |
建物用途 | : | 独身寮・単身寮 |
構造・階数 | : | RC造 地下1階 地上3階 |
延床面積 | : | 2,849m2 |
工期 | : | 2008年6月1日~2009年7月31日 |