当社は、「環境」をキーワードに、地球規模のニーズを満たす月面開発についてまとめた宇宙未来構想「月太陽発電 ルナリング」を発表しました。
「ルナリング」は、一言で言えば、月面で発電したエネルギーを地球に伝送し、地球上すべての電力需要をまかなうという構想です。月の赤道をぐるりと一周する巨大な太陽電池パネルの帯で発電を行い、そのエネルギーをマイクロ波とレーザー光に変換して地球側の受・変電施設へ送り、電力や水素に変換して全世界へと供給する仕組みです。
本構想は、地球上の限りある資源を節約しながら使うというこれまでの考えから、無限に近いクリーンエネルギーを自由に使うというエネルギーのパラダイムシフトをもたらします。実現すれば、新たな持続型社会を実現するとともに、地球温暖化による環境破壊や資源の枯渇を抑制し、緑あふれる地球を取り戻すことが可能となります。
当社は、1987年に建設会社初の「宇宙開発プロジェクト室」を設立しました。宇宙技術と建設技術を融合させたさまざまな研究開発を進め、宇宙ホテルや月面基地などを提案してきました。今回の構想は、こうした取り組みをベースとして、今後の宇宙関連技術の進展を踏まえてまとめたものです。
インデックス
月発電施設
太陽光を受けて発電を行う太陽電池は、24時間の連続発電を可能とするため、月の赤道上に設置します。規模は、幅400km、長さ11,000km(月一周分)で、総面積は日本の国土の11倍にあたる約440万km2です。
施設全体の発電能力は、原子力発電所約13,000基分に相当する年間220テラワット(テラ=1兆)で、2030年に世界が必要とするエネルギーすべてをここでまかなうことができます。エネルギーは、マイクロ波やレーザー光に変換し、それぞれのエネルギー伝送施設から地球へと送ります。
■月の資源を活用
建設資材については、費用がかかる地球からの輸送を可能な限り減らすため、月にある資源を積極的に活用します。
月の砂は酸化物なので、地球から水素を持ち込めば「酸素」や「水」を作ることができます。また、地球の砂と成分がほとんど同じため、ここから「セメント」をつくり、水と砂・砂利を混ぜてコンクリートをつくることもできます。さらに、太陽熱を利用することで、ブロックやグラスファイバーも製造可能です。
■ロボットが建設
建設にあたっては、地球からの遠隔操作により24時間稼働できる宇宙建設ロボットを主に活用します。
地球側の受・変電施設
月から送られてきたマイクロ波やレーザー光は、地球上に設置したそれぞれのエネルギー変換施設で受け取り、電力に変換します。
マイクロ波は、中・高緯度地域まで設置可能な地上施設で電力に変換し、送電網を通じて各地に供給、また電気分解によって水素を製造し、燃料として利用します。
レーザー光は、雲の少ない赤道付近の海上などに設置した施設で電力に変換するほか、海水を淡水化して電気分解で水素を製造、船舶などで各地へ輸送します。