当社は、既存超高層ビルの長周期地震動※対策技術「シミズハイブリッド集中制震システム」を開発・実用化しました。
超高層ビルの設計において長周期地震動が考慮されるようになったのは2000年の建築基準法改正以降であり、それ以前に建てられた超高層ビルでは対策が必ずしも十分でない場合があります。
本システムは、ビル低層階に集中配置した新開発のハイブリッド型制震ユニットにより、効率的にビル全体の揺れを抑える制震改修構法です。長周期地震動による各階の揺れ幅と加速度、長く続く後揺れ時間を大幅に低減できるなど、既存超高層ビルの改修技術としては業界最高クラスの制震性能を誇ります。また、各階に制震装置を分散配置する構法と比較して、ローコスト・短工期を実現しました。
今後、当社は、本システムを積極的にご提案し、お客様のBCPを強力に支援していきます。
長周期地震動:ゆっくり長く揺れる地震動。震源から遠く離れていても超高層ビルが共振現象を起こして大きく長く揺れ、構造体や内外装材の損傷、設備機器の転倒などの被害を被る可能性があります。
●システムの特長
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「シミズハイブリッド集中制震システム」の概要
本システムは、当社独自開発の「大容量回転慣性質量ダンパー」とオイルダンパーを組み合わせた、ハイブリッド型制震ユニットをビル低層階に集中的に配置し、地面から伝わる地震エネルギーを入口である低層階で効率よく吸収して、ビル全体の揺れを抑える仕組みとなっています。
執務室として使われている中・高層階の改修は一切必要なく、共有スペースとなっていることが多い低層階のみを改修するため、ビルを使用しながらの改修が可能であり、日常業務への負担が少ないシステムです。
■制震装置の設置数を最小限に抑え、コスト・工期ともに縮減
改修範囲を限定するのと同時に、分散配置に比べて制震装置を大幅に減らし、さらに既存の柱や梁などの補強も不要なため、コスト・工期を縮減できます。
30階建ての超高層ビルでシミュレーションした場合、分散配置の対策では全フロアの約半分の階に計140台の制震装置を配置する必要があるのに対し、本システムでは1〜4階部分に計80台配置するだけで済みます。その結果、従来構法に比べ改修コストを35%程度低減、工期を50%程度短縮すること可能です。
■長周期地震動特有の長い後揺れ時間を大幅に低減
既存の超高層ビルをモデルにしたシミュレーションでは、改修前に対して、各階の揺れ幅と加速度を約30%、後揺れ時間を最大約70%程度低減することができました。
大容量回転慣性質量ダンパーが梁・柱にかかる力を軽減
オイルダンパーのみを用いた一般的な制震システムでは、ダンパーが揺れを吸収する際に大きな力がかかる既存の梁・柱を補強しなければならない場合がありますが、今回開発したハイブリッド型制震ユニットでは大容量回転慣性質量ダンパーを必要に応じて用いることにより、梁・柱にかかる力を軽減するため、既存の梁・柱を補強する必要はありません。
大容量回転慣性質量ダンパーは、ボールねじを組み込んでおり、地震の揺れが装置に伝わるとおもりが回転し、揺れの力を回転運動に変換します。これにより、揺れとは逆向きの力が働き、建物の揺れを小さく抑えます。