去る5月20日(水)、当社は、キリバス共和国名誉総領事館、日本大学理工学部および同海洋建築工学科、NPO法人 地球倶楽部ネットワーク2000とともに、日本大学理工学部1号館(東京)において「ニュー・フロート・アイランド シンポジウム」を開催しました。
本シンポジウムは、海面上昇により水没の危機にある太平洋の島々の美しい環境を守るために、フロート・アイランド実現の可能性を考えるものです。当日は、キリバス共和国のアノテ・トン大統領がゲストとして訪れ、講演を行いました。
当社は、今回ご紹介する「環境アイランド グリーンフロート」のプレゼンテーションを行うとともに、宮本社長がパネルディスカッションに参加し、人工浮島の実現性や課題について意見交換しました。
赤道直下の太平洋に浮かぶ「環境アイランド グリーンフロート」
当社が提案する環境アイランド「グリーンフロート」は、最も太陽に恵まれ、台風の影響が少ない赤道直下の太平洋上に建設することを想定しています。
本構想のテーマは、地球上の広大な未利用地域を、環境に配慮しつつ、その特性に応じて最大限活用することで、地球環境問題の解決に貢献していくことです。
■都市の発展に伴い柔軟に領域を拡大
グリーンフロートは、水面に浮かぶ睡蓮のようなイメージの人工島群により構成されます。直径3,000mの円形の浮島「セル」を基本単位とし、セルを7つ集めたものを「モジュール」、またモジュールをいくつか集めたものを「ユニット」と定義することで、1万人規模の街区から100万人規模の国家まで、都市の発展に伴い柔軟に領域を拡大することができます。
■自然エネルギーを活用し、快適環境と自給自足を実現
浮島の中心には高さ1,000mのタワーを建設します。タワーは日照を最大限に利用するため逆円錐形とし、上部には住宅やオフィスなどがある空中都市を配置します。赤道上空1,000mの気温は年間を通じて26〜28℃のため、快適な住環境を実現できます。また、職と住が近接したコンパクトシティのため、移動に必要なエネルギーも最小限で済みます。
タワー中間部以下には植物工場を配置し、新鮮な野菜を自給自足できるようにしています。また、水辺部分には、人と生物がバランスよく共生できる「陸の森」や「海の森」を配置し、生物多様性の保全と持続を目指します。
「グリーンフロート」実現のための技術
「グリーンフロート」実現のための主な技術を紹介します。
■CO2削減・省エネ
宇宙太陽光発電や海洋温度差発電など、革新的なエネルギーシステムを採用することでCO2排出量をゼロに抑えます。さらに、周辺のCO2を回収し、CO2の地中貯蔵や海洋隔離することで「カーボンマイナス」な都市を目指します。
■生態系・緑化
熱帯雨林の維持やマングローブの林を創出、海洋牧場や海中緑化システムを活用します。里山や里海の多様な生態系を形成します。
■自給自足・リサイクル
植物工場や海洋牧場、畜養アイランドなどを活用した自給自足を行います。また、生活ゴミとCO2で食物を育て、紙くずや廃材からエネルギーをつくり、ゴミの完全リサイクル化します。
■安全・安心
自然災害や都市災害に対しては、総合的な都市防災・都市事業継続性(BCP)の観点から対応します。また、気象予測情報や各種モニタリングにより、風や波などの自然災害の影響を低減します。
■海上建築・施工
●人工地盤施工
海上人工地盤は、ハニカム構造の部材を接合して施工します。ハニカム構造とは六角形のセルが集まった蜂の巣状の構造体で、強度と軽さを併せ持ち、建築をはじめ最先端の航空宇宙分野でも広く利用されています。
●海上超高層施工
海上における超高層施工には、海上スマート工法を用います。本工法は、構造体を常に地上面で施工し、組み上がった構造体は一旦海中に沈め、骨格が組み上がった後に海中の浮力を利用してリフトアップするものです。常時地上面で施工できるため、安全かつ効率的です。
●構造材料
構造材料には、海水を主原料として製錬できるマグネシウム合金を使います。マグネシウム合金は、軽量かつ高強度な上、再融解してリサイクルすることが可能なため、FRPなどの他の軽量構造材に比べ環境にやさしい材料として注目されています。
ニュー・フロート・アイランド シンポジウムの概要
■ニュー・フロート・アイランド シンポジウム
太平洋の国々の美しい環境を守るために
日 時 | : | 2009年5月20日 |
場 所 | : | 日本大学理工学部1号館 |
主 催 | : | キリバス共和国名誉総領事館、 日本大学理工学部及び同海洋建築工学科、 NPO法人 地球倶楽部ネットワーク2000、 清水建設株式会社 |
後 援 | : | 外務省、国土交通省、読売新聞東京本社、 日本海洋工学会 |
キリバス共和国アノテ・トン大統領 東京宣言(抜粋)
キリバスは世界で最初に日が昇る国だが、温暖化の進展によっては世界で最初に水没する国になるかも知れない。その原因は、キリバスの人々が行った何かが原因ではなく、遠くの国に住む会ったこともない先進国や巨大な発展途上国の人々の活動が原因なのだ。
1948年に採択された世界人権宣言の趣旨からすれば、我々は少なくとも我々の生活基盤を尊重される権利があると思う。そして、我々の権利が守られるためには、世界の人々が我々に起こりつつある事を知らなくてはならないし、我々の事態を改善すべく行動を起こさなくてはならない。
我々の国、キリバスを水没から守るには、既に手遅れかもしれない。しかし、私は世界で最初に事態に直面する一人の人間として、そして事態に直面するキリバスの国民の代表として、そして水没の危機に直面するすべての人の代表として、以下のことを宣言する。
「全ての人は自らの生存環境を尊重される権利がある。全ての人は自らの行動が他の人の生存を脅かす可能性に配慮して生活しなくてはならない。そして、自らの活動が他の人の生存に脅威を与えていることを知った時には、それを回避または改善する義務がある」
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