2007.04.25

テクニカルニュース

省エネ

風の力を引き出す風力発電エンジニアリング

京都議定書のCO2削減の目標達成が危ぶまれている中、風力発電はCO2の排出が少なく、環境負荷の小さい、クリーンな新エネルギーとしてますます注目されています。

このほど、愛媛県西端に突き出た佐田岬半島に「三崎ウインドパーク」、「佐田岬風力発電所」が相次いで完成し、営業運転を開始しました。なお、「三崎ウインドパーク」は、企画・調査から、施工、運用まで、当社のフルターンキーで建設しました。また、当社は、「八竜風力発電所(2006年完成)」や「宗谷岬ウインドファーム(2005年完成)」など、全国で計217基、270,500kW(建設中を含む)という業界一の豊富な実績をあげています。

当社は、風況解析、風車の最適配置計画、事業性予測、構造設計、電気・耐雷設計、調達、施工、運転、保守など、風力発電事業に関わる一連のエンジニアリングを効率的かつ精度良く実施し、お客様の多様なニーズに最適な提案を行います。

●シミズの風力発電エンジニアリングの特長

  • 風力発電所の事業化・建設に必要となる事業支援をトータルで行うことができます。
  • 複雑で高低差のある日本の地形に対応した予測モデルを用いて、風況(風速や風向など)を精度よく予測できます。
  • 洋上立地の風力発電所建設に必要な浮体式構造のための,浪や潮流を考慮した動揺解析技術など高度な技術力を有しています。

日本特有の環境条件下で風車の経済性・安全性を確保

企画提案、事業検討、設計段階では、日本特有の急峻で複雑な地形と乱れの強い風況という環境条件下で、風車の経済性・安全性を確保しなければなりません。当社では、さまざまな先進ツールを用いてお客様へ最適なご提案を行います。

■風況予測モデル「MASCOT」

風況観測データに基づいて解析

当社は、日本の地形に対応した風況予測モデル「MASCOT(マスコット)」を活用した風況評価手法で、精度の高い発電量の予測を実現しています。およその候補地や導入規模が決まった時点で風況観測を実施し、解析や評価を行います。観測データに基づいてMASCOTを活用した風況解析、発電量算出を行い、風力発電の導入の事業性、最適な設置地点を検討します。


風況観測:観測タワーに風向・風速計を取り付け、2、3箇所の地点で1年間かけて計測


解析結果例(流跡線):風車付近の風向が安定し、左上の渦の影響が少ないことを確認

MASCOT(Microclimate Analysis System for Complex Terrain):
東京大学 石原孟准教授開発の風況解析技術です。「地域気象モデルとMASCOTを用いた風況解析法」が新しく開発され、当社は実サイトでの同モデルの検証にも参加しています。

地域気象モデルを用いた解析

近年の気象観測技術の進歩に伴い、客観解析データ(高層気象データ)を基に風況解析することが可能になりました。

風況観測が困難な場所や短期間で適地の選定を行う場合に、風況観測に先行して、「地域気象モデルを用いたMASCOT」を活用し、年平均風速を精度よく予測できます。


解析結果例:赤の部分は風速が大きく、青は小さい。 細かい矢印は風向と大きさを表す

■風車配置

風況解析結果を基に、設計・エンジニアリング段階では、風況にあった風車の選択及び配置計画、土木造成計画とのベストミックス、経済的な電気設備系統設計を図るために、海外で多くの実績を持ち、風車設置可能量、発電量などを算出・評価できる「ウインドファーマー」を活用し、迅速かつ効率的な提案を行っています。


最適風車配置検討シミュレーション:楕円内に風車を表示

■構造安全性評価

本体タワー及び基礎について、風による影響を構造解析し、安全性を確認します。また、ブレード(回転翼)やナセル(発電機などを収納)の安全性評価や性能評価を一体で行うことのできるシステムを導入し、風力エンジニアリングの核である風車本体の構造安全性を高めています。


構造解析:タワー(左)及び基礎(右)にかかる応力を解析


総合的かつ経済的な施工

施工段階では、土木、電気工事を含めた総合的で経済的な計画を当社単独で効率よく進めることができます。

■施工フロー


(1)輸送


(2)ボトムタワー据付


(3)ナセル(発電機などを収納)据付


(4)ブレード(回転翼)地組


(5)ブレード上架


(6)完成

ブレードを一枚ずつ取付ける方式もあります


期待される風力発電

地球温暖化を抑制する風力発電は、新エネルギーの中でも特に期待されています。日本では、2010年度までに全国300万kWの風力発電施設導入が政府目標として掲げられています。

新エネルギーの普及を促進するための「RPS法」も今年の春に改正され、導入目標量が大幅に増やされ、風力発電の規模は今後さらに拡大していくと考えられます。NEDO((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構)の試算では、2030年度には、洋上発電を含め、2,000万kWの規模に拡大させることも提言されています。


風力発電の市場規模(政府目標)

RPS法(Renewable Portfolio Standard):法政府が電気事業者に対して、毎年度、販売電力量に応じた一定割合以上の電力を新エネルギーで供給することを義務づけるもので、2003年4月に施行されました。2007年3月に見直しが行われ、2014年度の導入目標量が2010年度に比べ31%増やされています。

■洋上風力発電

日本の国土は山岳地が多いため、立地の確保が難しくなっています。また、風車の大規模化や効率的な発電のため、障害物がなく、風速が大きく安定している洋上での風力発電の実現は、政府目標の達成に向け弾みを付ける効果があると期待されています。

当社では、日本近海に適した浮体式発電の開発に積極的に取り組み、浮体構造の安全性と発電の安定性の検討を行っています。