2004.12.08

テクニカルニュース

維持・保全

安全、静か、スピーディな壁・柱の耐震改修

今回は、当社の耐震改修メニューの中から、工事による居住者や周辺への影響をできるだけ抑えた耐震補強工法として、耐震壁の補強・増設や、より安全に効率よく柱を補強する工法をご紹介します。

当社は、工事による騒音や振動を極力抑え、建物をできるだけ使いながら耐震壁の新設や増し打ち補強ができる「CSB工法」と、火気を使わずに柱のねばり強さを増す「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」をご提供しています。

ホテルや学校、事務所やデパートをはじめ、インフラでは橋脚の補強など数多くの実績に基づき、みなさまの建物の耐震対策に応じています。


かみ合わせ鋼板巻きたて工法による柱の補強


かみ合わせ鋼板巻きたて工法による橋脚の補強


騒音・振動・粉塵を大幅に減らして耐震壁を追加・補強「CSB工法」

従来、耐震壁を増築する際には新設する壁を既存の柱・梁に定着するために多数のアンカーを打つための穴あけや、目荒らしなどの下処理が必要であり、騒音・粉塵などが発生していました。

「CSB工法」の最大の特徴は、「コッターブロック」と呼ばれるオリジナルのコンクリート製ブロックを既存の柱や梁に「接着剤で取り付ける」ことで、耐震壁のアンカーとすることが可能となりました。これにより、これまで課題となっていた下処理による騒音・振動・粉塵の発生を大幅に低減することができます。


柱・梁に接着されたコッターブロック

従来工法

既存コンクリートの目荒らしやアンカー穴あけが多数必要で、騒音、振動、粉塵が発生します。

CSB工法

穴あけは仮止めのアンカーボルトのみで十分、目荒らしも不要なため、騒音、振動、粉塵を大幅に低減できます。

CSB工法:Continuous Shear Blocksの頭文字を採った名称で、「連続的に配置したせん断力伝達ブロック」の意味

●CSB工法のメリット

  • 接着工法により耐震壁を構築するため、従来工法よりも騒音・振動・粉塵の発生を大幅に低減できます。
  • 工事エリアが小さいため、建物を使用しながら耐震壁の新設や補強工事ができます。また、什器・備品の移動もほとんど必要ありません。
  • 建物の内部で補強が可能なため、現状の外観イメージに影響を与えません。
  • アンカー工事が不要なため、アンカー工事に手間のかかる鉄骨鉄筋コンクリート造での使用に最適です。

●CSB工法の主な作業内容

1 既存の柱・梁の壁増設面に
コッターブロック接着のための素地調整
2 仮止めアンカーボルトの穴あけ
3 コッターブロックの接着と
仮止めアンカーボルトによる固定
4 増設壁配筋・型枠のセット
5 コンクリートの打設


コッターブロック接着

接着したコッターブロックと組まれた鉄筋

●CSB工法の主な実績

全国の様々な用途の建物の耐震補強工事に採用されています。

建物名称 所在地 延床面積(m2) 竣工年 改修年
Sホテル 北海道札幌市 19,947 1973年 1997年
Nビル(オフィス) 長野県松本市 6,606 1982年 1999年
Mビル(オフィス) 東京都新宿区 2,711 1976年 2000年
K学校 東京都世田谷区 5,180 1969~74年 2001年
K工場 神奈川県川崎市 8,802 1963年 2001~02年

火気を使わない安全工法「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」(柱補強)

「かみ合わせ継手」は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の柱に鋼板を巻きたて、接合部の“のこ歯状”機械式継手をかみ合わせるだけで接合できる画期的な仕組です。接合した後は、柱と鋼板の隙間にモルタルを充填すれば補強が完了します。

デパートやスーパーマーケット、駐車場などの大空間建築物の耐震補強工事で中心となる柱のねばり強さを増し、安全で確実、効率よく耐震補強を行うことができます。

工場で生産した2ピースの鋼板を「かみ合わせ継ぎ手」をかみ合わせるだけで接合が完了し、火気を使いません。作業スペースや搬入通路が狭い場合は、上下に分けた短い鋼板にすることもできます。


柱断面図


かみ合わせ継ぎ手部


鋼板巻きで補強された柱
(仕上げ前の状態)

●「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」のメリット

  • 現場溶接を一切必要としないため、火気や煙の心配がありません。
  • 工事エリア以外では振動や騒音も少ないため、安心して業務を続けながら工事を行うことができます。
  • 工場生産したプレファブタイプなので、品質の高い確実な補強工事が行えます。

● 「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」の主な実績

デパートや駅ビルなど、独立柱のある建物を中心に採用されています。

建物名称 所在地 延床面積(m2) 竣工年 改修年
Aホテル 東京都千代田区 19,947 1973年 1997年
Cビル(物販店舗) 東京都千代田区 31,694 1982年 1999年
F工場 東京都三鷹市 7,360 1957年 2000年
Iビル(オフィス) 東京都千代田区 5,544 1961年 2001~02年
Mビル(物販店舗) 千葉県松戸市 3,707 1974年 2002年

短工期で確実な耐震補強「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」(橋脚補強)

「かみ合わせ継手」は、角柱、円柱などさまざまな断面の橋脚を短い工期で補強でき、東日本旅客鉄道(株)において高架橋耐震補強の標準工法とされ、多くの実績があります。

また、溶接が不要とうい特長を活かし、水中でも柱に鋼板を巻くことができ、鋼板接合後に水中不分離性の高流動モルタルを橋脚と鋼板の隙間に充填することで、港湾や河川内の橋脚の耐震補強を水をせき止めるための「仮締切」や「足場」なしで行えます。


かみ合わせ継手による橋脚の耐震補強例

●「橋脚補強」での「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」のメリット

  • 現場での溶接作業が不要
    「かみ合わせ継手」は工場で予め鋼板に溶接されているため、現場溶接は一切行いません。
  • 品質管理が容易
    継手の施工が、温度・湿度・風速などの屋外環境や作業員の技能等に影響されず、安定した品質・工程を確保できます。
  • 継手の水中接合が可能
    溶接が不要な機械式継手なので、水中でも鋼板を接合できます。
  • 工期・工費が削減
    溶接や高力ボルト継手などの既存技術に比べて作業性に優れ、工期が短くなります。

●従来工法と「かみ合わせ鋼板巻きたて工法」の比較:水中作業


従来工法


かみ合わせ鋼板巻きたて工法

●各種の受賞・証明取得に裏づけられた高い信頼性

  • (財)道路保全技術センターより技術審査証明取得(平成12年2月)
    旧建設大臣認定機関である(財)道路保全技術センターより、「民間開発技術の技術審査・証明事業認定規定に基づく道路保全技術・技術審査証明」を取得しています。
  • 平成10年度「日本コンクリート工学協会賞」受賞
    優れたコンクリート関連技術に贈られる「日本コンクリート工学協会賞」を受賞しました。
  • 東京都建設局の「新材料・新工法」登録(平成13年3月)
    東京都において積極的に活用される「新材料・新工法」として登録されています。

●かみ合わせ鋼板巻きたてによる橋脚の実績

鉄道高架橋への施工実績7,000本以上(平成12年度実績)