今回は、震災時に建物を保護するだけではなく、建物内の資産の保護や機能維持を実現する免震化による引越し不要の「居ながら耐震改修工事」についてご紹介します。
「免震レトロフィット」と呼ばれるこの構法は、既存建物の基礎部分または中間層に免震装置を組み込み、地震の揺れが建物に直接伝わらないようにするもので、旧基準で建てられた建物を地震に対して安全な建物に更新することができます。一般的な耐震補強に比べ、より震災後の機能維持を重視した耐震改修構法です。
当社は業界トップクラスの免震レトロフィットの実績からそのノウハウを生かし、お客様の条件にもっとも適した耐震改修工事をご提供いたします。
■免震レトロフィットによる耐震改修のメリット
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「居ながら免震」の最新事例:厚木市庁舎の耐震改修工事
厚木市庁舎では、耐震改修工事として免震レトロフィットを採用することで、「耐震安全性」を確保するとともに、「建物の長寿命化」による省資源や財政負担の軽減を図っています。また、仮設庁舎を必要としない「居ながら工事」を前提に、引越しの費用がかからないようにしています。
さらに、改修工事後は免震構造の建物になることで、被災後でも市庁舎としての機能を維持することができ、地域の防災拠点として機能することが期待されています。
※耐震改修工事と同時に内装、外装のリニューアルも一部行われています。
●免震構造と耐震構造の地震による揺れの違い
■免震化による耐震改修のポイント
庁舎の機能を維持し、日常業務を継続しながら工事を進めています。工事中も地震に対して工事前と同程度の耐力を確保しています。
●改修工事中の庁舎・利用者への配慮
正面玄関、通用口を工事中も確保し、スロープも設置します。作業者と利用者が重ならない動線計画により安全を確保します。
●既存埋設配管・インフラ設備のトラブル回避
埋設配管については図面調査とあわせて先行試掘、非破壊検査、(X線透視・超音波)により事前に位置を確認します。確認の困難な部分は手作業により解体を行います。
■建物の条件に合ったベストな免震構造
厚木市庁舎では免震装置として「鉛プラグ入り積層ゴム」と「すべり支承」の2種類を配置して、地震時に建物がゆっくりと揺れるように計画されています。鉛プラグにより地震後に建物の揺れを吸収し、すべり支承は建物の重さを受けながら、すべりにより地震の揺れを低減させるしくみになっています。
また、地下室部分と基礎部分のレベルの違いには既存の基礎下部に免震装置を設置する「基礎下免震」と、地下2階の柱下部を切り離して免震装置を設置する「柱脚免震」を組み合わせることで対応しています。これにより工事に伴う掘削土を少なくしています。
徹底した管理
免震装置の取付中は、各柱ごとに沈下計測を行い、最大変位2mm以下を目標に管理しています。実際は1mm程度と非常に高い精度で設置工事は終了しました。
■建物概要
場 所 | : | 神奈川県厚木市中町3-17-17 |
建築面積 | : | 1,469.852m2 |
延床面積 | : | 9,013.002m2 |
規模・構造 | : | 地下2階 地上5階 PH1階・RC造 |
竣工年 | : | 1971年(昭和46年)2月(耐震改修までの経過年数32年) |
■免震改修工事概要
工事名称 | : | 市庁舎免震改修工事 |
発注者 | : | 厚木市 |
設計・監理 | : | 厚木市都市部 建築工事課 株式会社佐藤総合計画 |
施 工 | : | 清水・トーシン特別共同企業体 |
工 期 | : | 2003年8月11日~2005年1月31日 |
免震装置 | : | 鉛プラグ入り 積層ゴム(アイソレーター)28か所 すべり支承 12か所 |
業界トップクラスの免震レトロフィットの実績
当社は日本初の免震レトロフィット工事である国立西洋美術館から現在まで、学校、市庁舎などさまざまな用途の建物の免震レトロフィットを実施しています。
免震レトロフィットを取り入れた建物は、現在日本全国で約50棟あり、当社はそのうち9件を施工しており業界トップクラスの実績があります。さらに数件の免震レトロフィット工事を予定しています。
●主な実績
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鎌倉の大仏は免震構造
工事は当社により坐像の下にステンレス鋼板を取り付け、大地震時には御影石の台との間を坐像が自由に滑ることで揺れを防ぐ構造となりました。これがわが国の文化財の免震化第一号でもあります。